地下鉄エリザベス線が通る駅のひとつにファリンドン駅があります。
1863年に世界初の地下鉄(首都鉄道)の東側の終着駅として開業した、非常に歴史のある駅です。
ただ、1863年1月10日に開通したほかの駅、例えばベイカーストリート駅が当時の面影を残している(リンクします)のに対して、ファリンドン駅は何度か建替えられています。
特にエリザベス線の開通で大規模なハブ駅へと再開発されました。
まわりには、おしゃれなレストランが集まるクラーケンウェルや、歴史あるスミスフィールドがあります。
このお駅の中にエドワード・ジョンストンの記念碑があります。
アルファベットが裏返しになって並んでいる不思議なアート。フレイザー・マガリッジが2017年に作ったもので、脇に説明があります。
エドワード・ジョンストンは、20世紀を代表するカリグラファー兼タイポグラファーです。彼が手がけた画期的な書体は Underground Electric Railways Company of London(ロンドン地下鉄電気鉄道会社)のコマーシャル・マネージャーだったフランク・ピックの依頼で制作されて、1916年に初めて登場しました。
当時主流だったのは重厚な書体。
ジョンストンは洗練されたデザインで全く違うスタイルを生み出しました。
その影響は1928年に誕生した「ギル・サンズ(Gill Sans)」をはじめ、数多くの商業用書体にインスピレーションを与えました。
説明書きによると;
このアートは、エドワード・ジョンストンを追悼するだけでなく、彼の世界的に有名な書体がもたらした多大な影響を称えるものでもあります。当初はポスターのためにデザインされたこの書体は、現代のデジタル時代において、ロンドンの交通網におけるあらゆる種類のサイン(標識や案内表示)へとその用途を広げてきました。オリジナルの木製活字を忠実に再現した本展示は、この書体が持つ精密さと純粋さを際立たせています。
ジョンストンはさらに、ロンドンの交通システムを象徴する「ラウンデル(円形のロゴ)」のデザインも手がけました。駅やバスの路線を識別する際、あるいはポスターやデジタル画面上の情報を瞬時に読み取る際など、私たちは今日でもジョンストンが残した遺産に触れています。
小文字の「i」に注目してください。
点がひし形なのに気がつきますか?
丸でも四角でもなく、ひし形。
コンマもそう。
ペン先が平たいとこんな風になるんですよね。
私もカリグラフィー用のペンを持っているので点がひし形になるのは知っていましたが、こんな身近なロンドン交通局のタイポでそれを見るとは思ってもいませんでした。
こういった公共機関で目にする文字は読みやすさが重視されますが、あらためて見てみると美しい文字だと思います。
わかりやすさという点では「L」の小文字の下の部分がカーブしているのも数字の1と混同することがないようにという工夫です。
早速自分でもこのフォントを使ってみようと思いましたが、残念ながらジョンストンは、1916年にロンドン地下鉄のために制作した専用書体です。
その後作られた改良版の New Johnston と共に現在も Transport for London (TfL) がブランドフォントとして管理しています。
近いものを探すと Gill Sans というフォント。
これは、1928年にイギリスの書体デザイナー Eric Gill がデザインしたサンセリフ体(ゴシック体)で一般的なゴシック体のような機械的な印象ではなく、手書き文字の温かさが少し残っています。
モダンなのに親しみやすさがあって読みやすいわけですから、Gill Sans は長年イギリスの公共機関で使われてきました。
特に有名なのが BBC(テレビ局)、Penguin Books(英国の老舗出版社)、British Rail (英国国鉄)などの会社。
実はエリック・ジルはエドワード・ジョンストンの弟子だった人。
なので、ロンドン交通博物館などで昔のサインを見ると、「JohnstonなのかGill Sansなのか分からない」ということも多いです。
英語と比べると日本語は数も多いしフォントの開発は大変そう。
いったいいくつくらいあるのかAIに聞いてみました。
- Windows標準搭載だけなら数十種類
- Google Fontsの日本語フォントなら約70~100種類程度
- 商用フォントを含めると数千種類以上
すごい数ですね!
ところで紹介した、ジョンストンの記念アートですが、単純にアルファベットが並んでいるわけじゃないんです。
見逃してしまいがちなんですが、「i」と「k」の間に「Johnston」が入っているんです。
ファリンドンに行く機会があったら、点がひし形になっているところも併せて是非確認してみてください。
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