2025年1月19日日曜日

イギリス王家のお財布事情

この冬もたくさんのCPDに参加を予定している私。

観光ガイドの CPD(専門職の能力開発継続制度)というのはコースやレクチャーだけでなくガイドウォークや観光地でのツアーなども含みます。
興味深い内容のものも多いし、発表後1日で残席無しなんてものも多いです。

この間も面白いレクチャーを受けてきました。
題して「Royal Finances(イギリス王家のお財布事情)」




20代でブルーバッジの資格を取った私ですが、実はそれってかなり珍しいことなんです。
イギリスのブルーバッジ観光ガイドの多くは何かの専門職の経験があって、その後資格を取ってガイドに転向したりします。
弁護士だったり軍の士官だったりお医者さんだったり宗教家や建築家もいたりします。
もちろん会計士もいるわけで、今回のレクチャーは元会計士のガイドが講義をしてくれました。
元会計士といっても今はガイドなので内容はわかりやすく楽しいです。
数字ばっかりの理詰めのレクチャーではない。


今日はそんな王室のお金の話を少し紹介したいと思います。
これは現在イギリスで使用されている最高額紙幣。
2024年に英国銀行で発行されたチャールズ3世の肖像入り50ポンド札とそれ以前のエリザベス2世の50ポンド札です。
ともにポリマー製。

実業界やお金持ちの人物を紹介するときに「xx さんの価値は ooミリオンポンド」などと金額で表すことがありますよね。
人の価値の表現はその相手が誰なのかによってお金で評価しきれるものではありませんが、それでもどれだけの経済力があるかという表現のひとつとして容認されています。

そういった意味で「ロイヤルファミリーの価値は?」という場合、注意しないといけないのは公と私の別。

イギリスの王族には個人財産があります。
それらは代々受け継がれていく王家の宝石類やお城や土地とはまた別。

今回のレクチャーではそういった公の部分と私の部分をわかりやすく学ぶことができました。
漠然とした知識が言語化されたので、受けてよかった授業。

数年前まで皇太子だったチャールズ3世。
彼が王様になったことで個人財産が変わりました。

彼の現在の個人財産は約500ミリオンポンドといわれています。
日本円だと約1千億円くらいです。

持っているのはサンドリンガムハウスやバルモラル城、馬や車、宝石類、切手のコレクションだけでもひと財産。
もちろんお金を生み出すエステート(土地や不動産)もあります。
それがランカスター公領(Duchy of Lancaster) 
↑で触れた百億円の財産にはこの公領は含まれません。
あくまでもここから得られるお金が収入としてカウントされるわけです。

というのもランカスター公領は1265年に君主の個人的な収入を生み出すために定められたもの。
君主だからといって部分的に売ったりすることは不可能ではないですが、かなり難しいです。
なので増えることはあっても減ることはあまり考えられません。
代々の君主がここからの収益を個人的に使ってきました。

2024年の時点でランカスター公領の評価額は 712ミリオンポンド(1400億円くらい)でここからの収益(主に家賃や土地の賃貸料)がで2024年3月までの1年間で£27ミリオン(54億円くらい)でした。

チャールズ3世は所得税を支払う義務はありませんが、自主的にこの収入から所得税相当の金額を政府に収めています。
ランカスター公領というのは名前だけでランカスター州にある土地や物件は全体の20%ほど。
それよりも多くの土地がヨークシャーに存在します。
またロンドン市内だとストランド通りの南側にあるサボイチャペルのエリアもランカスター公領です。



チャールズ3世が皇太子だったころの彼の個人的な収入はコーンウォール公領(Duchy of Cornwall )から得られました。
コーンウォール公領は1337年に皇太子の収入源にするために制定されたもので、広い農地などを含みました。
コーンウォール公領の評価額というのは2000億円くらいらしいのですが都会の土地や物件が少ないので利益は50億円を切ります。
実はチャールズ3世のお気に入りのお屋敷ハイグローブは1980年の皇太子時代にチャールズが購入したのでコーンウォール公領のもの。
なので現在はウイリアム王子がチャールズ国王の大家さんという変な図式になっています。
お家賃がいくらか知りたい?
1年間のお家賃は 521000ポンド(1億円ちょっと)です。

さて王族は相続税や贈与税を払うのかという問題。
答えは誰から誰へなのか、そしてそのタイミングによります。

王様や女王様から皇太子や皇太子妃に残されるものには相続税はかかりません。
そしてイギリスの相続税には7年ルールというものがあって、財産を贈った後7年以上贈り主が生存すれば相続税のための計算に入れなくてもいいのです。
エリザベス女王は長生きしたので彼女の残した個人財産にはあまり相続税がかかっていないと思われます。

逆にダイアナ妃は若くして亡くなりました。
ダイアナ妃がチャールズ皇太子と離婚した時にかなりの額の現金がダイアナ妃への慰謝料に支払われました。
チャールズ皇太子の財産のうち、現金がほぼ空っぽになったともいわれています。
彼女はウイリアムとハリーにそのほどんどを残したのですが、手続きの1年後に亡くなったことでその全額が相続税の対象になりました。
財産の約20ミリオンポンド(40億円)から8ミリオン(16億円)が相続税として支払われ、残りをウイリアムとハリーが受け取ったそうです。
ま、相続税を引いてもかなりの額ですけどね。


では次回は公の部分や王族がかかわる財団なんかも紹介しようと思います。









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