2025年1月25日土曜日

王室の維持費っていくら?




さて痛風の話はちょっと中断して、王家のお財布事情の話題の続きです。
今回は公の資産について少し紹介しようと思います。


昔々、王様の資産はその国そのものでした。

1066年にウイリアム征服王がこの国の王様になった後、国土台帳を作ったのはそんな資産を調べるため。
ドゥームズディブック(Doomsday Book/Domesday Book)とよばれるその台帳は現在でも大切な資料として利用されています。
ドゥームズディブックが記されたのは1086年で、この国の大部分の土地の収益や、地域によっては家畜の個体までが記載されています。
この写真はナショナルアーカイブの公式ウェブから。


記載の例;
In PRESTON Hundred
William holds PATCHAM himself, in lordship. 
Earl Harold held it before 1066. Then it answered for 60 hides; now for 40.
Land for 80 ploughs. In lordship 8 ploughs;
163 villagers and 45 smallholders with 82 ploughs;
A church; 6 slaves; 10 shepherds; meadow, 84 acres;
woodland, 100 pigs; 26 sites in Lewes at 13s.
Richard holds 7 hides of this land; and a man-at-arms of his 1/2 hides.
In lordship they have 2 ploughs, with 2 smallholders.
Total value before 1066 £100; later £50; now £80.

プレストン区
ウィリアムは領主としてパッチャムを所有しています。
1066年以前はハロルド伯爵が所有していました。
当時の小作農は60家族、現在の小作農は40家族です。
農地には80台の鋤。領主8台の鋤、163人の村人と45人の小作人が82台の鋤を所有、教会、6人の奴隷、10人の羊飼い、牧草地、84エーカー、森林、100頭の豚、13シリングでルイスの26の土地を所有。
リチャードはこの土地の7家族の小作農を所有し、その半分の家族を兵士として招集することができます。
領主は2台の鋤と2家族の小作人を所有しています。
1066年以前の総価値は100ポンドです。後に 50 ポンド、現在は 80 ポンド。
*ドゥームズディブックに出てくる鋤というのは何頭もの牛にひかせる大型のもので、土地のサイズが想像できます。


さて、そんな王様の土地ですが、教会に売って軍資金や政治的な費用をねん出した時代もあれば革命で失った土地もあります。
逆に修道院を解散させて王様が土地や財産を教会から奪った時代もあって、土地の広さや不動産の数は常に変化してきました。

現在では王様の土地というのは「クラウンエステート(C.E.)」とよばれてその価値(2024年)は約11億ポンド。

私が住んでいるリッチモンドにもクラウンエステートがあります。
ロンドンのリージェント公園の周りには C.E. の刻印が入った柱や道の表示が多いのでそれとわかります。

さて C.E. の資産の半分はロンドンにあります。
大きさというわけではなく、やはり他よりも値段が高いのがその理由。
特にリージェント通り界隈とセント ジェームズ地区に多くの不動産があります。
もうなくなってしまったけれど、以前三越があった建物もC.E.です。

全国的には 17 のショッピング センターなども含まれます。
映画の撮影でよく利用されるウィンザー グレート パークも C.E.で撮影時の使用料も C.E.の収入の一部になります。
他にも185,000 エーカーの田園地帯(土地の3分の1はウェールズとカンブリア)があって、イングランドとウェールズで6番目に大きい地主です。
また C.E. は海岸線や前浜(イングランドとウェールズの前浜の半分と22kmまでの海底)なども持っています。
そこで洋上風力発電所や海洋骨材産業(砂利など)なども無視できません。
すべての洋上風力発電所の38,500kmのケーブルとライセンスは年間で12億ポンドの利益を生み出しています。

ということで巨大な利益を生み出す C.E. ですが、そのすべてが公費として使われるわけではありません。
 C.E. から得られる利益の一部が「ソブリングラント(S.G.)」とよばれ、S.G.が公的な王家の支出に充てられています。
因みに2024年の利益は8600万ポンドでした。
以前はこの利益の15%が S.G. になりましたがバッキンガム宮殿の修復費用のために10%増額されたのち、現在は洋上風力発電からの利益が急に膨大になったこともあって12%に落ち着いています。
こういった割合は2年前に決定されるので予定が組みやすくなっています。

S.G. は君主制と王室の費用を賄うために使われる公的な費用です。
ただし、これには警備費や儀式等の費用は含まれません。

では何に使われるかといえば、王室業務のために使用されている宮殿 (バッキンガム宮殿、クラレンスハウス、セントジェームス宮殿、ケンジントン宮殿(の一部)、ウィンザー、ホリールード宮殿) の人件費を含む維持費。
因みに王家関連のスタッフの数は約500人で、王室維持の費用は国民一人当たり1 人あたり 77 ペンスといわれています。

高いのか安いのかは意見がいろいろ出そうですね。



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