2012年9月12日水曜日

アクセシビリティー

オリンピック・パラリンピックが終わったロンドンは、何となく空虚感。
今回のオリンピック・パラリンピックの間は、公共の乗り物を使うという建前のために、地下鉄などのメンテナンス用の閉鎖はありませんでした。
初めてロンドンに来られた方は「なあんだ、ロンドンの公共の乗り物って思ったほど悪くない」って思われたでしょうね。
毎日、公共交通機関の運行チェックをしていましたが、ほとんど問題はありませんでした。
この週末から、また元に戻って、少しずつメンテナンス閉鎖があるみたいです(笑)



昨夜、仲のいいガイド仲間とオリンピック・パラリンピックの打ち上げパーティーをやりました。
気心の置けない仲間内で、いろいろ今回のイベントに関しておしゃべりしようといったカンジ。

ロンドンにはガイドのプロフェッショナルがいて、その協会も存在します。
Japanese Registered Tourist Guide Association という名前で略して「JRTGA(リンクします)」
毎年恒例のチャリティーなども、この協会主催です。

私は、ここ数年ずっと、この協会の役員をボランティアーでやっています。
今のところ会員数は50名前後。

昨日集まったのは、その中のほんの一握りのメンバーでしたが、本当に楽しかった。

普通、同じ業界の人間が集まると、経験談とか、最新情報なんかで盛り上がると思います。
私たちガイド業界も同じ。
特に今回は、普段あまり経験しない、身体のどこかに不自由のある人たちの、ロンドンの受け入れ体制について、いろいろ情報交換がありました。
英語で、身体が不自由な人たちへのサービス対応のことをアクセシビリティ(accessibility)といいます。
ステップフリー(行程中に段差がないこと)とか、目の不自由な人が触って楽しめる展示があるとか、その種類はいろいろです。

その結果「車椅子の方をご案内するなら1番!」とほぼ全員一致だったのが大英博物館。
リフト(エレベーター)や係員の対応など、すばらしい。
実際に私も問題なくお客様をご案内できました。

ウインザー城もかなりポイントが高かったです。
係員の対応がすばらしいところ。
ただ、やっぱり健常者のアクセスできるところ全てに入れるかと聞かれると、答えはノーです。

バッキンガム宮殿は、車椅子の方が入れる入り口が、少し離れたところにありますから、グループの方が2分されることはあります。

やはり、古い建物が多いヨーロッパでは、建築上の問題をクリアーするのが大変なようです。
そこで、教会などは、ずいぶんポイントが低くなってしまっています。

私はパラリンピックの時期に、車椅子の方3名さまと、杖をついていらっしゃる方が3名さま含まれる、全部で20名さまくらいのツアーを担当しました。
セントポール大聖堂(ダイアナ妃が結婚したところ)の入場が含まれていましたが、大変でした。
リフトが狭いために、全員が本堂に集まるまでずいぶん時間がかかりました。
また、健常者の方を、同じ入り口から入れてもらうことは拒否されました。
これは同じグループとして、限られた時間を観光に使っているグループとしては致命的です。
柔軟な対応次第で、もっと楽しめたのにって思うと残念です。

ウイリアム王子とケイトさんのウエディングがあったことで、大変に人気のウエストミンスター寺院に至っては、車椅子の方はかなり入場が困難な状態です。
全く無理ではないのですが、係員があまり親切ではありません。
クロイスターから本堂に入るとき、そして逆に出る時に、階段が5段ほどあるのです。
高低差は1mもないのだから、車椅子用のリフトを付ける予算がないのなら、鉄道駅にあるような、車いす用の渡し板くらい使えるだろうにと思いました。

地下鉄などは、整備されているところと、そうでないところの差がかなりあります。
地下鉄の地図(リンクします)に、アクセシビリティーの詳細はあるのですが、まだまだ。

ところが日本からのお客様によると、日本に比べると、ロンドンは全く悪くないそうです。
驚いたことに、日本では特別な場所にでも行かないかぎり、車椅子の人を見かけることは、街中でほとんどないそうです。
ショッピングセンターや、博物館などで、車椅子の人たちを見るのは当たり前なので、今まで気にしたこともなかったのですが、日本ではそんなに見かけないそうです。

車椅子の人たちが、普通に日常生活をしているのを見られたので「それだけでも、今回来て良かった」ってお客様から言われました。
うれしいの半分だけど「東京のパラリンピック招致大丈夫かなぁ」と少し考えてしまいました。
オリンピックをホストするのはどこでもできるだろうけど、パラリンピックをホストするのはすごく大変だろうなぁと思います。

選手だけではなく、世界中から来られるお客様の、泊まるところ、食べるところ、遊ぶところ、全て、どれくらい身体に不自由がある人たちを受け入れる施設があるのでしょうか?
車椅子のお客様から聞いた話なので、実際に自分で調べたわけではありませんが、ビジネスホテルクラスなら、車椅子で建物に入ることも難しく、お部屋の設備(お風呂やお手洗い)なども使えないことが多いそうです。
大手のチェーンはともかく、中小企業のこういった設備の負担をどうするつもりなのか、少し考えてしまいました。
それでも東京でパラリンピックがホストされたら、日本のアクセシビリティーの改善にはぴったりでしょうね。



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2 件のコメント:

phary さんのコメント...

みきさん、こんにちは。オリンピックが終わって怒涛の更新ですね。

<日本からのお客様によると、日本に比べると、ロンドンは全く悪くないそうです。驚いたことに、日本では特別な場所にでも行かないかぎり、車椅子の人を見かけることは、街中でほとんどないそうです。>
実は私、日本での教員生活の最後の2年間の勤務は肢体不自由児のための養護学校でだったのです。(今から20年以上も前のことでもちろんかなり改善されたところもあると思いますが)遠足や修学旅行、買い物学習(普段なかなか外に出られない子供たちに町で買い物経験をさせる)の準備として実際に自分が車椅子に乗って車椅子で移動可能な通路(特に段差の有無、通路の幅等)やトイレの位置を事前に調べたときに日本の街は障害者にはとても生活しづらいところだと実感しました。それに比べ来たばかりのミュンヘンでは車椅子で一人で電車に乗って移動する人がかなり多いのにびっくりした覚えがあります。リフトがあるからバスにも簡単に乗れるし、デパートや公共の建物には当時でも必ず障害者用のトイレが設置されているのを見て日本とは根本的に障害者の生活が違うのだと思いました。車椅子で簡単に移動できるということは松葉杖やベビーカーでの移動も楽だということです。
<健常者の方を、同じ入り口から入れてもらうことは拒否されました。>
ここの所びっくりです。イギリスでまさかこんなことがあるとは!何か理由があるのでしょうか?ドイツではたぶん考えられません。

miki bartley さんのコメント...

Pharyさん、こんにちは。
怒涛の更新・・・笑っちゃいました。
オリンピック中は、本当に忙しくって、結局8月は更新が殆どできなかったので。

ところで、学校の先生だったお話、興味深いです。
身をもって体験されたんですね。

セントポール寺院では、普通の入り口には階段があるので、車椅子の方が入れる、リフト付きの別の入り口が用意されています。
ところが、そこにはチケットなどの発券システムがないので、階段が使える人は、本来の入り口から入れって言われたんです。
それ自体は別にいいんですが、みんなで同じところから入れたら、どんなにいいだろうと思いますね。
そこに発券システムを作ればいいんでしょうが、そうするとそれに伴う人件費だとか、いろいろ大変なんでしょうね。