久しぶりにローストビーフで有名なシンプソンズへ行ってきました。
今日はプライベートではなくってお仕事です。
このレストランは元はチェスのクラブとして始まったので、今でもレストランのところどころにその面影を見ることができます。
シンプソンズのウェブサイトを見ると、歴史のページの顧客リストに、なんとシャーロックホームズの名前!
それもさりげなく他の名前に混じって書かれています。
イギリスだなあ、と思ってしまいます。
ここに来ると、お肉を切ってくれるおじいさんがいます。
いつも同じおじいさん。
トロリーをゆっくり運んできて、好みのお肉の焼き加減を聞いてカーヴ(お肉を切り分けること)してくれます。
このひとはすごく愛想がよくって、いつも一緒に写真を撮ってくれたりします。
今回は帰り際に少し話をしてみました。
とてもいいお天気だったので
「こんな日に室内にいるなんてもったいない、お仕事を辞めちゃって、お日様の下に出なさいよ」と声をかけました。
イギリスで知らない人と話をするときは、お天気の話を最初に持ってくると、大概上手くいきます。
返ってきた返事は「もうすぐですよ、お嬢さん、もうすぐ」
きっと長年働いているんだろうな、と思って、思い切って聞いてみました。
「私、ここには長く来ているんだけど、いつもあなたがカーヴしてくれるの。一体何年ここにいるの?」
「あなたの生まれるずっと前ですよ、お嬢さん」
日本人の女の子は若くみられるのが普通なので、お世辞も加えて20年とか25年とかって言うと思っていたら、びっくり。
「今年の7月でね、お嬢さん、」
そしてにっこり笑って、
「50年ですよ」
聞き違いかと思って、「50年? 15年じゃなくって?」と確認してしまいました。
「私がここに来たのは1959年の夏でした、すっかり様変わりしてしまいました。
お嬢さん、覚えていますか、以前は2階で召し上がったでしょう?
昔はねえ、このフロアーはご婦人方は入れなかったんですよ。紳士方だけの場所だったんです。
皆さんお食事の後は食後酒を楽しまれながら、葉巻を燻らせたものです。
そしてその後はチェスに興じられました。
今ではタバコを吸うには外に出なくてはいけません。
すっかり変ってしまいました。
もうすぐですよ。
もうすぐ私はここから出ます。
お日様の下に出ます。」
それにしても、50年も同じところで働いているなんて!
この話をティムちゃんにしたら、
「さぞかしカーブが上手くなったことだろう」だって。
2 件のコメント:
50年!?
経営者にしてみれば、辞められては困る存在ですね。名物おじさんなんでしょうね。
東京に帰ると必ず行くフレンチ・レストランがあるんですが、そのお店のサービスのおじさんがとにかく上品で、しかも何年も行かなくても覚えていてくれて、私たちの好みのモノを進めてくれるんです。
友達と行っても『また、ご主人とお出かけくださいませ』って一言も嬉しいし。
お店の味も勿論だけど、そういうお客さんを大切にしてくれ、いつでも居てくれるスタッフがいるお店っていいですよね。
…ドイツでは滅多にないけど。
ゆき珠さん、こんにちは。
ロンドンでもお店のリースが短くて、しかも働いている人の移り変わりも激しいので、これはとても珍しい例だと思います。
やっぱり覚えていてくれるとうれしいですよね。
「また行かなきゃ」って気になります。
でも50年はすごいですよね。
きっと今までにたくさんの有名人にカーヴしてあげたんだと思います。
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