2025年3月22日土曜日

ロンドンで桜が咲いていたよ!



先週からロンドンではとてもいいお天気が続いています。

日中の気温は20度をちょっと切るような日もあって、一気に春めいてきました。

そんなロンドンの中心にあるセントジェームスパークという公園をお散歩してきたので写真を紹介しますね。

この公園の中央には橋が架かった池があります。
そこから見るバッキンガム宮殿が素敵。
きれいな青空でしょう?


この池にはペリカンもいます。
彼女の名前はガーギ。
ガーギは飼われているわけではなくて、自由なペリカンです。
だから夕方のえさの時間までの間にお腹がすいたらリージェント公園のロンドン動物園に飛んでいっておやつを食べて帰ってくるそうです(笑)

他にも数羽のペリカンがいますが、これは元々この公園ができた時(17世紀の半ば)にロシアから贈られてきたもの。

その子孫が代々とかなら面白いんだけど、実際は卵が産ま中々孵らないので、減ってくると動物園から新しいものが連れてこられています。

ガーギはどこからか飛んできてここに住み着いたペリカン。

だから鳥インフルエンザで他のペリカンが隔離されている中、一羽だけこんな風に自由を謳歌しています。
他のペリカンは公園の池の東側にある中ノ島に隔離されています。

そんな池からそれほど離れていないエリアで数日前に桜を見ました。

先端に切り込みが入った花びらの形。

そしてつやのある木肌に入った横線と、たくさんの花が束ねられた細い茎の先に付いているので桜だとわかります。
桜以外にもロンドンではモクレンも咲き始めました。
これからいろんなお花が美しい季節です。
是非公園をお散歩してみてください。


今日のイギリス情報ブログのランキング(リンクします)





  ブログのランキングに登録しています。 よかったらクリックして応援してください。
イギリスランキング コメントは承認制なので反映に時間がかかります。

2025年3月20日木曜日

ダリッチ・ギャラリーに行ってきたよ!



この間紹介したヴァン・ダイクが描いたサムソンとデリラ(リンクします)はダリッチ・ピクチャー・ギャラリーという美術館にあります。

ロンドン中心地ではないので、観光でロンドンを訪れた人はあまり行かないかもしれません。
以前紹介したピッツハンガー博物館(リンクします)のように地元の人たちに人気があるこじんまりした場所。

公共の乗り物で行くならヴィクトリア駅からオーピントン行きの列車に乗って、ウエストダリッチの駅から徒歩10分くらい。
もしくは地下鉄ブリクストン駅から P4 というバスに乗ると美術館前のバス停に停まります。

ここはこの国で初めての公共美術館で1811年に始まっています。
ナショナルギャラリーができたのが1824年なので、それよりも少し前。


ダリッチというのは地名でもあり、そこにある有名な私立学校の名前でもあります。
ではその学校が集めた絵画コレクションかというとそうじゃない。

実はポーランドが分割された18世紀末に、その少し前まで王様だったスタニスラウス・アウグストから、王室コレクションを作り上げるように依頼された美術商が集めたもの。

5年かけて立派なコレクションが集まった時にはポーランドは実質なくなってしまい、王様がいない状態だったので、売るのにも困った美術商とそのパートナーが一般に公開するという条件をのんでくれるダリッチカレッジに遺贈したわけ。
もしナショナルギャラリーがもう少し早く設立されていたら、まったく違う道をたどることになったでしょうね。


ダリッチカレッジはシェイクスピアと同時代の俳優だったエドワード・アレンが設立した私立学校。
美術館の北側に彼が貧しい人々のために救貧院も作りました。
お庭には彼の像が立っています。
シェイクスピアみたいな服装でしょ?

こちらが彼が設立した救貧院とチャペル(建築はギャラリーと同じく後の時代)
中心のチャペルの両側に合計14の住宅があって、現在でも使われています。

チャペルでは時々コンサートなどもやっているようで、私が訪れた時にも音楽を楽しみにたくさんの人が集まっていました。

おかげでギャラリーのカフェが劇混み(笑)

ギャラリーの建築はジョン・ソーン。
それもピッツハンガーとの共通点ですね。
天窓が彼のスタイル。

ギャラリー側にある小さなカフェで朝食やランチを取ることができます。
イングリッシュブレックファストは1日中提供しているみたい。

私はスペインのソーセージが入った軽めのシチューを試しましたが中々おいしかったです。


こちらがお勘定。
お友達と一緒だったので、これで二人分です。

それではどんな絵を見てきたかはまた今度。






今日のイギリス情報ブログのランキング(リンクします)





  ブログのランキングに登録しています。 よかったらクリックして応援してください。
イギリスランキング コメントは承認制なので反映に時間がかかります。

2025年3月18日火曜日

レストランでの会話



レストランに何を求めるのかは人によって違います。

「え、味じゃないの?」
そう思う人も多いでしょうね。

お客様からレストランのおすすめを聞かれることも多いのですが、本当にその人によって何を期待するかはかなり違います。

私はまずそのレストランの居心地の良さを重視します。
例えば、並ばなくてはいけないレストランは嫌です。
食べ終わったらさっさと出ていけみたいなところも嫌。
そういったところはいくら美味しくても行きたいとは思わない。

逆にフレンドリーな対応のお店だと、少し問題があっても悪くは思わないかな。

レストランでのスタッフとの会話は楽しい。
ウェイティングスタッフはただの配膳係ではなくて、そのレストランのアンバサダーだと思っているので、お勧めをきちんと答えてくれたり、何気ない会話に配慮があったりするのはうれしいものです。

もちろんお店のタイプやどれくらい忙しいのかにもよるので、その場その時で対応できないことがあるのは十分承知の上です。
なので私はファストフード店にはいきません。
大きなチェーン店もあまり好きではない。

この間ねこなすさんと行った Maresco(リンクします)はスタッフがとてもフレンドリーで私が大好きなタイプのレストランでした。
すいていたので行ったタイミングも良かった。
夜はすごく混むって言ってたから。

特に「手ぬぐいお兄さん」が丁寧に接客してくれました。
え、手ぬぐい持ってたの?
違います。
刺青の柄が手ぬぐい風だったの(笑)
ほらね。

私たちが入店した時、彼はカウンターの中で黙々とマテ貝を焼いていました。

そのままどこかに出すのかと思っていたら、中身を取り出してタッパーみたいなのに詰めてるので気になっていたんです。

もちろん忙しそうだったし、カウンターには背を向けていたので、そんな時に声はかけませんよ。

で、しばらくしたら私たちの目の前で焼いたマテ貝をひとつひとつ洗い始めたんです。
手は動いているけれど、同じ動作が続いているので、ちょっと聞く程度なら邪魔にならないかと思って何をしているのか聞いてみました。

そうしたら、お客様が口にしたときに食感がよくない内臓の部分を取り除いたり、砂などの異物が入っていないかなどのチェックをひとつひとつしているんですって。


マテ貝って流通しているものは砂抜きとかしなくてもいいと思っていたので丁寧さにびっくり。
私がマテ貝をおうちで調理するときにはさっと洗って酒蒸しにしたりグリルしたり。
こんな風に下処理したことはありませんでした。

この処理が終わったマテ貝は、注文が入ったら殻に戻してグリルして仕上げるそうです。
今度来たら注文してみよう!!

こんな風に調理のヒントが聞けたりするのも楽しいです。

手ぬぐいお兄さん、どうもありがとう!

もちろん彼以外の他のスタッフもフレンドリーで、サービスが本当に良かったです。

ロンドンにはこんな感じでスタッフとの会話が楽しいレストランが存在します。
もちろん時と場合によるけど、レストランでの会話を楽しんでみてください。



今日のイギリス情報ブログのランキング(リンクします)





  ブログのランキングに登録しています。 よかったらクリックして応援してください。
イギリスランキング コメントは承認制なので反映に時間がかかります。

2025年3月17日月曜日

カウンターでシーフードを食べてきたよ!



絵画の記事が続いたので、今度はレストランの紹介記事をどうぞ!


このレストラン、千と千尋の神隠し・ロンドン公演に出演されていた夏木マリさんの紹介なんです。

といっても私は面識はありませんが(笑)
xの彼女の投稿を見て行ってみたいなぁと思っていたんですよね。
というか、実は投稿を見て、いいなって思った後ずっと忘れていて、ソーホーのおいしいシーフードタパスというキーワードだけが頭に残っていた模様。

ねこなすさんとロンドンで会う時に「ランチどうする?」ということで思い出して行ってみることになりました。
例のごとく、二人でランチすると同じ記事になる(笑)

レストランのサイトはこちらMaresco(リンクします)


ソーホーのベリック通りから入ると、窓に向いたカウンター席と、キッチンに向いたカウンター席。
階下にはテーブル席とお手洗いがあります。

キッチンのカウンター奥にはシーフードのディスプレイ。
私たちはキッチンが見えるカウンターに陣取りました。
カウンターの下に荷物が描けられるフックがあります。
でもコート類はクロークが無くて、階段の脇に吊るされるだけ。
特に混みあう夜の時間はあんまり高価なコートは着ていかない方がいいかも。

メニューはプリントアウトしたものが1枚。
と、今日のおすすめが一枚。
ここにはランチと観劇前などの夕方早い時間用のお得なセットメニューがありますが、そういう特別なものは(笑)言わないと出てこない仕組み。
ロンドンではそういったところが多いです。

そしてここも現金は扱わないレストランだということがメニューの一番下に書かれていました。


とりあえず、飲みながら何食べようか決めましょう。
一番安い白ワインは34ポンドでした。

最近は40ポンド以上のところが多いので、30台というだけでうれしいですね。

ランチセットふたり用というのはひとり23ポンド。
それでタパス3種とメイン1種をふたりでシェアするというもの。

私たちが選んだタパスのひとつは小さなイカのフライ。
ホタルイカくらいの大きさで、塩コショウと粉がまぶされてサクッと揚げられています。
ガーリックマヨネーズがついてくるのでそれを付けて食べる。

思ったよりも量が多い。
これだけでお腹いっぱいになりそう。

タパスといえばクリームコロッケ。
ということでふたつ目はそれ。
燻製の香りとカニ味噌のような濃厚さがあって、サイズの割にはどっしり来ます。
でも美味しい。
メニューにはコロッケとしか書かれていなかったので中身が何なのか聞いてみました。
スペインのチョリッソソーセージが入っているそうです。


3つのタパスのうち2つが来た時点でサラダか何かサッパリしたものが食べたいと思ったので、ねこなすさんにそう言ったら「最後のタパスは一応野菜だよ、カリフラワー頼んだじゃない」ということでカウンターを見ていたら…。


あ、シェフが何か炭火オーブンに入れた!
何かオレンジ色だなぁ、巨大なコロッケに見えなくもない(←ちょっと不安)
結構長く焼いている。
カリフラワーって焼くのに時間がかかるんだ~。

オレンジ色なのはマリネしたカリフラワーだからですね!
コリアンダーソースの上にドーンと乗せたらザクロやコリアンダーの芽をあしらって…

はいどうぞ!

わ~、これもちょっと重そう。

でもね、全然そんなことなかったです。
というか、3種類のタパスでこれが一番おいしかった。
カリフラワーは茹でたりグラタンにしたりするだけで、こんな風(マリネしてオーブンで仕上げる)にお料理したことはなかったけれど、しっかりした味なのにサッパリしていてとっても美味しかったです。
歯ざわりも硬すぎず柔らかすぎもしない。
もし行く機会があったら是非どうぞ。
ただ、コリアンダーの風味が結構強いから苦手な人は気を付けて。

メインにはオヒョウの切り身が乗ったブラックライス。
タパスが終わった後はお皿を取り換えてくれて、そちらに少し盛ってみました。
これも絶品でした!
皮の部分がカリッとしていて、その下にゼラティンの層があって、そして身の部分。
ブラックライスもピッタリな火のとおり具合。
きれいに平らげました。

オヒョウの縁側を含めた切り身をフライパンで焼き付けて、イカスミのリゾットみたいなものに乗せてオーブンで仕上げ。
目の前で作るのを見ているのは楽しいです。
あ、これ、私たちのかな~?とかね。
スタッフもフレンドリーだから、質問とかにも気軽に答えてくれてそちらも大満足。


ミニイカのタパスがいつまで経っても食べきれなかった時には、正直デザートを注文するとは思わなかったけれど、ふたりでひとつシェアなら大丈夫そうなのでバスクのチーズケーキを注文しました。





ねこなすさんはコーヒーをお供に、私はもちろんデザートワイン。
スペイン料理なんだからシェリーかな。
こちらがそのメニューです。
あんまり詳しくないのでどれを注文しようか決めかねてるって言ったら、お味見してから決める?ってことでグラスにちょっぴり持ってきてくれました。
私がお味見の結果選んだのは右手のグラス。
メニューで一番上の PX何とか(笑・発音がわかりません)ってシェリーです。
グラスで提供しているものは、もちろんお店やスタッフに拠りますが、試させてくれることが多いです。
パブなんかでも、私はビールが飲めないのでお客さまと行ったときに味の説明ができないのでお味見させてって言います。
ボトルは無理だけど、グラスで提供しているビールなら、断られたことはありません。

ということで大満足なランチでした。
こちらがお勘定。

ねこなすさんとのランチは価値観や好みが近いこともあって気楽で楽しい。
また次行こうね〜。


今日のイギリス情報ブログのランキング(リンクします)





  ブログのランキングに登録しています。 よかったらクリックして応援してください。
イギリスランキング コメントは承認制なので反映に時間がかかります。

2025年3月15日土曜日

同じテーマの絵を比べてみよう!


イギリスのいいところは美術館や博物館がたくさんあること!
特にその首都ロンドンには数えきれないほどのギャラリーがあって、無料で訪れることができる場所も多いです。

私は隠居するような年になったら絶対にロンドンから離れたくないと思っています。
何故かって、お金をかけなくても文化的な生活ができる都市だから。

年金を貰って、無料の交通パスを貰って、無料の美術館でのんびり絵を見たりする生活。
美術館や博物館の有料メンバーになれば、有料の特別展示だって見放題だし、レクチャーに参加したりするのもいいなぁ。

今日はそんな美術館でよく見るアーティスト、ルーベンスとヴァン・ダイクが描いた同じテーマの作品を紹介したいと思います。

このふたり、アントワープの出身なんですが、イギリスでも大活躍した画家なので、イギリスのお屋敷や美術館に行くと彼らの作品を目にすることが多いです。

ルーペンスの方が20年ほど年長。
そしてヴァン・ダイクは彼の工房で働いていたことがありました。
ふたりともイギリスの宮廷で活躍した功績から騎士の称号を受けて Sir Peter Paul Rubens 、Sir Anthony van Dyck とよばれました。

ルーベンスが30歳過ぎたころ、アントワープの市長から注文を受けて描いた絵に「サムソンとデリラ」という作品があって、ナショナルギャラリーのルーベンスのお部屋に飾られています。
迫力のある絵で、物語も面白いし、私はこの絵のご案内をするのが好きです。


そしてこちらはヴァン・ダイクのサムソンとデリラ。
この絵はダリッチギャラリー(有料)に置かれています。

この作品、ヴァン・ダイクが20歳くらいの時に、まだルーベンスの工房にいた1620年ころ描いたものです。
なのでおそらくルーベンスの作品のことは知っていたはず。
場面の構成が左右全く正反対なのが面白い。

それ以外にもサムソンとデリラの関係。
ルーベンスのバージョンでは自分が裏切った恋人サムソンにまだ心惹かれるようなデリアの態度がサムソンを見つめる目や彼の方に置いた手で表されています。
それがヴァン・ダイクのバージョンではサムソンから距離を取るような態度や散髪屋が仕事をしやすいようにサムソンにかかる布をずらして手引きをする様子が冷酷です。
お金を貰って恋人を裏切るなんて酷いっていう声が聞こえてきそう。
若いなぁ(笑)
ルーベンスは「事情があって裏切っちゃったけど、ホントは好き〜❤️」みたいな裏の事情を考えさせられますが、ヴァンダイクの絵ではそういった深い感情よりも興味津々で覗き込む老婆の方が共感できる。
「ゴクッ」と唾を飲む音が聞こえてきそう!!

ところで、前回の記事でハサミの話をしましたよね。
ヴァン・ダイクのハサミの部分を見てください。
「何これ?」と思いました?


こっちがルーベンスのハサミです。
私たちにも見慣れたハサミですよね?

じゃあヴァン・ダイクの絵に出てくるモノは何か?
これもハサミの一種です。

ハサミって何千年も前に古代エジプトで生まれたんですが、それ以降ヨーロッパでは16世紀までは「握りばさみ」が主流だったんです。
私たちが普通に思うX型のハサミは古代ローマ時代から存在こそしていましたが16世紀以前は一般的ではなく、17世紀から一般化していきます。
つまりルーベンスは彼の時代のハサミを描いて「見て〜最近こんなの流行ってるでしょ」って言いたかったのか。

昔の握り鋏は銅でできていたらしい。
このハサミはエジプトっぽい装飾のローマのハサミ。
1800年ちょっと前のもの。
NYのメトロポリタン美術館所蔵(リンクします)

日本の糸切り鋏みたいですよね。

因みにギリシャ神話ではこういった糸切り狭は「命の糸を切る」ということで死を表すモチーフとして使われます。

ヴァン・ダイクが描きこんだハサミはギリシャで羊飼いが使っていたタイプ(鉄製の頑丈なシアーズといわれる握りばさみ)
わざわざギリシャっぽいものを入れたということは、つまりサムソンの死を表すってことなのかなぁ?
すごいね、ヴァンダイク。

え、ちょっと待って。
いくらヴァン・ダイクが裕福な絹商人の息子でもギリシャのことそんなに詳しく知ってる?
17世紀ってギリシャは異教のオスマントルコだし簡単に行くことができなかったのでは?

行かなくてもわかるんです。
ダリッチギャラリーに行かなくてもこの絵を見ている皆さんがいるように、行ったことのない国の絵や話を伝える方法が昔からあるんです。
「本」って呼ばれています(笑)
これは1510年ごろに教会で使用される書物のために描かれたものでフラマン地方で製作されたもの。
羊飼いのハサミを見てください。
大きさも質感もヴァン・ダイクのハサミとおんなじ!!


絵がちょっとうまいだけの若造だと思っていたのに、ルーベンス先生、ちょっとドキッとしたかも?
いまさら市長さんのお宅にお邪魔して「すいません、鋏をちょっと描換えたいんです」とは言えない。

そして、そんなヴァン・ダイクの画家としての腕前もいたるところに表れています。
デリラの肩の部分の装飾。

ドレスの豪華な生地部分。
ヴァン・ダイクは絹商人の息子だっただけあって、いい素材を小さな頃から見ていたせいなのか、素材の選択や描写がとても素晴らしい画家です。
肖像画家として上流階級の人々に贔屓にされたのがよく理解できます。

人間のドラマを描くならルーベンス、高級素材ならヴァン・ダイク(笑)

というか、一説ではヴァン・ダイクの才能を恐れたルーベンスが、自分の得意な歴史画や宗教画のマーケットを取られないように「君には肖像画が向いている」と勧めたとか。

真偽はさておき、二人の作品を比べるとなんだかありそうな話という気がします。






今日のイギリス情報ブログのランキング(リンクします)





  ブログのランキングに登録しています。 よかったらクリックして応援してください。
イギリスランキング コメントは承認制なので反映に時間がかかります。

2025年3月13日木曜日

ナショナルギャラリーのサムソンとデリラ



今日はルーベンスが描いた「サムソンとデリラ」を紹介したいと思います。

ナショナルギャラリーにあるこの絵。

大きくちゃんと見たいなら、ナショナルギャラリーの公式サイトのリンクをどうぞ。

イギリスではサムソンはサムソンだけど、デリラはデライラと発音します。

そして、デライラという名前には悪女という印象が付きまとう。
それは聖書の中の物語からのイメージ。

まず、この絵のテーマになっているサムソンとデリアなんですが、ふたりは恋人同士です。
このサムソン、彼はお母さんのおなかにいる時から神様が気にかけてくれていたラッキーな人。
天使が下りてきて妊娠中に気を付けた方がいいことなんかのアドバイスももらってた。
生まれた後も願い事は何でも神様が叶えてくれます。
力も並外れて強くてユダヤ人のヒーロー。

ところが~!!
それで終わりなら面白くない!

実はサムソンって女運が悪いんです。
というか、見る目がないといった方がいいのか…。

最初に好きになった女の子が宿敵部族ペリシテ人の娘。
でも好きで好きでたまらない。
そこで神様に守られてもいることだし、家族の反対を押し切って無理やり結婚しちゃいます。
ところが奥さんの実家のみんなから嫌がらせをされて面白くない。
ある日、我慢も限界ということでカッとなったサムソンは奥さんの親戚一同を皆殺しにする…といっても武器はどうしたのか?
「ねぇ神様、なんかいい武器ないですか?」って聞けばいい。
そうしたら、ロバの白骨死体が道端にでてくる。
その下あごの骨を手に親戚を皆殺しにします。
その辺は血の海ですよね。
映画にしたらちょっとグロすぎるかもしれませんが、聖書で読むとそんな風に聞こえないのが不思議。
疲れたサムソンはへなへなっと座り込んで「のどが渇いたよ、神様…」ってつぶやく。
そうしたらサムソンの座った脇から泉が湧き出てのどを潤すことができたそうです。
旧約聖書って面白いお話がいっぱいあるけれど、サムソンのお話はその中でも読み応えがあるもののひとつです。

さて、仲間を何人も(聖書によれば1000人)殺されたペリシテ人は当然復讐を考えます。

しばらくして、サムソンに新しい恋人ができるのを待って、その彼女デリアを買収することにしたのです。
「サムソンからその力の秘密を聞き出せ」というわけ。
デリアはことあるごとにサムソンに問いかけます。
「ダーリン、どうしてあなたはそんなに強いの?」そんな問いかけじゃないですよ。

もっと具体的。
「どうやったらあなたを縛って痛めつけることができるの?」
それを聞いて疑わないほどサムソンは純情だったか?

サムソンはデリラに嘘を教えます。
「かわいたことのない七本の新しい弓弦をもってわたしを縛るなら…」
で、デリラはそうしたんですが、全然効き目がない。
他にも使ったことのない新しい綱で縛れとか、髪の毛を織り込んだ布を使えとか、もうこうなると縛られるのが好きなのかと誤解しちゃうほど(爆)

デリラがうるさいので結局秘密をばらしてしまうサムソン。
具体的には毎日「何度も嘘ばっかり言って、どうして私を愛していると言えるのですか」としつこく迫ったそうなので、サムソンの魂は死ぬほど苦しんだらしいです。
私がサムソンだったら、自分を痛めつける方法を聞かれた1回目でその人とは別れますけどね(笑)
サムソンは忍耐の男!

で、ここで注意してもらいたいのはその秘密が何かということなんですが、サムソンの上に覆いかぶさるようになった青い服の男性がハサミを持っていますよね?
ルーベンス先生、これじゃダメなんです!!
旧約聖書の士師記 13-5 に「見よ、あなたはみごもって男の子を産むであろう。その頭に剃刀を当ててはならない。」って出てくるんですよね。
はさみで切っても何ともない。
実際にサムソンがデリアに言った噓のひとつは、髪の毛を7房、織り込んだ布を使えというものでしたが実行後(つまり髪を切られた)サムソンの怪力は元のまま。
ま、かみそりだと濡らして剃るから起きちゃうってことかもしれません(笑)

それにしてもデリアはこのあと銀をたくさんもらったんですが、この絵を見る限りでは結構後悔していますよね。
でも秘密を聞き出すまでに何回も失敗したり、毎晩のようにしつこく聞いたっていう事実からも後悔しそうなタイプではないと思うのは私だけ?

悪女デリア。
今は美しくてもいつか時がたてばその美貌は失われて自分が犯した数々の罪にさいなまれる日が来るのでしょうか?
ということでルーベンスはデリアの顔の上に老婆を描きこんでいます。
そしてそのさらに上部には美と愛の女神アフロディーテ。
肉体の愛を表すキューピッドが愛の女神を見上げているという構図も意味が深いです。
そして陰影とのコントラストがデリアの白い身体を輝かせてとても美しい作品です。

この絵はアントワープ市長宅のマントルピースの上に飾るために描かれました。
なので、床で寝ているように見えてしまうのはちょっともったいないです。

もう少し高いところに飾られていたわけで、私たちが今美術館で見るよりももっと下から見上げるようにするとベッドの上にいるというのがわかります。

是非、ナショナルギャラリーで本物を見てくださいね。








今日のイギリス情報ブログのランキング(リンクします)





  ブログのランキングに登録しています。 よかったらクリックして応援してください。
イギリスランキング コメントは承認制なので反映に時間がかかります。