イギリスの建築と言えば、かわいい茅葺き屋根のコテージや石造りのマナーハウス、レンガ造りのテラスハウスなどを思い浮かべる人も多いと思います。
でも場所によれば、そんなイメージとはかけ離れた建物も存在します。
そんなひとつがロンドン金融街の北側に位置するバービカン地区。
1960年代に開発された、ブルータリズムの代表的な開発地区です。
第二次世界大戦の折、1940年12月29日に激しい空襲を受けたバービカン地区で生き残ったふたつの建物のうち、ひとつは鉄職人のギルドハウス。
レンガの建物がそう。
バービカンは以前クリプルゲートとよばれた地域。
クリプルというのは身体に障害があるということ。
身体障碍者のための聖人は聖ジャイルズなので、この地域の地区教会も聖ジャイルズ。
それがもう一つの生き残った建物です。
この教会を中心に作られた開発地域がバービカン。40エーカーのサイズ、ということは14万平米。
このバービカンを含む地域はロンドン市というエリアで金融街としても知られています。
皆さんが思っているロンドンは、普通グレーターロンドンとよばれる人口900万人の1,569 km²に及ぶエリアです。
そのごくごく一部がロンドン市。
サイズはその名前から想像するよりはずっと小さくて、1平方マイル市(とよばれます。
1マイルは1.6キロなので、かなり小さいですね。
正確には2.90 km2。
鉄道が普及するまではロンドン市に10万人ほどが住んでいましたが、どんどん郊外に引っ越した挙句、空襲でほとんど人が住まなくなってしまったロンドン市。
このままでは市から国会議員の選出もできなくなるかも、と心配されたのが人口が5000人前後の時。
そこで住居を中心とした開発が計画されたわけです。
現在では2000戸の住宅に約4000人が住む、ロンドン市内でもトップの住宅地になりました。
因みにロンドン市の人口は8000人程度。
開発は1960年代。
その当時は最新の技術だったコンクリートを使って、ミドルクラス以上の階級のための賃貸住宅として作られました。
ヨーロッパのホリデーを彷彿とさせるエリアというテーマです。
60年代に海外旅行ができたのはその階級。
イタリアやギリシャといったクラッシックなテーマがあちこちに見受けられます。
ただ、そんな回顧主義は、パッと見ただけでは感じるのが難しいかもしれません。
というのも時代はブルータリズム。
機能性とストイックなミニマリズムの時代でもあったからです。
好き嫌いがあるスタイルなので、パッと見るとそんなに魅力が感じられない人も多いです。
バービカンというのは「砦」という意味があって、ロンドン市(ローマ時代の旧市街地)が壁で取り囲まれていた時代に砦があったことに由来します。紀元400年ごろにローマ人たちが撤退した後、中世にもその基礎が利用された砦が作られました。
オリジナルの砦が半円形であったところから、いろんな部分に半円形が使われて、統一感を感じることができます。
イギリスでは日差しが強くないので全く必要ありませんが、これもホリデーらしさの一環です。
スポーツ用の施設も充実していて、管理はしっかりされているようです。
コンサバトリー(温室)もあって、本当に何もかも揃っているのを実感します。
何のアートかと思ったら、あのメンデルスゾーン(本物)が森の中でインスピレーションを得るために瞑想していた木のうろですって。
1990年の嵐で折れてしまったのをロンドン市が買ってここに設置したそうです。
大家がお金持ちだといろんないいことがありますね(笑)
サッチャー政権の時に、公団に住んでいる賃貸人が、その住宅を買う権利ができました。
普通は低所得者層のための住宅を、そこに住んでいる人(低所得者層)に安く手に入れてもらおうというプランだったのですが、ロンドン市が開発したこのバービカン地区も体裁上は公団なので、住んでいる人たちが(低所得者じゃないのに)あっという間に買い上げてしまったそうです。
住んでいた人はラッキーですね。
コンクリートの中には小さな御影石がちりばめられています。
手作り感を出すためにのみを使った手作業で壁に凹凸をつけていたり、緊急用の非常階段が部分的に庭や総省区のように配置されていたり、本当に素晴らしいデザイン。興味がある方は、バービカンで定期的に建築ツアーが行われているので、トトロを観るついでに参加してみると面白いです。
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