ロンドンの国立美術館。
2千点を超える名画が無料で鑑賞できる、素晴らしい場所です。
イギリスって、なんて太っ腹(笑)
ガイドという立場上、イギリスのことを褒めるのは仕事のうち。
でも、ここはそんな立場でなくても、本当に素晴らしいということが、誰にでも理解してもらえると思います。
時々、館内で絵の掛替えがあります。
ある絵画が、他の美術館への貸し出しとか、逆に新しい絵が入ったとか、理由はそれぞれ。
それ以外にも大幅なリメイクとかもある。
最近では北館を大幅に入れ替えしていました。
それも落ち着いたようなので、先日、足を運びました。
今日紹介するのはレンブラントのお部屋。
22号室です。
私はレンブラントが大好き。
22号室には、彼の作品の中でも「これっ‼」ていうのが何枚もかかっている!
一番好きなのは、これ。
以前特別展に出ていた時に少し紹介しました(リンクします)
「愛おしい」って言葉がぴったりな作品。
それは、作品自体も、そして被写体に対する彼の気持ちも。
以前から掛かっていましたが、位置が変わって良くなりました。
「え、どこがいいの?」ってカンジ?
北方のありふれた肖像画に見えます。
でもね、2枚並びました!
以前は離れていたり、片方だけの展示だったり。
これ、同一人物なんです。
ずっと、これは試作(の割には立派だけど)と仕上げと思われていました。
ところが小さな方は、最近の研究で、もしかしたらレンブラントではないかもしれないという説も出てきています。
カンバスの下準備が、いつものレンブラントとは違う手法らしい。
私たちは表面しか見ないので、そこまではわかりません。
旦那様は、武器商売で大もうけしたジェイコブ・トリップさん。
お金がたっぷりあるので、後世に残す一族の肖像画を有名画家に描いてもらおうと、家族がレンブラント大先生に依頼したというわけ。
旦那様の肖像画もそばにかかっています。
ところが依頼の後に旦那様は亡くなってしまいます。
旦那様の肖像画は、寛いだ服装にナイトキャップといういでたち。
でも豪華なので、安っぽくは見えません。
この絵が描かれた5月には亡くなっているので、丹念なスケッチする時間はそんなになかったのでは?
マーガレッタの方は違います。
未亡人となった彼女には、たっぷりと時間があったはず。
しっかりと描かれた彼女の表情。
是非、二つのマーガレッタの絵を見比べてください。
レンブラントは自画像が有名です。
いろんな自画像をあらゆる機会に描いています。
表情に隠れた想いを描く、レンブラントよりも素晴らしい画家の名前を挙げることはできないと私は思います。
この絵を観る時に、私はいつも「未亡人になったらどうしよう」って考えてしまいます。
マーガレッタの晩年は、裕福でもあったし、何不自由ないものだったと想像します。
幸せだったのか、そうでなかったのかは、今の私たちにはわかりません。
幸せってお金だけではないですからね。
旦那様は8歳年上。
愛されていたのかなぁ?
彼女が未亡人として過ごした11年を考えてしまいます。
大きな方のマーガレッタは気丈なおばあちゃんといった風ですが、小さな方はか弱い感じがします。
目元とかは特に、なんだか泣き腫らしたような。
実物を見ていただきたい作品の一つ。
レンブラント以前の絵画というのは、宗教上なり神話なりのテーマがあって、それを演出するのが画家の役目だったわけです。
レンブラントが果たした功績の一つは、テーマよりも、その人物自身に焦点を当てたことじゃないかなぁ?
その人を「もっと奥深く知りたい」という欲求を、観ている側が感じるってこと。
これ以外にも、自画像のいくつかや、馬上のお金持ちの商人の絵など、レンブラントの傑作が並んでいます。
この部屋だけで、ゆっくり楽しむ価値があります。
ナショナルギャラリー(リンクします)
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