私は職業柄、美術館に行く機会は多い方だと思います。
でも残念ながら職業故に、絵画を純粋に楽しむことは難しい。
つい、絵画そのものよりも、ガイド目線で絵を見てしまう。
お客様と一緒の時はご案内する側なので、観賞はできません。
下見などで美術館を訪れたりすると、自分目線で「これいいな」って吸い寄せられる絵はあります。
ただ、それをガイディングに活かせるかどうかは別の話。
だって、例えばナショナルギャラリーには2600点の絵画があって、教科書に出てくるような、誰でも知っている有名な作品も多いです。
それを無視して私が好きな絵画をご案内するわけにはいきませんからね。
同じ部屋にある、有名な絵画をご案内した後、サラッと「これもいいでしょ?」みたいに観てもらって、ご興味がありそうなら解説するスタンス。
先日、ナショナルギャラリーを訪れた時にも、そんな絵があったので、ブログを読んでくださってる方に紹介したいと思います。
これ。
景色と椅子のミスマッチ感がすごい。
モデルになっている人はジョセフ・ブラマーという名前のアートディーラー。特にアフリカのアートの批評や買い付けをしていました。
アンリ・ルソーに肖像画を300フラン(現在の金額だと50万円くらい)で注文したそう。
これを見て、態度がデカいという印象を受けませんか?
屋外にはふさわしくない椅子に座って煙草を手にしているところも、周りを無視する傍若無人ぶりが伺えます。
私がルソーを好きなのは、何に惹かれるのかな?
絵本の挿絵のような雰囲気が、私の中にある幼心をくすぐるのかもしれません。
子供が描いたような木々に、カリカチュアのような人物像。
パリのオランジェリー美術館にもルソーが何点かあって、以前この絵も紹介しました。
「驚いた」
これは1891年の作品なので、ブラマーの肖像よりも15年ほど前です。突然の稲妻と草陰に身をひそめるトラ。
ジャングルの絵で有名なルソーですが、実はこれが最初のジャングルをテーマにした絵だそう。
フランスから出たことがなかった、日曜画家のルソーがパリで植物園や動物の剥製をもとに構図を考えていたことを想像すると楽しいです。
完全にモチーフを自分のものにして、キャンバスの中に配置している。
不自然な自然の様子がとてもいとおしい。
ゴーギャンも日曜画家でしたが、彼はタヒチを含め外国を訪れています。
比べるとこのふたり、色んな共通点がある。
ピカソはこの両者にとても敬意を払っていたとか。
イギリスにゴーギャンの作品ほどルソーの作品が多くないのは残念。
生前、あまり評価されなかったのも原因で、多くの作品が離散してしまったらしいです。
出生地に寄贈しようと描いた作品は、いらないといわれたなんて悲しいエピソードもあるそうです。
ナショナル・ギャラリーを訪れたら、是非探して鑑賞してくださいね😉
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