絶対に観られないってわけじゃないんですけどね。
でも気温が高い時には出ていないことが多いこの作品。
20㎝足らずの茶色い物体です。
いったい誰の作品なのか。
それはね、ルネッサンスの巨匠のひとり、ミケランジェロ様です。
いきなり有難く見えてきましたね(笑)
V&A 所蔵のこちらは、蝋で作られた試作品です。
V&A の写真の方が見やすいと思います。
どうぞ。
え、大して変わらない?ではフィレンツェの大理石のものをどうぞ。
ミケランジェロだけではなく、大きな彫刻を作る際は、粘土や蝋で小さな模型を作ってから本物に取り掛かることが普通でした。
ですよね。
油絵などの絵画と違って、塗りなおすわけにはいきません。
油絵などの、と書いたのは絵画でも塗り直しが不可能だったり、非常に難しいものもあるからです。
例を挙げるとフレスコ画。
フレスコ画というのは漆喰の壁や天井に描く絵のことです。
漆喰で壁を塗り、それが渇く前に水彩絵具をのせて色を定着させます。
一度乾いたらそれで終わり、やり直しはできません。
なので、正確さや素早さといった技術と共に、いい速度で乾燥するための湿度が必要。
ロンドンの国会議事堂の中をフレスコ画で飾りたいと思ったアルバート公(ヴィクトリア女王の夫)はこの湿度が適当でなかったために、プランをあきらめなくてはいけませんでした。
テムズ川沿いの立地やイギリスのお天気を考えると、漆喰がいつまでたっても乾かずに色が定着しなかったのが想像できると思います。
さて、フレスコ画で有名なものと言えば、同じくミケランジェロによる、システィーナ礼拝堂の天井が有名です。
ストレスの下で働くのが好きだったのでしょうか(笑)
話を蝋の模型に戻すと、タイトルは奴隷。
ローマ法王ユリウス2世が亡くなる前に注文した、彼のための大霊廟の装飾の準備作品です。
ミケランジェロは下描きや模型をたくさん準備して制作にあたることで知られていました。
が、そういった下準備の作品はことごとく廃棄されたりして、それほど残っていません。
ルネッサンスの伝記記者ヴァザーリは、ミケランジェロがどのように模型を利用して作品を作ったかということにも興味があったようで、その様子を書き残しています。
ヴァザーリによれば、ミケランジェロはこれらの模型を水に沈めて、少しずつ水面から出すことによって、細かなディテールを確認したそうです。
残念ながら、ユリウス2世の大霊廟は計画よりもずいぶん規模の小さなものになりました。
奴隷(フィレンツェでは「若い奴隷」)は未完成のまま。
霊廟に飾られなかった彫刻ですが、美術館に入る前はフィレンツェ公コジモ1世によって1909年まで庭の装飾として展示されていたそうです。
フィレンツエのものは未完成ですが、それでも256㎝ということで実物はさぞ迫力があるでしょうね。私はまだ見たことがないので、いつか行ってみたいなぁと思っています。
同じ美術館にはミケランジェロのダヴィデ像もあります。
こちらも石膏で模られたコピーがV&Aに置かれています。
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