このブログが観光ガイドのブログだということを思い出しました(笑)
なので、久しぶりに絵画を紹介したいと思います。
この絵はロンドンナショナルギャラリーの11号室に飾られています。
(ナショナルギャラリーのサイトにリンクします)
この美術館には約2300枚以上の絵画が収められています。
時代別、エリア別、とわかりやすい展示。
美術館のウェブサイトで、見たい部屋を予習していくと、より深く楽しめます。
11号室には4枚の大きな絵がかけられています。
4枚でワンセット。
このセット、2001年に購入ということで、比較的新しい。
全てブーケラールの作品です。
ナショナルギャラリー、部屋丸ごとを特定の画家に使うことは稀です。
ちょっと数えてみましょうか?
66号室のダヴィンチ、
31号室のヴァンダイク、
59号室のクリヴェッリ
15号室のクロードとターナー位しか思いつきません。
ルーベンス、以前は29号室のほとんどがそうだったけれど、今はそうじゃない。
あ、殆どカナレットっていう部屋が38号室。
普通は何世紀のどこの国ってカンジの展示。
そう考えると、ブーケラールは特別な存在。
でも、その割に知っている人は少ない。
大きなサイズの絵です。
ネットだと迫力が伝えられなくて残念。
158.2 × 215.4 cm
カンバスに描かれた油絵。
この絵はお金持ちのおうちのキッチンの様子です。
1570年にガラス製のカップ使ってるし~。
高価なものだから、こんな雑に置いてあるのは演出ですね。
「転がって割れちゃっても気にしないし~」ってことでしょうか。
宴会の支度なのか、あちこちに食材。
手前では家禽類の下準備。
忙しそうな下働きの女の子が、まさに「邪魔しないでくれる?」って。
こういうの、日本語で「ガン見」っていうんでしょ?(笑)
キッチンで働いている割に、すごく着飾ってますけど...これも演出ですよね。
「何か文句でも?」って言われそう!!
ブーケラールの絵画は、オランダで後に確立される静物画のはしりと考えられています。
これも含めて4枚の絵を見ると、食べ物がたくさん!
全て、描写が細やかで、何が描かれているのかちゃんと特定できますよ!
1枚目は四大元素の地。
ということで、野菜や果物。
所狭しと並べられたものの中に、私達が見慣れているものが見当たりません。
それは…
ジャガイモとトマトです。
1569年には、トマトはまだ高価な観賞用。
ジャガイモはまだヨーロッパでは食料として広がっていませんでした。
2枚目は水だからお魚。
プリヒル姉さんに見せたら、きっと名前を全部教えてくれるんじゃないかな(笑)
3枚目は空気。
なので空を飛ぶ家禽類です。
(ウサギも鳥と同じマーケットで売られていました)
そして4枚目のこれが火。
なのでキッチンというわけ。
16世紀のオランダ、貿易で食べていました。
物を集めるのが得意な国。
お金さえ出せば何でも手に入りました。
イギリスの王様のキッチンだって、オランダからお砂糖やスパイスを買っていましたからね。
オランダで作っていたわけじゃないですよ。
スパイスはオリエントから。
お砂糖はスペインやポルトガルから。
それらはオランダを経由してヨーロッパに広がりました。
このセットですが、いずれの絵も奥行きを出すための消失点がひとつではありません。
なので、見る角度によって絵の見え方が違っています。
近くのものはほぼ上から見下ろしたように描かれていますが、遠くは真直ぐ向こうを見ていたり。
キッチンの奥行きも、絵を前にして中心よりも右手に立った位置から左手のドアを見ると、キッチンのサイズが細長く伸びているように感じます。
逆に左側に立った位置から絵の右手のドアを見ると、同じキッチンの幅が強調されて、まるで違う形の部屋のよう。
風俗画のように見えるこれらの作品ですが、何とそれぞれに聖書のシーンが隠されているのです。
ケチなオランダ人(冗談です)だから、1枚で風俗画と宗教画の2枚分。
これ買うと、とってもお得ってことかなぁ。
これは最初の絵の部分抜粋。
マルタとマリアの家にいるキリスト。
この部分が、絵のどこに隠れているか、わかりますか?
じゃあ次回はこの抜粋部分の解説をお話したいと思います。
にほんブログ村
コメントは承認制なので反映に時間がかかります。