2009年10月4日日曜日

隠れた名作

この間、閉鎖されてしまった教会の中を覗く機会に恵まれました。
最近では、特に英国国教会がたくさんの地区教会を統合して、必要のなくなった建物を閉鎖しています。
信者がそれだけ少なくなってしまった、ということです。
英国国教会は女王様を頭にいただいている関係上、閉鎖されるときは女王様の承認を得なくてはいけません。
そういった決定がされるのが、THE PRIVY COUNCIL です。
私が中を見る機会に恵まれた教会は、フルウェルのセントマイケル・セントジョージ教会です。
2002年のTHE PRIVY COUNCIL の記録を見ると閉鎖の承認が降りたことが記録に残っています。
ここの教区はテディントン(この間紹介しましたよね)と併合されました。

セントマイケルは大天使ミカエルと日本語で紹介されています。
セントジョージはそのまま、もしくは聖ゲオルグとよばれるときも。
ジョージさんは天使じゃなくって人間です。
二人ともドラゴンみたいなものをやっつけているモチーフで登場します。
見分け方は、ドラゴンみたいなのを踏みつけていて、羽があったらマイケル、羽がなかったらジョージ。
これは羽付だからマイケル。こっちは付いてないからジョージ。簡単でしょう?
ジョージさんのことは以前の記事を読んで下さい。
記事A記事B
この写真は祭壇の後ろにおかれた「リアドス」の部分です。
日本ではこれ自体を祭壇と呼ぶ人もいますが、祭壇というのはこういったリアドスの前に置かれている平たい台のことです。
宗派によって、儀式のときに祭壇の前に聖職者が立ったり、祭壇とリアドスの間に立ったりします。
ここのリアドスは装飾が素晴らしくって、息を飲むほど。
第一次世界大戦の直前に作られました。
特に真下から眺めると、ガーゴイルの表情!!どれがガーゴイルかというと、こんなの。
この高さのところにカオがずらっと並んでいるでしょう?ガーゴイルというのは、もともと雨水が建物の壁に伝わないように作られました。
ガーゴイルのところで雨水が跳ねて、石灰分の多い石の建物が悪くならないように、という工夫です。
雨どいができたり、屋根のスタイルが変わって、その必要がなくなっても装飾として残りました。
そしてそのスタイルは、特にグロテスクスタイルと融合して、イギリス独自のものが出来上がります。
因みにグロテスクという言葉は、イタリアの庭園のスタイルの一つからはじまっています。
日本でグロテスクというと、少し違う意味で使われているようですが、本来は洞窟などを模した、ファンタジーな空間やその装飾、といったカンジ。
グロットなども同じ語源です。
ガーゴイルは、ヴィクトリア時代にゴシックのリバイバル時、中世を髣髴させるということで、特にデコラティヴなモノが好んで使われました。
このリアドスもその流れです。
これを見たときにロンドンのV&Aに飾るべきだと思いましたが、もしかしたら日本に飾られることになるかもしれません。
まだ未定なので、なんともいえませんが、閉鎖された教会の中で朽ち果てるべきではない作品です。

2 件のコメント:

ゆき珠 さんのコメント...

ドイツも信者が減って、教会運営が大変みたいですが…閉鎖というのはどうなのかな?
例え閉鎖になっても、それぞれの教会が持つ歴史的価値ってものだけは、何らかの形で残してもらいたいですね。

最近、仏教と騙されて(?)仏教系新興宗教に入ってしまうドイツ人とかが多くて、最悪な改宗になってる人っていますよ。

miki bartley さんのコメント...

ゆき珠さん、おはようございます。
イギリスではたくさんの教会やチャペルが売り払われて、中をすっかり変えて住宅になったりしているところもあります。
天井が高いので、結構人気みたい。
ここも、もしかしたら、そんな風になるのかもしれません。
伝統的な宗教は、どこでも大変みたいですね。