2025年4月19日土曜日

イギリスの刺繍のいろいろ



先日、JRTGA(英国日本語観光ガイド協会・リンクします)主催のお勉強会でイギリス刺繍についてのレクチャーがありました。


JRTGAはイギリスで日本語で観光ガイドをする資格「ブルーバッジ」を持ったメンバーが集まった協会で、定期的に勉強会を行っています。

ブルーバッジの資格を取るのも大変だけど、資格を取った後もみんなで勉強を続けているんです。
個性的なメンバーがそろっているので、どんな方にもピッタリなガイドが見つかると思います。
観光の際はぜひJRTGAのガイドを雇ってください。


刺繍といえば、イギリスのピリオドドラマを見ると「お嬢様のたしなみ」みたいな位置づけで出てきますよね。
いろんな時代で刺繍にも流行がありました。
また刺繍の目的に適したたくさんの種類があるのです。

今日はレクチャー後の復習もかねて、自分なりにイギリス刺繍をまとめてみました。
美術館や博物館を訪れる時の参考に、またはご自身でトライしてみるのもいいですね!

  • ジャコビアン刺繍 
ジャコビアンというのはイギリスのチューダー時代のひとつ後、17世紀初頭です。
リネンツイルという麻布にクルーウェルウールというウールの刺繍糸でベッドカバーやカーテンなどのインテリアに刺繍が施されました。 
東インド会社がイギリスに持ち帰ったインドの布の柄に影響を受けたデザインが多いです。


またジャコビアンのひとつ前のエリザベス様式のカラフルな刺繍、草木の茎や枝が円を描くようなパターンのデザインから発展したとも言われています。

例として紹介するのははV&A所蔵の「マーガレット・レイトンのウエストコート」
部分を拡大した写真がこちらで、1610年(年代はジャコビアンですが、スタイルがエリザベス朝)ごろのものです。
素材はリネンとシルク、刺繍糸はシルクと銀糸が使われています。
写真はV&Aの公式サイトから(リンクします)


  • スタンプワーク 
スチュワート朝に流行した立体的な刺繍。
チューダーの後期から製作はあったようですがスチュワート朝にその多くが作られました。
刺繍の材料は高価だったのでそれらを使うことができた女性たちはごく限られた階級でした。
少女のころから練習を重ね、単純なものからどんどん複雑なものに挑戦していくわけですが、その最高峰、ゴールにあたる製作がこういった小箱だったのです。
この小箱(V&A所蔵・リンクします)にはE・Cのイニシャルが入っていて、製作者エリザベス・クームを示しています。


  • キャンバスワーク 
キャンバスワークはその名の通りキャンバス地などにさしていくタイプの刺繍で、目を数えて文字や柄を入れていきます。
イギリスのアンティークショップなどで見かけるサンプラーなどもこのタイプ。
初心者でも取り組みやすいと言えます。
これは18世紀後半にメアリー・アン・ボディーという名前の9歳の女の子が作ったものです。
こちらも所蔵はV&A(リンクします)


  • シルクシェーディング 
シルクシェーディングとは 糸で作り上げる絵画。
カラースケッチをもとにステッチする方向をきめ、リアリスティックで自然な外観を刺繍で表現する 方法。
いろんな色が使われていたり、長さが違うステッチを組み合わせることでで微妙な色合いを出しているのがわかります。
写真は2点とも王立刺繍学校のオンラインショップから(リンクします)



  • ブラックワーク 
ブラックワークとは単色の糸を使って濃淡を表現する刺繍。
様々な幾何学模様や太さの違う糸を使って白黒写真のような効果を生み出す方法。
パッと見るとペン画や鉛筆画に見えますが刺繍です。
部分的に拡大するといろんなスティッチが使われているのがわかります。
写真は王立刺繍学校のテクニックページから(リンクします)



  • ゴールドワーク
ゴールドワークはその名の通り金糸を使う刺繍で、イギリスでは戴冠式に使用される儀式用のローブや教会の装飾、司祭の装身具にも利用される刺繍です。

もっとも最近の戴冠式は2023年5月6日でした。
チャールズ3世は何でも新調するのではなく、昔からのものを大切に使っていくことを心がけています。
そこで戴冠式の装身具も歴代の戴冠式で既に使用されたものが再利用されました。

右側の金のマントは「インペリアル・マントル」とよばれるもので、もとは1821年に戴冠したジョージ4世のために作られたもの。
左側は「スーパーチュニカ」といって、こちらは1911年のジョージ5世の戴冠式のためにつくられたもの。
戴冠式ではスーパーチュニカの上にインペリアル・マントルを羽織ります。
金糸で刺繍が施されているのでその重さはかなりのものです。

こちらは一部を拡大したスーパーチュニカの刺繍部分。
写真は両方ロイヤルコレクションのウェブサイトから(リンクします)

もちろん新しく作られたものもありますよ!
王立刺繡学校のパトロンを2017年から務めているカミラ王妃のローブ。
これまでの戴冠式のローブと異なるのは、自然を愛する王と王妃を表すためにミツバチなどの昆虫が刺繍のデザインに含まれたこと。
写真の中のかわいいミツバチや甲虫が見えますか?
こちらの写真もロイヤルコレクションのウェブサイトから(リンクします)
刺繍は王立刺繍学校が担当したそうです。
パトロンのための刺繍なんて、緊張しそう!(笑)



  • ホワイトワーク 
ホワイトワークはリネンなどに施された刺繍で、結婚式や洗礼式の衣装によくみられるエレガントな刺繍です。


ケイトさんのウエディングドレスもホワイトワークが使われました。
バッキンガム宮殿の公式YOUTUBEです。


このウエディングドレスの製作(刺繍部分)も王立刺繍学校が担当しました。
その製作チームにはなんと日本人がいて、今回のレクチャーも彼女が担当してくれたんです。

ニュートン雅子さん(リンクします)という女性で、製作や修繕、コンサベーション、レクチャーなどのサービスも行っているそうです。




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