2010年5月1日土曜日

湖水地方で日本人に税金?

ショッキングなタイトルでしょう?
昨日、イギリスの各紙で取り上げられた話題です。
日本では流れたのでしょうか?

Nurture Lakelandという、環境保護の活動をメインにしているチャリティー団体が、ピーターラビットなどでお馴染みの湖水地方に拠点を置いています。
このチャリティーで、今回、日本人を対象にして、ツアー会社などを通して一人5ポンドの支払いを求めるというニュースです。

新聞の見出しが派手なのは、きっと日本でも同じだろうと思うのですが、見出しだけを読むと、本当に誤解を招いてしまう表現です。
実際に私が聞いただけでも色んな意見が飛び交っています。
「日本人だけをターゲットに税金をかけるなんてひどい、人種差別では?」
「日本人は遠くからやってきて、しかもたくさんのお金を使うのに、更なる負担はフェアではない」
「環境保存は地元の人が払うべきで、お客に払わせるのは筋ではない」
などなど。

これはBBCのラジオでも流れたというので、早速聴いてみました。
BBCのラジオ放送は、放送後1週間以内なら、インターネットで聴き直しが何回でもできるのです。
番組の中で、Nurture Lakeland の人がインタビューに答えていました。
ちゃんと話を聴いてみると、新聞から得た印象は随分変わりました。

まず、これ(一人5ポンド集めるということ)は、日本人のみを対象にしたものではなく、湖水地方を訪れる人たちすべての国籍の人が対象で、すでに実地されているものであること。
寄付制で、強制ではないこと。
日本人が環境問題などに興味のある国民なので、日本人に寄付をお願いするための特別なプロモーションであること。
例えば普通はこういった寄付は匿名で行うものなのですが、日本人がピーターラビットが好きだというので、寄付してくれた印にピーターラビットのピンバッジをプレゼントするなど、日本人向けの工夫が凝らされています。

私はとてもいいアイディアだと思いますが、スピンドクターが必要かもしれませんね(笑)

環境問題は特定の人だけの問題ではありません。
みんなで何とかしないといけないものです。
産業革命のときに、湖水地方に工場が立ち並ぶことを懸念した人たちの間で「National Trust」が作られたあと、現在ではたくさんの一般の人たちの寄付が、そういった活動を支えています。
こういった寄付はいかなる形でも、そのチャンスを推進すべきだと思います。

話はぜんぜん違うかもしれませんが、私は大英博物館をご案内したあと、よくお客様に寄付を促します。
入場料が無料なのは、たくさんの人が寄付をしているからだといった話をするのですが、ほとんどの方は困った顔をされます。
ケチだからではありません。
いくら入れればいいのかが、わからないのです。
普通は「千円札を一人一枚入れてください」ってご案内しています。
するとちゃんとお財布を出して、千円札を寄付の箱に入れてくれます。
最近ではちゃんと博物館も「いくらくらい入れて」って書いているみたいです。

日本人は個人での寄付が苦手です。
いくらって入場料を取ってくれたほうが楽だ、という意見をよく聞きます。
きっと、そういったことがチャリティー団体の耳に入って今回のアイディアが出たんでしょうね。
イギリスにもチャリティーが嫌いな人はいますし、特定のチャリティーに賛同しないという人もいます。
そういった人はきちんと意思表示をします。
私は今回の寄付に関しては、そういった意思表示の場をどこで作るかといったことに興味を惹かれました。

それにしても、この湖水地方の環境保護のための寄付のアイディアが、曲がった形で日本に伝わらないといいのですが。
ニュースを伝える人が、ただ単にこちらの新聞記事を訳してしまうと、その危険が高いです。
ちゃんと調べてから載せて欲しいなぁ。
すでに人種差別だとかって思ってる人がいっぱいいるみたい。
Nurture Lakeland さん、政治家からスピンドクターを一人、貸してもらってください(笑)

追記
この記事を書いてからいろいろ調べてみましたが、やっぱりかなり誤解があるようです。

まず、この寄付なんですが、エコツーリズムのアイディアの一環として、日本側から浮上してきたみたいです。

湖水地方を観光する普通のツーリストは、国籍に拠らず、自分たちが宿泊する施設なども含めて、いろんな場面で、Nurture Lakeland がオーガナイズしている環境保護の寄付をする機会があります。

ところが日本からパッケージツアーで来るお客様は、ホテルのチェックインやチェックアウトなど普通の旅行者がとる行為から一切隔たれていて、こういった制度があることすら気が付かれないまま、ツアーを終えて帰国されます。
そこで、そういったことにツアー会社が手を貸して、もっと認識を高めようというのが目的のようです。

この制度はまず、賛同するツアー会社が500ポンドを払って登録します。
そして、その企画のツアーは「エコツーリズム」に貢献しているというロゴやイメージをパンフレットに載せることが許され、それに賛同する一般のお客様がそのツアーを購入するという流れになります。
バッジと証明書はジャパンフォーラムが費用を出すそうです。
また賛同する会社は、広告をジャパンフォーラムのウェブサイトに載せることが出来るそうです。
詳しい仕組みはここからリンクします。

ですからこれは日本のマーケットを考えた、寄付のアイディアであって、差別とは程遠いものだと考えますが、残念ながらそこまでキチンと説明はされていないので、誤解を招いているようです。

ツアー料金に組み込みになると、寄付の選択がないのではないか、という意見もありますが、全てのツアー会社が参加しているスキームではないようです。(賛同する会社が企画するツアーの全てがこの寄付を行っているのかは定かではありません)

湖水地方にパッケージツアーで来られるお客様の、ツアー選択の幅が広がった、とみるべきだと思うのですが。

6 件のコメント:

たまやん さんのコメント...

初めまして、もう30年ほど前、イギリスで1年半過ごしたことがある者です。 

かなりたくさんの人達が今もイギリスへ旅してると思いますが、田舎に住んでいるとほとんどそういう人は見かけませんけど、中国人とかフィリピン人とかアジア人が増えて来ました。 彼らは日本語ができず、私たちは彼らの言語どころか未だに英語さえ満足にできません…そこが問題なんでしょうね。

私の経験から言えることは、イギリスおよびイギリス人(他の英語圏の人も)を理解する、またはこちらの気持ちを伝えるには英語という言語の勉強が常にかかせないと思います。 通訳、翻訳や字幕だけでは伝わらないものがあるからです。

あと、私が海外で感じるのは日本人相手にビジネス展開してる人たち(日本では外資系に勤める人たち)は意外とかなり日本人的(寄り)な考え方の持ち主だということです。

イギリス事情を理解されないかも…?という懸念は(同じ人が何度も同じ所に行くわけ無いので)当たりですけど、仕方のないことだと思いますよ。

それでもあなた達のような世話してくれる人がいる限り、イギリス事情初心者の日本人は安心して行けるワケですので、ご自愛してくださいね。

のび太 さんのコメント...

こういう記事があったとは知りませんでした。読みながら参考になりました。

息子さんはお元気ですか?
剣道をされていますか?

rie さんのコメント...

はじめまして。コメントしたことはありませんが、いつも楽しく読ませていただいています。

湖水地方の件、私もブログに取り上げたので、みきさんが調べてくださった下さっている詳細を紹介させていただきたいと思い、記事からリンクをはらせていただいたのですが、よろしいでしょうか?もしご迷惑でしたらすぐ外しますのでお手数ですがお知らせいただければ幸いです。

ところで(偶然かもしれませんが)前の記事にコメントくださったみきさんってもしかして・・?もし違っていたらごめんなさい。いずれにしても、みきさんの調べてくださった内容はとても参考になりました。新聞をうのみにしちゃ駄目ですね!

miki bartley さんのコメント...

たまやんさん、こんにちは。
コミュニケーションはどんな場所にいても、とても重要なキーポイントだと思います。
同じ国に住んで、同じ言葉を話していても、バックグラウンドが違うと誤解が生まれたりしますから、言葉が違うとなおさらです。

最近ではツールの発達で、瞬時に外国の情報が入るようになりましたが、本当にちゃんと伝わったのかどうか気になることも増えました。
逆に、あからさまにイメージ操作された記事などを見ると、規制の難しさなども考えてしまいます。

miki bartley さんのコメント...

のび太さん、こんにちは。
桃太郎君は元気です、ありがとうございます。
剣道は見稽古に何回か行きましたが、まだ本格的には練習できないみたいです。
手術の傷がなかなかふさがらないので。
でも少しずつはじめていくみたいなことをいってました。

大手の新聞は旅行会社が広告のお客様だから、あまり大きく載せないかもしれません(笑)
昨日ウェブで日本のニュースを検索したら、たくさん出てきましたが、取り扱いはそんなに大きくなかったようです。

miki bartley さんのコメント...

rie さん、こんにちは。
正直なところ、新聞を素直に読めないっていうのは、いいことか悪いことかちょっと謎ですね。
ガイドになる勉強をしていたときに、ガイドブックにうそが多くて、自分で調べたこと以外は、信用しないほうがいいって癖がついたのかもしれません。
rie さんのブログは、今回の件の検索にかかって見付けました。
他にもいろんなブログをみつけたのですが、何となくrieさんのにコメントを残してみました。
これからもよろしくお願いします。