2014年10月25日土曜日

レンブラント特別展で愛を観る

ロンドンのナショナルギャラリーで、レンブラント展をやっています。

15 October 2014 – 18 January 2015
大人 £18.00

今回は特にレンブラントの後期の作品を集めたということで、1650年から彼の亡くなる1669年までの作品を一堂に観ることができます。


私がすごく参考になったのはエッチング。

これまでレンブラントの作品は比較的大きな油彩画ばかりを見てきました。
この展示では彼のエッチングをたくさん見ることができます。


私にとってのレンブラントは、ゴッホとターナーを合わせて200年引いた画家(笑)
ゴッホの筆遣いとターナーの光のとらえ方を200年以上前に現実にした天才。

そんなギミックを引いて、彼の才能がわかるのがエッチングなわけです。

エッチングには色はありません。
デジタルの世界。
黒(Yes) なのか白(NO)なのか。


これまでレンブラントのエッチングを観る機会はありませんでした。
しかも同じエッチングの何枚目かという細かいところが面白い。

各部屋の中心に位置していたり、壁に飾ってあったり。

私が見に行ったときは、ほとんどの人は大きな油絵を中心に見ていました。
でも、時間に余裕があれば、ぜひエッチングに注目してください。



展示作品の大きなものはほとんどがナショナルギャラリー所蔵。
だけど、オランダ国立美術館とか、スウェーデンから借りてきたものもあります。

オランダの絵は日常生活の狭間に宗教的な道徳を見出すことが好き。
また、何気ない絵の中に聖書の一節をみいだしたり。

私が一番好きなレンブラントの絵。
これは普段なら一般の無料の部分に展示されています。
ウェブではちゃんと見られないので、ナショナルギャラリーで実物を見てください。


これはレンブラントの恋人ヘンドリッキェだと思われています。
正式な妻には迎えなかったけれど、レンブラントが愛した女性。

とても小さな絵ですが、この絵を見ていると幸せな気分になります。

表情がいい。

彼女が着ている白い衣はかなり大幅なタッチでさっと仕上げられています。
筆というよりは、パレットナイフみたいなもので、ざっと塗った感じ。

それなのに、対して顔の部分は細かな筆遣いで柔らかな仕上がり。

彼女の背景には岸に置いてある豪華な金襴緞子(?)
これがある故に、彼女がただの女性ではなく女神だという設定になり得ます。

なぜそんな絵を描いたのでしょう?

この絵を描いた年にヘンドリッキェは教会に行くことを禁じられるのです。
理由は「売女」だから。
結婚していないレンブラントと性的な関係を持つということ。

レンブラントは彼女を女神にすることによって、彼女の立場を守ろうとしたのかも。
彼女との間に女の子が生まれたのもこの年。


もう一つ、絵を紹介しますね。
これはこの展示会で初めて知った絵です。

レンブラントが亡くなった年に着手した絵で完成はしていません。
普段はストックホルムの国立美術館に置いてあるそうです。
聖書からの引用です。
キリストを一目見るまでは死ねないと言っていたシメオンがエルサレムの神殿で出会うところ。

キリストは赤ちゃんなので出会うという言い方はおかしいかもしれません。

シメオンの手を見てください。
抱くこともままならない、キリストの神聖さが出ていると思いませんか?

この絵を描いた年にレンブラントは亡くなるわけです。
なんと、それまでに彼は80枚もの自画像を描いているのです。

シメオンが亡くなる間際。
彼の最後の喜びと、これまでの人生が走馬灯のように駆け行くさまがこの絵に凝縮されています。
80枚もの自画像を描いたレンブラントだから、描けるシメオンだと思います。

この絵は展示会の最後の部屋の最後の絵。
見逃さないでくださいね。








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