今日紹介するグレイソン・ペリーのタペストリーは、イギリスの18世紀のアーティスト、ホガースの銅版画から着想を得たそうです。
ホガースは連続物の銅版画で有名です。
このブログでも何回か紹介したことがあります。
この記事、リンクするので読み直したら内容が盛りだくさん過ぎでビックリ。
今だったら絵画の解説とレシピと語源の話を3つ別々の記事にするだろうなぁ(笑)
ペリーが着想を得たというのは「道楽者の成り行き」というシリーズで、オペラの作品として楽しんだ時に紹介しました(リンクします)
「The Vanity of Small Differences(僅差の虚栄)」というタイトルが付いているタペストリーは全部で6枚。
それぞれに副題がついています。
展示のお部屋に入ると左に3枚、右に2枚。
そして奥の部屋に最後の1枚があります。
大きさがわかるように写真を撮ってみました。
このタペストリーの主人公はティム・レイクウェル。
ホガースの作品がトム・レイクウェルなのでアルファベットをひとつ替えただけ。
他にも2012年にペリーが出演したTVドキュメンタリーシリーズ「All in the Best Possible Taste with Grayson Perry」がヒントにもなっています。
展示室に入って左側の3枚は大人になる前のティムの人生です。
1枚目、若い母親から生まれたティムを描いた「ケージファイターの崇拝」
場所はサンダーランドでイギリス北東部、上述のドキュメンタリーでは労働者階級の紹介で使われた街です。
聖母子崇拝の絵画には贈り物を持った人が出てくるけれど、ここでは赤ちゃんのティムにサンダーランドのサッカーシャツと炭鉱人のランプが捧げられています。
彼の右側で頭を抱えているのがティーンエイジャーのティム。
舞台はサンダーランドの丘で北海を眺める様子です。
ティムはグラマースクールの生徒でバッグからはコンピューターソフトに興味がある様子がさりげなくのぞいています。
3枚目は大学生のティム「エデンクローズ8からの追放」
ティムはグラマースクールの生徒でバッグからはコンピューターソフトに興味がある様子がさりげなくのぞいています。
3枚目は大学生のティム「エデンクローズ8からの追放」
これはもちろんエデンの園から出るアダムとイヴが題材です。
で虹の左がティムの実家(労働者階級だけど、暮らしぶりは悪くない)
虹を境に階級を超えたという設定で、笑っちゃったのが上中央やや左手に位置する顔。
誰だと思いますか?これ、ジェイミーオリバー(イギリスのシェフ、給食の改善や若者の雇用などの社会的な提議でも有名)です。
ペリーによると階級移動の神様らしい(爆)
彼からの電がティムの彼女に向かっているのは彼女が妊娠したってことかな?
さて、展示室の右手には向かい合う形で4枚目の「受胎告知、バージンとの契約」
ドールハウスで遊ぶ娘や、生活の余裕を感じさせる描写があちこちに出てきます。
ロンドンのナショナルギャラリーにある絵画のオマージュもあって面白い。この鏡はヤン・ファン・エイクの結婚式の絵から。
多分オーガニックの野菜たちは、クリベッリ(リンクします)へのオマージュかな。
多分オーガニックの野菜たちは、クリベッリ(リンクします)へのオマージュかな。
ティムは自分の会社を大手バージンに売却します。
バージンは実在の会社だけど、ここに売却というのはもちろんその名前から選んだんでしょうね。
そんな記事がタブレットに表示されています。
5枚目のタペストリーではコッツウォルズのマナーハウスに住んでいるティム一家。
でも成金の彼らは上流階級と認められることはありません。
生活に窮しても伝統がある上流階級とは隔たりがあるし、お金があるゆえにミドルクラスや労働階級のプロテストの対象とみられる苦しい立場。
そして最後の6枚目。
これだけ別のお部屋にあるのは事故の描写があるから閲覧注意ということらしい。
タイトルは「嘆き」
通常キリストの絵画では磔刑から降ろされたキリストの遺体を囲むシーンが描かれます。ペリーはティムのそれを現在のイギリスに置き換えています。
アイディアのもとはファン・デル・ウェイデンの「嘆き」
このタペストリーにも様々なモチーフが登場しますが、特に記憶に残ったのは事故のシーンを携帯で撮ってアップロードしている傍観者。
グレイソンペリーの風刺が効いた素晴らしい観察力や皮肉が楽しめるまたとない機会なので、是非お出かけください。
展示は12月8日まで。
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