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イギリスは日本と同じように長い歴史を持っています。
なのでニュースで「xxx年前の今日、こんなことがありました」なんて出てくることもしばしば。
この数字が800年前だったり、200年前だったりは色々です。
今からちょうど50年前、今日は同性愛の人たちにとって画期的な日でした。
それは、この日に「同性愛」が犯罪ではなくなったからです。
1967年7月27日成立の「Sexual Offences Act 1967」
今年はその記念すべき50周年。
ということで、最近あちこちでその事実にまつわる記念イベントや展示を目にします。
ロンドンの大英図書館でも特別展。
今年の6月2日から9月19日までで、入場は無料です。
複雑なテーマを、とても分かりやすく展示していておすすめです。
小さなスペースなんですが、中身が濃いので、見学には1時間くらいは必要じゃないかと思います。
ここですべてをカバーするのは不可能なので、少しだけ紹介しますね。
この先は、表現に性的なものも含まれますので、ご注意ください。
まず、イギリスで「Buggery(アナルセックスや獣姦のこと)」に対する法律ができたのは 1533年のことです。
この年、国王のヘンリー8世は、彼の2番目のお妃になるアン・ブリンと結婚、
ローマ法王から破門宣告を受け、のちのエリザベス1世が誕生しました。
この法律の名前は「An Acte for the punishment of the vice of Buggerie」
通称「Buggery Act 1533」と呼ばれ、1861年まではこの法に触れると死刑に値する犯罪でした。
同性愛者が理由での処刑、最後は1835年。
ジェームス・プラットとジョン・スミスの二人がこの法(実際は1828に包括された別の法律)によって処刑されています。
1861年からは死刑ではなくなったものの、強制労働を伴う懲役刑が同性愛者に科されていました。
この刑を受けた中でもっとも有名な一人が、オスカーワイルドです。
ワイルド(左)とボージー(アルフレッド)
ワイルドはクイーンズベリー侯爵家の息子、アルフレッド・ダグラスと恋人関係にあったのですが、それが気に入らない侯爵。
その侯爵がワイルド宛に残したカードが事の起こり。
カードには「女々しい、ソドムの住人(本文にはスペルミスがありました)である、オスカー・ワイルド君」と書かれていました。
ソドムというのは旧約聖書に出てく地名で、あらゆる淫蕩・変態行為に耽る人々が住んでいるということになっています。
普通、ソドムの住人と言えば、アナルセックスをする人を指します。
これに怒ったワイルドは侯爵を訴えますが、その裁判で侯爵は自分の正当性のために、ワイルドが同性愛者であることを証明する証拠を用意することになるのです。
結局ワイルドは逆逮捕、2年間の強制労働と懲役刑の実刑判決となりました。
こちらは1890年に出版されたリピンコット誌(左)
ワイルドの「ドリアングレイの肖像」が目玉として扱われています。
でも内容が不適当(同性愛を扱っている)ということで、WH・スミス(イギリスの有名書店)では取り扱いをしないという措置が取られました。
翌年ワイルドは、大幅に書き直したものを出版(右)しますが、裁判で証拠として提出されたのはオリジナルのものでした。
この展示には、たくさんの書籍が、その扱う内容によって出版されなかったり、批判を受けたり、そういった例がたくさん並んでいました。
出版だけではなく、お芝居にも検閲がありました。
The Vortex(渦)という作品の上映許可に関するレター。
同性愛をドラッグ常用という比喩で扱った作品、1924年です。
主役を演じたノエル・カワード自身は、いくつかの同性愛をテーマにした作品のモデルになりました。
芸術の世界だけではなく、第2次世界大戦中、ドイツの暗号解明で活躍したアラン・チューリング。
彼も同性愛で逮捕、懲役か去勢かの選択を迫られて後者を選びました。
2年後1954年に自殺を図って死亡。
さて、その3年後、ある白書が出版されます。
通称 Wolfenden report と呼ばれるこれ。
正式名は「The Report of the Departmental Committee on Homosexual Offences and Prostitution」
この白書の中に「法律の機能とは、公序良俗を保ち、市民を攻撃的または有害なものから守り、他人の搾取や悪徳から十分な保護手段を提供することである...我々の見解では、 市民の私生活に介入したり、特定の行動を強制しようとしたりすることは法律の役割ではない」という文があります。
この白書から10年後、1967年7月27日に「Sexual Offences Act 1967」が出されました。
この法律によって「成人(イギリスでは21歳)の二人が同意によって、プライベートな場所で同性愛行為に及ぶこと」が犯罪ではなくなったのです。
もちろんこれですべてが解決しただけではありません。
1983年に出版された「エリックとマーティンと一緒に住んでいるジェニー」が公立図書館に置かれていることについて、保守派の購読層を持つデイリーメール紙が告発しました。
「税金を使って、同性愛を宣伝している」というわけです。
こちらが問題の本。
これは社会的に大きく取り上げられて、1988年の地方自治体法の28条目の条文成立に影響を与えました。
28条には「地方自治体は、意図的に同性愛を宣伝したり、同性愛を促進する意図で資料を公表したりしない」または「普通校で同性愛を家族関係だと偽り認めさせるような教育をしない」という内容が含まれています。
この法律は2003年まで有効でした。
ゆっくりとですが、それでもイギリスは同性愛者の人権について改革を行っていきます。
2004年には民間パートナーシップ法で同姓の準結婚が認められ、2014年には同性婚が法制化されました。
2013年2月のハローマガジン。
もちろん、LGTB の人たちに向けられる差別はいまだにあります。
でも、こういった啓蒙活動によって、少しでも理解が深まるといいなぁって思います。
是非開催中に足を運んでください。
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