2015年11月12日木曜日

認知症の人にやさしい住まい

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イギリス北東部にあるサンダーランドで、認知症にやさしい建物をいくつか見てきました。

介護付きホームのような施設だと週に600ポンドくらいがサンダーランドの平均だそうです。

因みにイギリスの平均は週に738ポンド。
年間で約4万ポンドかかる計算です。
平均の介護付きホーム入居期間は66週間。

地方自治体から一部ないし全額の費用負担があります。
が、こういった手当が必要かどうかの査定があります。
マイホームや一定以上の貯蓄がある家庭だと、まず下りない。
そこで、家族のケアホーム入居費を捻出するために、イギリスでは去年1年で百万人以上の人たちが自宅を売りに出したそうです。

重度の認知症のために病院で入院ということになれば1晩800ポンド以上。
もちろんこれはNHS の負担なので、個人払いではありません。


そこで国としてもこれから増えてくる認知症の人たちをいかにケアしていくかは重要な課題。
金銭的にみても、悪くなるまで無視して病院に入られるより、そういった事態にならないような予防作戦が有効だということには気が付いているようです。
ただ、今現在かかっている費用を止めるわけにはいかないのが難しいところ。
お金がかかりすぎている場所から予防の場所への、現在は意識のシフト中のようです。
今日のBBC でもメンタルヘルスのケアがなってないといった批判的な内容のニュースが流れていました。



それほど数は多くないのですが、エクストラケアハウジングといった住み方があります。
これはマンションタイプの住宅に24時間体制のケアが必要に応じて受けられるもの。

サンダーランド市にあるエクストラケアハウジング(リンクします)
この写真は私が訪れたHaddington Vale。
写真はウェブサイトから借りました。

ケアホームとの違いは、その入居者はそこで自活しているということです。

私が見せてもらった物件は、寝室が2つにキッチンとリビングとバスルームが付いているもの。
入居者は家賃を払って普通に暮らしています。
もちろん外出も好きな時に好きなだけできますし、家族が遊びに来るのに制限もありません。

普通のマンションにレストランとコインランドリーと美容室がくっついているといった風。
レストランと美容院はテナントだそう。
入居者は好きな時に有料でこういったサービスを受けることができる他、有料のケアを受けることもできます。
入浴の手助けやお買い物の代行など、色々なサービス。
入居者の経済状況や身体の状態に応じて、地方自治体が費用を負担する場合もあります。

普通の賃貸住宅と同じように、家具は入居者のもの。
壁に家族の写真などがたくさん飾ってある部屋もありました。

このエクストラケアハウジングの家賃は光熱費込みで週160ポンド。

サンダーランドはロンドンに比べると物価が安い地域です。
住宅の値段や家賃も随分違います。
普通のマンションを例に挙げると、2つ寝室のあるタイプで、市内中心部だと週に100ポンドから130ポンドくらい。
川のそばで景色がいいとか、贅沢な内装で150ポンドなんていう物件もあります。

なのでエクストラケアへのアクセスが付いて週160ポンドで安心して暮らせるってすごくいいと思います。
案の定、ここは長いウェイティングリストがあるそうです。

55歳以上の人たちが入居できるそうですが、ほとんどの入居者は80代だそう。

レストランでは2コースのお食事が5ポンドで提供されています。
私が訪れた日のメニューはローストチキン。
もちろん自宅のキッチンでお料理もできます。

廊下も広く取られていて、車いすでの移動にも便利。
階段にも廊下にも手すりが完備されていました。

でも一番気を遣っているのは視覚にかかわる工夫。

自分の部屋が何階の何号室なのか覚えられない人のために、各階の色を変えたり壁にかかっている絵に工夫してありました。

また、認知症の人は色相のチャートを見て、その色から30度くらいまでの色の識別が難しい場合があるそうです。

そこで、公共部分の家具などは周りの床や壁と色が近くなりすぎないような工夫が必要。
影が別のものに見えたり、妄想の引き金になったりすることもあるので、採光をよくして必要以上に影を作らないようにしています。


操作が必要なものは目立ちやすいように(明度や色相の)コントラストをつけたり、逆に触ってほしくないものは似たような色にしたりするのもアイディアだそうです。

また、バルコニーやパティオなどへのアクセスは思っている以上に効果があるそうです。
ストレスの軽減や一日の流れを感じたりすることができるので、安全柵や手すりを完備したうえで、屋外へのアクセスを容易にする必要があります。

もちろん認知症といっても軽度から重度まで幅があります。
全く普段の生活に支障のない人たちも多いのです。
私がもし認知症になったら、ホームとかに入るよりも、なるべく普通の暮らしを長く続けたいな。



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