2012年5月23日水曜日

Wilton Diptych その2

先日はウィルトン・ディプティッチのことを書こうとして、すっかり横道にそれてしまいました(笑)
ご興味のある方は、ウィルトンディプティッチの前置き(リンクします)をどうぞ。

ナショナルギャラリー所蔵の作品なので、拡大して観たいという方には、ナショナルギャラリーのサイト(リンクします)をどうぞ。

前置きで触れたように、この「Wilton Diptych」はペンブローク伯爵の所蔵でした。
でも作品自体は彼には関係ありません。
600年ほど前に作られた、個人的なお祈りに使うための、携帯可能な祭壇です。
左右ふたつの絵が、真ん中で小さな鉄製の蝶番によって繋がれています。
そこで、今見ている状態は、本を開いたようなカンジ。
逆に、下の写真は、本で言えば表紙と裏表紙に当たる部分です。
だから、内側に比べて、かなり損傷が激しいわけです。

それでも600年の歳月がたっているなんて、ちょっと信じられないくらい。
Wilton Diptych は、樫の木に卵テンペラで描かれています。
絵の具がチューブに入っているのを見慣れている私たちには、ちょっと想像しがたいのですが、200年位前までは、絵の具とはミネラルや金属を粉にするところから始めなければいけなかったのです(映画「真珠の耳飾り」にでてきますよね)
そして、その粉末状の色を、何らかの溶剤(ミディアム)に混ぜて利用したのです。
卵テンペラでは卵黄が使われました。
油絵の場合は油が使われます。
水彩は水。
大英博物館にあるミイラのマスクには、蝋を使ったものなどもあります。


この肖像画は英国王リチャード2世のもの。
普段はウエストミンスター寺院に展示されています。
(2012年の7月から11月までは、シェークスピア関係の特別展示のために大英博物館に置かれる予定です)
英国王の肖像画としては、最も古いものだそうです。

彼は、10歳の時に国王として即位しました。
エドワード3世が始めた、フランスとの100年戦争中のことです。
エドワード3世はリチャードのおじいちゃん。
お父さんは、その息子ブラックプリンス。
長男だったので、跡継ぎです。
でも、戦争中に亡くなってしまいました。
リチャードにはお兄さんがいて、本当なら彼が世継ぎですが、その彼も亡くなって、リチャードに順番が回ってきました。

エドワード3世は、幸せな結婚をして、ブラックプリンス以外にもたくさんの子供をもうけました。
うるさい親戚の間で、しかもお隣フランスとは戦争中。
神様に頼りたくなる気持ちもわかります。

このウィルトン・ディプテッチは少年王リチャード2世のためのものなのです。

さて、今回も長くなりすぎてしまったので、実際にディプティッチの内容を観るのは次回ということで(笑)

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