2011年12月30日金曜日

キャヴィア

珍味の定義をちょっと考えてみました。
一つ目はその名のとおり、味が珍しいもの。
馴染みのない人からすれば「ゲテモノ」と言われるかもしれないものの、その地域では価値が認められていたりするもの。
例えば、虫の入っているチーズとか?
もっと意味に幅を持たせれば、納豆なんかもこの部類に入るんじゃないかな?
シングルモルトの「Laphroaig」とかも。
英語ではこういった好き嫌いの激しいものや、一部の専門家でないと楽しめないようなもののことを「Acquired taste」といいます。
また、クセのある人のことを、そんな風に言い表したりする場合もあります。

ふたつ目は、その季節にならないと食べられないといったもの。
旬といってしまえばそれまでですが、プラスたくさん採れないという付加価値も大事。
トリュフやまつたけが代表じゃないかと思います。

他には、季節とは関係なく、希少価値のおかげでお値段があがって、なかなか一般に出回らなくなってしまったもの。
これは、キャヴィアが代表。

実は私はキャヴィアが大好物。
でも最近はお値段が上がりすぎて、お誕生日やクリスマスくらいにしか食べることが出来なくなってしまいました。

今年のクリスマスにも、私の朝ごはん用に、ティムちゃんがキャヴィアを買ってきてくれました。
以前だったら125gの缶を買って、3人みんなで食べたのですが、今年は「高すぎ」ということで50gだけ買うことになりました。
しかも、いつも買っていたところがかなりの値上がりだったので、新しいお店を探すことにしたのです。
で、ティムちゃんがみつけてきたのが、ラトヴィアの養殖キャヴィア。

我が家では、もう10年位前から、天然のキャヴィアは買っていません。
乱獲とかを含めた環境問題に加えて、テロリストの資金源になっているブラックマーケットが存在するので、出所のキチンとしているキャヴィアを個人で見極めるのが難しいと思うようになったからです。
その代わりに食べるようになったのが、フランスのボルドー地方で養殖されているキャヴィア。
私はフランスの養殖物が、天然のものに一番味が近いと思います。
デモね、ここ数年、残念ながら買いたいと思うようなお値段ではなくなってしまいました。
ラトヴィアのキャヴィアを買う前に、いつも買うフレンチキャヴィアのお値段を調べてみたら、50gで200ポンドくらいでした。
ちょっと、朝ごはんにってお値段じゃないですよね。

これは56gのラトヴィアのキャヴィア。
塩が少ないのと、添加物がないのが魅力です。これまでの他のキャヴィアは、卵以外にジュースというか、もっと全体がウェットなカンジ。
このキャヴィアの会社の説明によると、それは邪道だそうです。
実際、ここのは卵だけってカンジで、今までのものよりも一粒一粒が味わえます。
加えて卵を取り出す時に、スタージェンを殺さずに、卵だけを採取するそうです。
mottra-caviarという名前で、セルフリッジーズで扱っています。

ただ、レストランでは、そのキャヴィアがどこから来たのか、どんな風に採取されたのかを知るのはほとんど不可能。
たまに、お客様と一緒に、レストランで食べる時はこんな風にでてきます。
これも50gだけど、確か300ポンド以上だったと思います。
キャヴィアの種類はお店などによっていろいろですが、基本は卵を採るスタージェン(チョウザメ)の種類で分けられます。
スターレット、セブルーガ、オシエトラ、そしてベルーガ。
ベルーガ以外は草食のスタージェンです。
私が一番好きなのはオシエトラ。
お店によってはメスの年齢などによって、同じオシエトラでも年齢の高いものが高級とされたりします。
金気を嫌うので、写真のようなホーン(動物の牙や角)や、貝で出来たスプーンを使います。

2011年12月28日水曜日

Boy Brief 騒動

このかわいいパンツは、男の子用みたいに見えるかもしれませんが、れっきとした女の子用です。
クリスマスにもらった、ティムちゃんからのプレゼントのひとつ。

「モデルちゃんがはくとこんな風になる」という写真がこれ。もちろん私が身につけたら、こんな風にはなりません(爆)

でも、クリスマスなわけだし、せっかくもらったんだし、どんな風だか気になるので、はいてみました。
ティムちゃんは自分が買ったという責任があるので「かわいい」と言ってくれました。
そこで、調子に乗って桃太郎君のお部屋へ見せに行ったら、

「マミィ、太ってるね、写真と全然違うじゃん。」ですって!!!

「もちろんマミィはこんな写真みたいじゃないけど、でも似合うでしょう???」と聞いてみたら、

「(ガールフレンドの)C ちゃんの方が似合ってるよ。彼女も同じの持ってるけど、全然同じパンツに見えない」というお返事でした。

「そりゃあティーンエイジの女の子とは体型が違って当たり前」とお部屋を出て、ティムちゃんに何て言われたか報告したら

「一体 MOMO はどこで C ちゃんのパンツを見る機会があったんだろう???」
という疑問が私たちの頭に浮かびました。

この夏にたくさんのお友達と一緒に、海に遊びに行った時、着替え中に見たのかな?
それ以外に思い浮かびません。
というか、想像しはじめたらキリがないような気もします(笑)

ボクシングデー(12月26日)に桃太郎君を起こしにお部屋に入ったら、テディーベアーを抱いてぐっすり眠っていたので、ティムちゃんとふたりで「まだまだ子供ねー」なんて言っていた矢先なのに。

ティムちゃんがこんなパンツくれなきゃよかったのに。
ていうか、桃太郎君にわざわざ見せに行かなきゃよかったのに・・・(笑)

2011年12月27日火曜日

シンデレラ

今年もリッチモンド劇場でパントを観てきました。
パントというのは、イギリスらしいもののひとつで、クリスマスのシーズンに行われる子供用のお芝居です。
客席と舞台が一体になって、子供も大人も楽しめる内容になっています。

今年観たのは「シンデレラ
アッパーサークルの一番前の席。
この席は飲み物が置けるくらいの幅が目の前にあるので便利です。

ここのシンデレラはかなりコンテンポラリーな内容でした。
台詞の中に、ローカルな地名なんかがいっぱい出てくるので、聞いていても面白かったし、ボタンズ(パントに出てくる重要なメンバーのひとり)がとてもよくて観客を上手にまとめていました。

この季節にしか演っていないので、もしまだパントを観たことがないなら、ぜひ足を運んでみてください。
住宅地の劇場で行われています。
確かウィンブルドンの劇場では、デイム・エドナが出ています。
パント情報はこのサイトで見ることが出来ます。
もしくは近くの劇場をのぞいてみてください。
舞台に向かって叫んだり、足を踏み鳴らしたり、パントは日頃のストレス発散にとってもいいと思います(笑)

ケリー・ブロンズ

今年の我が家のクリスマスディナーです。

11月にテレビで七面鳥の農場に関するドキュメンタリーを見ました。
そこで紹介されていたのが「ケリー・ブロンズ Kelly Bronze」という七面鳥です。
調べてみると、バーンズ(リッチモンドから数マイル)のお肉屋さんで取り扱っているというので、今年は久しぶりに七面鳥を焼くことにしました。
我が家でのクリスマスディナーの定番はガチョウなのです。
味の点では絶対に七面鳥よりもガチョウが上だと思うのですが、やっぱり一度は試してみないと。

クリスマスイブの朝、ティムちゃんが買ってきたケリーブロンズ。イギリスでは、クリスマス用のガチョウや七面鳥は、こんな風に箱入り。
12月に入ったらすぐにお肉屋さんに注文して、イブか、その少し前に配達してもらったり、直接取りに行ったり。
去年のガチョウは農場から直接配達してもらいましたが、雪で大変だった地域もあったので、今年は配達は止めたのです。
(でも、実際は例年よりも随分暖かい12月でした)
箱から出すとこんなカンジ。お料理の仕方の小冊子とお肉用の温度計が入っていました。私たちが注文したケリー・ブロンズは4kg程度の大きさ。
入っていた料理法によると「4kgなら180℃で2時間焼く」と書いてあります。
「ほんとうに、大丈夫かなぁ?」とちょっと心配。
だって、普通にチキンを焼くときは、1.5kgちょっとのもので1時間半焼くのです。
でも、書いてあるとおりにやってみることにしました。

まずはじめは胸を下にして1時間半。
オーブンから出したらこんなカンジになっていました。今度は胸を上にして30分焼きます。
それから温度計を挿して、お肉の温度を調べます。
少し足りなかったので、もう10分。温度が65℃になったらOKです。
30分から1時間ゆっくりとさせてから切り分けます。
私たちのは45分ほどおきました。ケリー・ブロンズは、これまで食べたどの七面鳥よりも美味しいと思いました。
おまけにガチョウと違って、クリスマスディナーの後に、後3回は十分にディナーできるくらいのお肉が残りました(笑)
次の日の朝、少しサンドウィッチにしたけど、お肉はしっとり、味もしっかりしています。
もし、今年の七面鳥の味にがっかりという、イギリスに住んでいる人は、ぜひ来年試してみてください。

クリスマスおめでとう!

クリスマスおめでとう!
10月はじめから、入退院を繰り返していた桃太郎君ですが、やっとクリスマス直前になって本退院となりました。
一時は病院でクリスマスを迎えることになると覚悟していただけに、桃太郎君はもちろん、ティムちゃんにも私にも、特別にうれしいクリスマスになりました。
桃太郎君は年が明けると1週間ほどで18歳を迎えます。
パブでお酒も飲めるし、選挙権も持つことになる、イギリスでは「大人」の仲間入りの年。
だから、今年のクリスマスは、桃太郎君にとって、子供としての最後のクリスマスなのです。
サンタさんにお手紙を出すのも今年で終わりです。

2011年12月4日日曜日

Applebee's

お友達とバラマーケットのお魚屋さん、Applebee'sに行ってきました。
お魚を買うためじゃなくって、ごはんを食べにです。

このお店は入り口がお魚屋さんで、奥がレストランになっています。
カジュアルで入りやすいお店なのですが、いつ見てもいっぱい。
今日は、予約もしていなかったので、だめもとで入ってみました。
時間は12時を回ったところ。

日本だと、お昼ごはんは12時からってところが多いんだけど、イギリスでは1時ごろが1番人気です。
「予約してないんだけど・・・」
って遠慮がちに聞いたら、カウンターかキッチンの横の席なら空いているといわれて、ラッキー。

新鮮さがウリなので、メニューは毎日変わります。
これはDeep fried breaded whitebait with aioli(ホワイトベイトのから揚げ)
ガーリックマヨネーズと一緒に出てきました。前菜なんだけど、一人では多いので、一つをふたりで分けました。
おつまみにぴったり。
これはお友達が注文した、Whole Sea Bream with mixed leaves & lemon(鯛の丸焼き)骨が結構あるので要注意ですが、とっても美味しかったって。

私はGrilled monkfish with crushed potato & Bean sprouts sautéed in soy sauce(アンコウのグリル)プリプリして、とっても美味しかった。
セットメニューもあるし、お魚が好きな人にはうれしいレストラン。
気取らずに普段着でOKです。



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2011年12月2日金曜日

HMSベルファスト号の事故

ロンドン塔からテムズ川を見ると、ちょうど対岸からやや西よりに、ベルファスト号という軍艦が視界に入ります。

ベルファスト号は戦争博物館の別館として、子供たちにも大人気の博物館なのです。
実際に活躍していた軍艦。
第二次世界大戦のノルマンディー上陸作戦や、朝鮮戦争などの時代です。
戦時中は約2000人がこの中で寝起きを共にしていたわけで、その様子がよくわかるビジュアルな博物館です。
現在では停泊したままテムズの南側から橋を渡って乗り込むようになっていました。

数日前、この川岸と船をつないでいる歩道橋が落ちるという事故がありました。
普段から子供たちの多い博物館なので、ロンドン消防局のツイートを見たときにはヒヤッとしましたが、幸い大事には至りませんでした。
ただ残念ながら、博物館はしばらくお休みになるようです。
ベルファスト号の博物館のサイトをリンクしておきますね。

昨日、私はミーティングでロンドン塔に行く用事があったのですが、テムズを眺めてびっくり。
まだ、落ちた歩道は撤去されないまま、半ば川に溺れるような様子をありありと見ることが出来ました。
まだ事故から2日だけど、片付け位すればいいのにね。
昨日はこんな風でした。

2011年11月27日日曜日

クリスマスカード

11月もそろそろ終わりに近づいています。
来週はもう12月。
リッチモンドを歩いていたら、チャリティーカードの看板が目に留まったので、入ってみました。

中にはクリスマスカードがたくさん並んでいます。
この時期、いろんなところにカード専門のチャリティーショップが顔を出します。
これは、リッチモンドの地区教会の入り口。
もう一箇所、タウンホールでも同じショップが出ていました。

カードの中は「クリスマスおめでとう」と書かれたものもあれば、「季節のご挨拶」と書かれたものもあります。
これはキリスト教以外の人たちに出したりします。
図柄も、伝統的なキリスト教らしいものから、宗教色の全くないものまでいろいろ。

私はラファエル前派のエドワード・バーン・ジョーンズが描いて、ウイリアムモリスがタペストリーに織った、東方三博士の礼拝を選びました。
チャリティーのカード類によくあるのが、いろいろな間違い。
例えば画家の名前や作品名が違っていたり。
今回のは絵が左右反転していました。
買ったときには気がつかなかったんだけど、何となく、絵を見ていて違和感があったので、手持ちの本を開けてみて逆なのがわかりました(笑)誰もまじめにチェックしないのかもしれない。
このタペストリーは、どこでだったか、本物を見たことがあります。
調べてみると、オクスフォード大学のエクセターカレッジのためにデザインされた後、評判がよくて、10枚ほど織られたそうです。
イートン校のチャペルやノリッチにもあるそうなので、多分、そのうちのどれかを見たんだと思います。

イギリスではクリスマスカードは12月早々に出す人が多いようです。
日本の年賀状のように、その日まで郵便局で保管されて、お正月(こちらではクリスマス)の朝に配達なんてことはないです。
そろそろ書き始めないとね。

2011年11月25日金曜日

Pollen Street Social

ロンドンで、今一番ホットなレストランはPollen Street Socialです。

ここは、以前ラムジーのメイズにいたジェイソンが腕をふるっています。
だから、お料理は、味ももちろんだけど、盛り付けが取っても綺麗。

ここで、先日テイスティングメニューをいただいてきました。

まず、アミューズ。これ、牡蠣のアイスクリームです。
「牡蠣」って味だった(笑)
面白いけど、また食べたいかって聞かれると疑問(爆)

次はかにサラダだったんだけど、写真を撮り忘れ。
ワインはバーガンディーの白。
Puligny-Montrachet 1er cru Champ-Canet, Jean-Marc Boillotという名前。
これが結構なマッチングでソムリエの腕に感心。

次は帆立のセビーチェ、隣のふわふわなのは凍らせたホースラディッシュ風のもの。お次はここの評判メニューでもある「イギリス風の朝食」「どこが?」ってカンジでしょう?
デモね、ビーンズとか、マッシュルームとかベーコン(パンチェッタだったけど)に卵と、要素はキッチリ。
このお料理から、ワインは同じバーガンディーの Pouilly Fuissé Vieilles Vignes, Domaine Denis Jeandeau というのに替わりました。
デリケートだけど、卵に負けない味だそうです。

次は魚料理。
スズキ、横に添えられているのはパエリアです。お肉料理はアンガス牛のリブアイ。柔らかくて、しっかりした味。
ワインは赤に替えて、ボルドーの美味しいワインだったんだけど、名前すっかり忘れてしまいました。
やっぱり自分で選ばないと、何を飲んだか覚えるのは大変。
写真を撮っておけばよかった。

デザートは2種類。
サングリアのムース。チョコレートのマンゴ添え
個室(8人から12人)もあるので、落ち着いて食事できます。
入り口のタパスバーは予約は取りません。
レストランは要予約。

2011年11月19日土曜日

ブラウニー

桃太郎君が、珍しく「ブラウニーが食べたい」というので、久しぶりに作りました。

ブラウニーはビスケットとケーキの間くらいで、ちょっと中がグーイー(gooey)なカンジ。
グーイーって、日本語でなんていうのかな?
ねっとり粘着力があるカンジです。

材料は、チョコレート150g
バター、100g
お砂糖、70g
蜂蜜、スプーン3杯
ココアパウダー、スプーン2杯
卵、2個
小麦粉、60g

作り方はとても簡単。
オーブンを180度にセットします。
チョコレートとバターをボウルの中で柔らかく溶かして、お砂糖を加えます。よく混ざったら、蜂蜜を加えてさらに混ぜて、卵も加えます。
ココアパウダーと小麦粉はふるいながら加えて、さっくりと混ぜ合わせます。
20cm角の焼型に入れて、30分で出来上がり。
これは型に流し込んだところ。そして焼きあがりはこんなカンジ。桃太郎君は、冷たいミルクと一緒におやつに食べました。

2011年11月16日水曜日

最後の晩餐

あまりにも有名な、レオナルド・ダ・ヴィンチの作品。
本物はミラノにありますが、実はかなり精巧な、別の画家によるコピーがイギリスに存在します。
ミラノにあるものと違って、保存状態がかなりいいので、今回のナショナルギャラリーの「ダヴィンチ展」にもコピーが展示されています。
ここに載せているのはウィキから借りてきたもので、ダヴィンチの方。
イギリス版は、もっと色鮮やかでした。

舞台は過越し祭、これは昔ユダヤ人たちがエジプトを脱出する前に、神がエジプト人たちに災いをもたらす際、ユダヤ人を過ぎこしていくように各家に印をつけたというものから始まりました。
しるしは玄関に羊の血を塗るのですが、生贄の選別の仕方からその後の調理法、残り物の始末の仕方まで細かく定められています。
そして登場人物はキリストと12人の師徒たちです。
キリストを中心に3人ずつが4つのグループに分かれて左右対称にバランスよく配置されています。
人物だけではなく、室内のインテリアにもバランスがあって、ドラマチックなシーンの割には、クールといえるほどの静寂を感じることができます。
キリストの背景には窓、もしくは戸口があり外からの明かり(=天=神)が彼の背後にあることを表しています。
そしてその上にあるのは半円形の壁の飾りですが、あたかも中世のイコン画に出てくる後光の縁のようです。
ルネッサンス期に絵画は大きな飛躍を見せて、これまでの平面的な絵画から奥行きのある実写的なものに代わっていきました。
このために、まるで登場人物が、実際にそこにいるような親近感が絵に生まれたのですが、かわりに神秘性を失ってしまいました。
ここでは、入り口のアーチの飾りを描き加えることによって、実写性を失わずに、キリストに神聖を加えることに成功しています。
この絵を見る人はもちろん中心にあるキリストと最初に対面するわけですが、その後はここで起こっているドラマを追っていきます。
その際にどこから始めればいいでしょうか?
聖書の登場人物にはそれぞれアトリビュートといってシンボルが決められています。
細かく絵を見ていくことによって、小さなオブジェのひとつひとつがヒントになっているのです。
もちろんそれら以外にも聖書の中の文章なども参考にする必要があります。
それでは左から順に(体の順番と顔の順番が違ってきますからここでは顔の並びでいきます。)一人ずつ見ていくことにしましょう。1、立ち上がって身を乗り出しているのがナタナエル、別名バーソロミュー、真のイスラエル人と形容された人。
2、小ヤコブ、英語読みではなぜかJamesThe Less〔ちょっと可哀想な名前だけど、聖書にも名前ぐらいで重要人物ではなさそう・・・〕
3、アンデレ、V&A のラファエルのタペストリーの中で、船の上にセントピーターと一緒にいる人。
ピーター〔聖ペテロ〕と共に一番弟子なので、みんなの中に裏切り者がいるって言われて誰よりも驚いています。
「手の内を見せてる」って事はこの人は何も隠すことがないということ?
いつもピーターとセットで出てくるので、重要な割には影の薄い存在です。4、イスカリオテのユダ、裏切り者で財布を握り締めています。
体はキリストから遠ざかろうとしているのとあわせて、彼よりもお金を選んだというのがよく解ります。
5、ペテロ〔セントピーター、シモン〕キリストの隣にいるヨハネに何かささやいてますが、これは裏切り者は誰かキリストに尋ねるようにいっているところ。
聖書の中では合図するだけなんですが、ちょっと描くのが難しかったのでしょうか?
6、ヨハネ、聖書の中で「イエスの愛する弟子」という形容で登場するのでいろんな噂が飛び交ってます。
特に、ダヴィンチは性的にはかなりオープンだった為か〔24歳の時にゲイで告発される〕ヨハネをかなり〔他の使徒たちに比べて〕美形に描いています。
ダヴィンチ・コードの中では、この人物がマグダラのマリアということになっていますが、ヨハネを特に美形に描いているのはダヴィンチだけではありません。
それ以外の、例えばゲッセマネの園をテーマにしたものなども、殆どの画家はヨハネを若く美しく描いています。
聖書になじみのない日本の方は、洗礼者ヨハネとこのヨハネを混同しがちですが、勿論全く別人です。
この人はまた一番長生きした人で、確か90歳を超えてから亡くなっています。
そして、福音書の4つ目を書いたのもこの人です。
4つの福音書の中でも、一番物語性に富んでいて(つまり信用できないって事?〕そのためにルネッサンス期だけではなく、あらゆる芸術家が「ヨハネ書」から題材をとっています。
ダヴィンチのこの作品も「ヨハネ書」13、14です。
中央がキリスト。
8、トマス、この人には「疑い深い」という形容が付いてきます。
天を指しているのは「どこへ行くのですか」ってキリストに尋ねるシーン〔ヨハネ14-5)があるので、に対する答え〔自分で答えるわけないんだけど・・・〕を表して彼自身を位置づけているのではないでしょうか?
ちょっとこじつけ?
この人は、キリストのわき腹の傷に指を入れるまで、復活したことを信じなかった人です。
だからこの人差し指はキリストの受難を表しているとも言われています。
9、大ヤコブ、英語ではジェームス・ザ・グレート、6番のヨハネの兄弟で、彼と5番のペテロと共に、ゲッセマネの園まで一緒にいます。
10、ピリポ、「私たちに御父をお示しください」っていってるところ。
手の向きでキリストよりも自分自身のほうに関心が向いているのがわかります。11、マタイ、1つ目の福音書の著者、徴税人から弟子になった人。
12、タダイ、もしくはユダと呼ばれることも。
この人はマタイ伝では小ヤコブの子供として、ルカ伝では彼の兄弟として登場しますが、ユダという名前が紛らわしいので聖人としての人気は今ひとつです。
13、最後が熱心党のシモン、武器を取ってローマから独立しようとした政党です。
この最後の3人はお互いの議論に熱心でキリストのほうは無視しているように見えますが、やはり手の向きで話している内容はキリストのことであると思われます。
この少し前に「誰が弟子の中で一番偉いか、議論があった」と聖書に出てきますが、私は、これがそうではないと思います。
そしてこの手の向きによって私たちの視線は中心に戻ってくるわけです。

個人的な意見ですが、ルネッサンスの巨匠と呼ばれる芸術家たちが、それまでの人たちと全く違うのは、絵を見る人たちに対する、この視線の誘導だと思います。

そして、忘れてはいけないのは、この作品を注文したイルモーロは、この部屋で食事をしたということ。
こんな風に、作品だけを取り出して、いろいろな説明を加えることは簡単ですが、やっぱり「どこにどんな風に飾られていたか」というのは重要です。

この作品の真上には、イルモーロの家紋がダヴィンチによって描かれました。
そして、イルモーロ自身がキリストの真下に座ることによって、列席者は彼自身の立場を再認識する仕組みだったわけです。

普通のフレスコでは、漆喰が乾く短時間に色を乗せないといけなかったのに対して、ダヴィンチは壁に卵テンペラとオイルで作品を作り上げました。
ゆっくり作品を仕上げることが出来た代償は大きなもので、この作品の劣化は完成直後から始まったようです。
そして、フランス王の侵攻によって、イルモーロもミラノを追われることになりました。

ダヴィンチ展

ロンドン、ナショナルギャラリー(国立美術館)で現在開催中の、レオナルド・ダ・ヴィンチ展に行ってきました。
副題に「ミラノ宮廷での画家」と謳われているように、レオナルド・ダ・ヴィンチがミラノで宮廷画家だった時代の作品が主に展示されています。
これは、建物の正面。正面から見て左手に、セインツブリー館という新館があります。
有料の特別展示は、普通こちら側で行われます。
前売りチケットは完売。
当日券も用意されているとウェブサイトに書かれていました。
「10時から売り出します」
この写真は10時10分過ぎ。
すごい行列でしょう?
建物の奥行きで行列が折り返して、玄関前まで。
チケット売り場には3人の担当がいましたが、一人にかける時間は数分。
なかなか行列は進まないようでした。


個人的には、普段パリのルーブルに飾られている「岩窟の聖母」と、ロンドンNGの「岩窟の聖母」が同じ部屋に向き合っていたのが壮観でした。
そのうち記事を書くことにします。

それから世界的に有名なミラノの「最後の晩餐」ですが、レオナルド・ダ・ヴィンチが描いて20年後に別の画家によってコピーが作られています。
オクスフォード大学のカレッジ内に展示されているこの作品も、今回の目玉のひとつです。
修復がされたといっても本物の傷みは相当なものですが、こちらのコピーでは、本物ではすでに見ることのできないキリストや使徒達の足元や、食卓の様子、各表情などがよくわかります。
また、同じ部屋に、彼のスケッチなども並んでいるので、準備段階から想像できて、とても楽しかったです。
とりあえず、折角なので、以前書いた最後の晩餐の記事をリンクしておきます。

並んでも十分見に行く価値はあると思います。
開催は11月9日から12年2月5日まで。
もちろん日によるのでしょうが、昨日は帰り(12時過ぎ)には100人弱並んでいるだけでした。
多分人数を数えて、整理券みたいにしたのかもしれない。
朝はゆうに300人くらいいたから。

2011年11月14日月曜日

ジャム博物館

先日面白い博物館を訪れる機会がありました。
ジャム博物館
イギリスには本当にたくさんの博物館がありますが、ここのことは、お仕事の予約が入るまで、聞いたこともありませんでした。
ジャムは保存食として始まったもので、普通は各家庭で作られていました。
ところがヴィクトリア時代に、これをお商売として考えた人がいたわけです。
アーサー・ウィルキンさんは、イギリスで有名な「Wilkins & Sons」 の前衛となる会社を始めた人です。
ホテルやクルーズの朝食に出てくる、小さなジャムやマーマレードを見たことのある人は多いはず。
お土産に買って帰る人もいっぱいいます。
ちなみに日本で有名な「アヲハタ」というジャム会社は、創始者がケンブリッジに留学中、マーマレードやジャムを見て感心して持ち帰ったことから始まっています。
そしてその兄弟会社の「キューピー」は、アメリカでマヨネーズを見て、これまた感心して持ち帰って始まったそうです。

Wilkins & Sonsの会社の本拠地は、ロンドンを北東に出たところにあって、店舗とともに博物館が置かれているのです。
これは昔のジャムの容器。工場で使われていた、機械なんかもあります。店舗側にはもちろん自社製品がずらり。さすがだなぁって感心したのは、自社の宣伝も兼ねているDVDを有料で売っていたこと(笑)会社の歴史とか、原材料へのこだわり、未来へ向けての経営展開など、内容は充実していますが、買う人いるのかなぁ?