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2026年6月16日火曜日

バイユー・タペストリーを観てきたよ!


実は観たいものがあったので行ったのです。
それは何かというと…

バイユー・タペストリー!

バイユーというのは北フランスの町の名前。
バイユーの綴りは「Bayeux」です。
ここには大聖堂があって、ここの司教であったオードさんがノルマンの征服に関して自分の功績を後世に残すために刺繍で歴史を刻んだものがバイユータペストリーというわけ。
因みに、このオード司教はウイリアム征服王の(片親違いの)兄弟です。

バイユータペストリーは、普段は北フランスのバイユー博物館(リンクします)に展示されていますが、2025年の9月から博物館は改装のため閉鎖されています。

「ノルマンの征服」というのはイギリスの歴史上もっとも重要な出来事のひとつ。
それまでアングロサクソンの王家だったこの国とノルマンディーからやってきた一族との「ヘイスティングの戦い」の後、この国がノルマンディー公爵ウイリアム征服王によって治められたことをさします。

バイユータペストリーは、バイユーで製作されたわけではなく、おそらく征服後のイングランドの、刺繍の技術に定評があったカンタベリーで作られたのではないかといわれています。

実は今年(2026年)9月から翌7月までバイユータペストリーが約1000年ぶりにイギリスに返ってきます。
ずっとじゃなくて、バイユー博物館が改装のごく一時期のことですが、イギリスではかなり話題になっています。
展示場所は大英博物館。

大英博物館の特別展示は普段ならメンバーは予約なしで何度でも訪れることができるのに、このバイユータペストリーはメンバーも予約必須、しかも無料閲覧の回数制限(3回目からは有料)まで設けられているという人気(の予想)ぶり。

そして今日はその予約開始日。
今日12時半にまずメンバーの予約がリリースされて、一般の予約は7月1日からだそう。
私はこの予約サイトがリリースされるころにはお仕事中なので、合間を見て予約にトライするつもり。



さて、このバイユータペストリーが何でレディングに関係あるのってお話しなんですが、実はヴィクトリア時代にこのバイユータペストリーの精密なレプリカが作られて、それが展示されているのがレディング博物館というわけ。

もちろん歴史は約1000年という本物には及びませんが、1885年製作といえば十分にアンティークです。
そしてかなり精巧なレプリカなのでこれをじっくり勉強してから本物に臨もうというのはなかなかいいアイディアではないかと思ったのです。

ノルマンディーには何回も家族のホリデーで行っていますが、これを観たいというのは私だけだったこともあり、まだ私は本物を観たことがありませんでした。

レディングはリッチモンドからそれほど離れていませんが、それでも片道1時間ほどかかります。
なので「いつか観たいな」レベルだったのが、大英博物館の展示が始まるのに合わせて「ぜひ観ておきたい」に変化したわけです。


このレプリカはスタフォード州リークの刺繍家エリザベス・ウォードルさんが提唱してリーク刺繍協会で製作されました。
オリジナルのタペストリーの刺繍部分下にマチの部分を加えて、そこに製作者の名前が刺繍されています。

物語はエドワード証聖王がイギリスの宮殿にいるところから始まります。
このシーンの下にはエリザベスウォードルの名前があります。



各シーンの名前の中には彼女と同じ苗字も含まれるので、おそらく彼女の娘たちではないかと思います。
エディス・ウォードル

エレノア・ウォードル

他にもリディア・ウォードルやマーガレット・ウォードルも見かけました。


スタフォード州のリーク刺繍教会では絹の刺繍が一般的だったのですが、オリジナルのバイユータペストリーがウール糸での刺繍だったために、あえてウール糸を使用しました。
また、染も科学的なものではなく草木染が使われていて、オリジナル作品に対する敬意が見てとれます。

エドワード証聖王が亡くなってみんなが悲しんでいるシーンやその後ウエストミンスター寺院に棺が運ばれていく様子などは普段からお客様にご案内していることなので、こういった風に視覚化されているのを観るのは感慨深いです。

タペストリーでは時間が逆転していて、棺が運ばれるシーンが先になっています。

泣いているのはエドワード証聖王の王妃エディス(わかりやすいように矢印を入れました)そして彼女の兄ハロルドがエドワードの後を継いで英国王になります。

こちらがハロルドの戴冠式。
空を見上げるとハレー彗星!
ハレー彗星はこの戴冠式に悪い予兆として影を落とします。
実際ハレー彗星が1066年にイギリスで観測されたそうですが、戴冠式は1月、彗星が現れたのは4月末ということで数か月の差があります。

こういった史実も興味深いのですが、私は宴会のシーンが特に面白いと思いました。

お鍋でどんなお料理を作っているのかなぁ。
楽しそうですよね。
あ、焼き鳥かな?

本物のタペストリーを大英博物館で見る時には閲覧の方法がどうアレンジされるかはまだわかりません。
博物館からの案内によれば、壁にかけるスタイルではなく、台の上にフラットに設置されるようなことが書いてありました。
真偽はともかく動く歩道みたいになっているという噂も聞きました。
多分その方がたくさんの人が一度に見られるからということじゃないかと想像します。
どれくらいゆっくり見学できるのかもわからないし、予習してから行くのは大事だと思います。


さて、レディングのタペストリーはほぼ完全なレプリカではあるのですが、部分的に変えられているシーンが無いわけではありません。

ここから先は少しだけアダルトな内容が含まれますので嫌な人は飛ばしてください。

バイユータペストリーにはペニスがたくさん出てきます。(←いきなり、何の話!)
オックスフォードのジョージ・ガーネット教授が2018年に数を確認したところ、約70mのタペストリーの中に93あったそうです。
教授クラスの人がまじめに数えている場面、想像すると可笑しい!!
ただし、そのうちの88は動物(主に馬)のもの。
人間のもの(つまり裸の男の人がペニス込みで描かれているのは)残りの5体。
その一部をBBCが紹介している動画がわかりやすいです。

このビデオの冒頭に出てくるシーンはこの場面。
バイユータペストリーにはたくさんの登場人物が出てきますがほとんどが男性。
メインの刺繍に出てくる女性はたったの3人で、子供はひとりだけ。

その貴重な女性のひとりが青い衣をまとった男性から顔を触られているシーン。
それでは左下に注目してください。
こちらの上下の写真は本物のバイユータペストリー、大英博物館のサイト(リンクします)から


この男性はおそらく僧侶なので、女性に触るということはスキャンダル。
そのシーンの下に出てくる裸の男性がこの僧侶と同じポーズで呼応していることからスキャンダルさを増幅しているんです。

ところがレディングのタペストリーはこちら。

拡大するとこんな風にパンツをはかされてしまっています(笑)

顔に触れているシーンはそのままなんですけどね。



写真を撮ったので、3人目の女性も載せておきますね。
おうちが放火されてその中で逃げ惑う女性と手を引かれている子供の姿が場面右手に見えます。
場面左手ではウイリアムが使者からハロルドの動向に関するニュースを聞いています。

為政者とそれが起こす戦争の下、被害を受けるのは市井のものというわけです。
1000年前も今もちっとも変りませんね。










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2026年4月15日水曜日

ジェーン・オースティン体験に行ってきた!

ロンドンのオックスフォードサーカスそばに新しい観光地ができました。

温泉やジョージ王朝の街並みで有名なバースにある観光地の支店としてひと月ほど前にオープンしたばかり。
早速ガイドのお友達さっちゃんを誘って行ってきました。

さっちゃんは私が公認ブルーバッジガイドの資格を取る前からのお友達で、お互いの結婚式にも招きあった仲。
気の置けないいいお友達です。

さて、このジェーン・オースティン体験館(←日本語にすると変ですね!)どんな風だったか紹介したいと思います。

先ず外観はこんな感じ。
お花が飾られた、アーチをくぐると入り口です。

中に入るとギフトショップ。
限定版のマグやエコバッグ、テディーベアなどロンドンらしいお土産のジェーンオースティン版がたくさん並んでいます。
このギフトショップに入るだけなら無料。

上の階へ上がるのにはチケットが必要で、その場でも、オンラインでも手に入れることができます。
現在の入場料はこちら。

気をつけないといけないのは時間制だということ。
シャーロックホームズミュージアムのように随時入場できるわけではなくて、1時間ごとのスロット制で、はじめにオースティンの生涯についての簡単な説明があってガイドと一緒に各部屋を回る仕組み。

私たちが行った時には、まだあまり知られていないこともあって、3人、ひとり、そして私たち二人の合計6人という少人数で回りました。
でも将来は最大20人くらいで回ることを想定しているそうです。

3階まで階段で(リフトは無し)上がるとお部屋がふたつ。
ひとつは待合室で、もうひとつがイントロのお部屋。
難しい英語が話されるわけではないので、オースティンの基礎知識があれば問題ないと思いますが、ガイドは結構早口でした。
こんな風にお部屋以外の場所でもいろいろ説明がある。
私にとって一番楽しみだったのは衣装を着て写真を撮ること!
ということで、それは2階部分。
ここから好きな衣装を選んで身に着けます。
サイズは気にしなくて大丈夫。
後ろで結ぶだけのスタイルだから。
ボンネットや扇といった小道具もあるので楽しいです。

準備ができたらこの背景の前で撮影。
観光地でよくある「それでは写真は後でお会計」とかではなく、自分の携帯で撮ります。
そして撮る手伝いもしてくれるので、一人参加でも安心。

見て見て~😆

立っているところも撮ったよ~。
お次はさっちゃんと一緒!
さっちゃんは男性用の衣装にしました。
圧倒的に女性の来館が多いので、衣装は男性用の方が状態がきれい(笑)


このお部屋以外にもたくさんの小道具を置いて、館内のいろいろな場所で写真が撮れればもっと楽しいだろうなぁと思いました。
これは経営側に意見として出してみようと思っています。

例えばこのお隣は羽ペンを試してみるといった趣向のお部屋なんです。
こんなデスクが2机置かれています。
ここで座ってお手紙を書いているところとか、さっきの衣装で写真が撮れたら面白そう。

羽ペンは結構書くのが難しかったです。
これはさっちゃんが書いているところ。
ジェーンにお手紙を書いて周りに飾ってみよう、みたいなコーナーです。

さて、さらに下に降りるといきなりミスター・ダーシー(笑)
この作品(BBC制作の高慢と偏見)からもう30年なんですね。
毎週楽しみにして観ていたなぁ。
色々展示されているものは、そのほとんどが階下のギフトショップで購入可能です(笑)

さてこのお部屋には1801年のロンドンの地図がかかっていました。
オースティンに所縁がある場所に標が付けられていて、もうなくなってしまった建物もあれば、現存しているものも多くて興味深かったです。
例えばトワイニングの本店。
ストランド通りのお店はオースティンも訪れたことがあるそうです(驚)

そんなことには関係ないけれど、私の興味を引いたのはバッキンガム宮殿。
1801年当時は女王の宮殿っていう名前だったんですね。
貴族のお屋敷バッキンガムハウスの後、ジョージ3世が買い上げてそのままバッキンガム宮殿とよばれたと思っていました。
彼の購入目的が妃のための別邸でしたから、当然といえばそうなんですけれど、知らなかった!

このお部屋の隣にはオースティンの蝋人形が置かれています。
5'7"(170cm) ということで、私よりも数センチ身長が高かったらしい。
蝋人形のお部屋には彼女が身に着けていたアクセサリーの模型なども展示されていて、ご丁寧にケースの中だったから本物かと思ったらレプリカでした。
これはそんなひとつ、金とトパーズの十字架。
弟のチャールズからプレゼントされたものらしい。
こちらもギフトショップで購入可能です!

それではギフトショップに売られているものをいくつか紹介しておきます。
ここのオンラインショップでも手に入るようです。

嵩張らなくて記念になるといえばキッチンマグネット。
ひとつ約800円。


オースティンが思春期に冗談半分で書いた「イギリスの歴史」
手にとって思ったこと「薄っす!(笑)」ヘンリー4世からチャールズ1世までカバーしています。
アクセサリーも色々ありました。
陶器のペンダントは結構かわいかった。
お値段も数千円からとお手ごろ。

紅茶やマグのコーナー。
テディーもオースティン仕様です。
ラバーダックはいろんな種類があって、ミスター・ダーシーとお風呂に入りたければいいんじゃないかな(笑)
エコ・トートはしっかりした作りで22ポンド(4500円くらい)。
上のマグは限定版で1万円くらいでした。
ということでジェーン・オースティンのファンだったら行ってみるといいと思います。
1時間ちょっと、あっという間に経ってしまいます。
何人かでジョージ王朝風にコスプレして遊びに行くのもいいかも。

バースのものはティールームがあるけれど、ロンドンのものにはありません。
館内にお手洗いは3か所、ただしギフトショップにはないのでミュージアム部分に入場した後です。
リフトがないので身体が不自由な人には不向きです。
階段はこんな感じで、ツアー開始の3階までかなりあります。
階段の先は2階ではなく折り返し地点です(笑)
それではぜひ楽しんできてくださいね!


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2025年12月8日月曜日

イギリスの孤児院

ロンドンの大英博物館そばにイギリスの孤児院博物館があります。
名前は「Foundling Hospital」
ホスピタルとありますが、病院というわけではなくて、「世話をする」というラテン語が元の言葉。
そして、わかりやすいように孤児と書きましたが、実際は棄児(つまり親がいないわけではない)捨て子という言い方もありますが、ちょっと響きが残酷。


この孤児院は1739年にトーマス・コーラムによって設立されました。
コーラムさんは海軍のキャプテンです。
なのでこの博物館の前には彼の銅像が置かれています。
ロンドンにある銅像のいくつかは音声を聞くことができるようになっているものがあって、これもそのひとつ。
そのためのQRコードやリンクが像に付けられています。

効くことができる銅像は他にもいろいろあるのでマップもどうぞ。



イギリスの孤児院がどんな理由で設立されたのか、どんな風に経営が成り立っていたのかを詳しく観ることができるので、18世紀のイギリス社会を勉強している人たちにとっても興味深い場所です。

ここで受け入れることのできる子どもたちの数は限られていたので、1768 年までは抽選で受け入れが決められていたそうです。
母親が袋からボールを​​引く抽選方式。
白いボールが出れば入所、オレンジ色のボールが出れば入所待機、黒いボールが出れば失格でした。
後に孤児院の入所は請願制度に変わったので、状況によって入所が検討されることになります。
結局は政府が児童の家庭養育を重視する法律を可決した後、この孤児院は1954年で閉鎖されて、現在、英国最古の児童慈善団体であるCoram(リンクします)に姿を変えました。


昔、子供を連れてきた(主に)母親は、将来こどもを引取りに来ることが前提でした。
子供たちは入所すると母親の保護のために名前を変えられてしまっていたので、親との絆として「トークン」とよばれるしるしを託すことが多かったそうです。
この博物館にはそういったトークンがたくさん展示されています。
使われることがなかったためにここに残っているってことで、見ていると悲しくなります。

ドラマに出てくるようなペンダントとかももちろんありますが、経済的な理由で連れてこられた子供の親が提供できるものは下着の切れ端や紙切れである場合も多かったそうです。


さて、コーラムさんはもちろん素晴らしい慈善家です。
でもこういったチャリティーは立ち上げることと同じかそれ以上に、持続させることの方が難しかったりします。

ここで登場するのが画家のホガース。
このブログでも彼のアートを紹介したことがあります。


ホガースはこの孤児院の中にギャラリーを設けました。
そこへ足を運ぶのが上流階級のファッションになって、チャリティーに賛同した彼らからたくさんのお金が集まります。
絵を展示するアーティストはパトロンを見つけるチャンス、かわいそうな子供たちのためにという建前ですが、実益を伴うことで孤児院は存続することができたのです。
音楽家のフレドリック・ヘンデルも孤児院にアートを提供したひとり。
彼の有名なメサイア(ハレルヤの合唱が有名な曲)がそうです。
孤児院のチャペル設立基金のためにメサイアのコンサートを行い、それが評判になって彼は孤児院の評議会メンバーに選ばれました。
その後も亡くなるまで毎年メサイアコンサートを開くようになり、その流れで孤児院では子供たちに合唱のクラスを設けて音楽の才能を伸ばすようになっていきます。

そういったかかわりから博物館の中には最上階にヘンデルのコーナーがあります。
ヘンデルの胸像はルービリヤック作。

耳元から音楽が聞こえる椅子も置いてありますからのんびりどうぞ。

このお部屋にはバロックの時代年表みないな趣向のテーブルがあります。

テーブルの引き出しの中にはヘンデルの懐中時計なども展示されていました。
大英博物館所蔵のものでこちらの博物館に貸し出されているそうです。

他にもヘンデルの遺書も展示されています。
貴重なものなので保護のために覆いがかけられていますから、見学する人は覆いをまくり上げて観るというスタイル。

もちろんそばに詳しく説明された冊子が置かれているので、ヘンデルの音楽を聴きながらゆっくり座って読むこともできます。

他にもアートのお部屋がいくつもあります。

設立当時の孤児院の建物を描いたもの。

他のよく知られたチャリティーの建物と並べることで孤児院の箔を付けようとしたことがわかります。

こちらはセントトーマス病院。

こちらはグリニッチの旧海軍士官学校。
元は病気やけが、または老齢で引退した海軍兵のための施設でした。

コスプレのコーナーもあります。
こんな子供たちの格好ができるんですが、全部子供用のサイズでした。

ということで帽子だけ被ってみましたが、サイズが小さくて全然ダメでした(笑)
何だか出来損ないのコックさんみたい!!

ぜひ訪れてみてください。
Foundling Hospital 博物館(リンクします)





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