2007年10月4日木曜日

グリニッチの観光

イギリスの観光ガイドの資格の中に「特定の場所のみをガイドできる」というタイプがあります。
大概その地域に住んでいる、ナカナカ教養のあるおじいちゃん、おばあちゃんが趣味で資格を取ったという人達も沢山います。
プロとして食べていくためにやっている人は稀で、殆どは趣味が昂じて、といったところ。

天文台で有名なグリニッチにも、「グリニッチだけ」ガイドが20人ほどいます。
私の持っている資格は「ロンドン・ブルーバッジ」と呼ばれて「ロンドン」と「ロンドンから日帰りの出来る範囲」が全て含まれているものです。
2年間掛けて資格を取るのですが、当然グリニッチも範疇でお勉強も沢山しました。
どちらかというと理数系は苦手なので、緯度とか経度なんて興味はなかったのですが、凝り性なので実際勉強を始めると結構深く調べたりしてしまいます。
日本のバスガイドが喋る内容を「覚える」のに対して、私たちは歴史や芸術を「研究」します。
教科書なんてありませんから、試験に受かった後も勉強が終わるわけではありません。
でもこのおかげでガイドの内容はお客様に応じていくらでも変えることが可能です。
お客様もやっぱり母国語で、自分のレベルにあった話を聞けるというのが生のガイドのいいところです。
解らなければいくらでも質問できるのも便利です。
グリニッチガイドには日本人がいないので、グリニッチ観光局からタマに予約をいただきます。

昨日の仕事もそこからで、午後2時半から5時までというグリニッチ半日観光です。
早めに来てお昼ご飯をNMM海洋学博物館で食べて、仕事に赴きました。
私は博物館のレストランが結構大好き。
のんびり食べられるし、資料なんかにユックリ目を通すことが出来る時間のゆとりが取れるところが沢山。
NMMでは「バンガー&マッシュ」をいただきました。
とても美味しかった。
ワインの小瓶とミネラルウォーターと合わせて12ポンドちょっとでした。

昨日までの雨もあがってちょっと暖かいので、NMMから真っ直ぐ天文台に上がらずに少しだけ迂回して公園を上がることにしました。
すると西側のゲートを入ってすぐ当たりに、巨大なスイマーの姿が!!
これってロンドン塔のお向かいに作られたんじゃあ?
でもここにあるんだから、移されてきたのかしら?
テレビ番組の宣伝のためらしいんですけど、出演者の一人が有名な刺青師らしくて、ちゃんと彼による刺青が肩の所に!
10月7日までここに置かれているそうです。

天文台に着いたら関係のない日本の添乗員さんがグループを連れてガイドの真似事をしていました。
時間があったのでどんなことを言っているのか聞いてみようとそばに立っていると
「ここが世界の標準時間の子午線があるところです、あそこの線がそう」
ふうん、それで?
「入り口はあそこです」
おいおい
「お土産やさんも中にあります」
それだけですか?
「私はここで待ってますから20分後に集合!!」
ちょっと短くないですか?
案の定10分くらいで戻ってきたツアーのおじさんが、「ガイドさん、何で天文台なのに時計が沢山あるんですか?」
お客様って添乗員もガイドも一緒くたなのねぇ・・・。
添乗員さん、何て答えるかと思ったら、
「グリニッチは世界の標準時間だから時計が一杯あるんですよ。天文台とは関係ないです」
・・・・絶句。
ツアーのおじさんは「へぇー、そう」
カワイソー。

グリニッチは数年前から全ての入場料が無料になったので、ツアーがよく来るようになりました。
ツアーの募集には「グリニッチ天文台、海洋学博物館、海軍士官学校などの観光」と書かれていますが、実際は連れて行くだけで「ガイド付き観光」するわけではありません。
別にそれ自体は悪いとは思いません。
日本の人って「そこに行ったんだ」ということが大事という人も沢山いますから。
でもねえ、うそはいけないと思います。
「添乗員だからわかりません」
そのほうが親切です。
「安いツアーだからガイドが付いていないので、自分でがんばって英語の解説を読んでください。」
そこまで言っちゃうと、気分害するかな?
いっそのことオプションにして、希望者だけ有料でガイドを付けるとか?

イロイロ考えながら私のグループを迎えに行きました。
天文台では1時間くらい中をご案内しましたが、ガイドをやっていて一番うれしいのは、
「とても良く解りました、ありがとうございます」の一言です。
予定より20分遅れだったので、寒い中道端でずっとバスが来るのを待っていた辛さも、これで吹き飛んでしまいます。

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