2025年7月10日木曜日

大英博物館で広重を見てきたよ!



先日、大英博物館の広重展を観てきました。
中に飾られているのは初めて公開されるものがほとんど。
これまで個人のコレクションだったためだそうです。


ロンドンにあるたくたくさんの博物館や美術館は入場が無料なので、こういった有料の展示が設けられています。

大英博物館では、有料のギャラリーを予約すると入場の行列をスキップできる。
いつも長い行列だから、うれしいですね!

広重の版画は風景画が有名です。
はじめ、彼はなかなか人気が出ませんでした。
いろんなジャンルの絵を描いていましたが、認められるようになったのは風景画がきっかけ。
東海道のシリーズが有名ですね。

彼の版画、実は彼自身が木を彫ったわけではありません。
彼はデザイン担当。
木版に色を乗せて刷るのはまた別の職人さん。
そんな版画は何百枚も同じ版から刷られます。

もちろんはじめのころは版が傷んでいないのでくっきりきれいに刷ることができます。
これ、斜めから撮ったのでサイズが違って見えますが、同じサイズです。
左側はプリントし始めたばかりのもの。
でも右手には版画の原版が劣化していて色の乗りが悪かったり、版を重ねていくと、版元の意見で別の色を加えたりすることもあって、少しずつ違った作品になっていく。

実はこの右側にある作品はゴッホが持っていたそうです。
かなり刷られた後だから安かったみたい(笑)
そしてゴッホはそれをこんな風にキャンバスに写し取りました。
これからインスピレーションを得て、油絵で仕上げた作品がこちら。
そういわれてみれば、ゴッホ美術館で昔見たことがあるかも。

広重は鳥や花を短冊の中に詩と組み込んだものも円熟期にはたくさん描いたそうです。
版画は広重のような絵師だけで作られるものではありません。
普通は版元とよばれる存在がいて、これが作品の企画を立案し、絵師、彫師、摺師といった職人を手配し、完成した版画を販売します。

この美しい花鳥画は川口屋という版元のために広重が描いたものです。
繊細で生き生きとした鳥の鳴き声が聞こえてきそうに美しい。

この真ん中の短冊にはちょっと面白い印があります。
江戸時代のものですから、読むときには右から。
右は鹿のようですね。
でもこちらは福という字を(草書で崩したものを更に絵に直して)表しているのです。

そして左は馬の後ろ姿。
こちらは寿だといえば福よりも納得できそう。
福は幸福、寿は長寿ということで、幸せに長生きという縁起の良い印章。
福寿印ともよばれるこちら、何と別名はバカ印。
ウマとシカですからね(笑)
こういったジョークが広重は好きだったそうです。

浮世絵は庶民の文化。

なのでさりげなくジョークを組み込んで真面目になりすぎないことが粋とされた文化。
風景画にもその中の人物が庶民の生活感を出していたり、皮肉が込められていたりするのが広重流。

例えば有名な東海道五十三次。
こちらは日本橋。
大名行列がやってくる、いかにも江戸の風景です。

「偉そうに、また来やがった」みたいな顔つきの商い町人たちが、行列が来るので橋を渡るのをあきらめて急いで脇に退く様子。
それなのに犬や猫は知らん顔で橋の前から動かない様子。
庶民に人気があったのも頷けますね。

京都の四条河原の夕涼みではさりげなく版元の名前を入れこんだりしています。
手前で宴の真っ最中の人々の間に。


広重の版画は特に青が美しいものが多いです。
この時代、元はドイツで発明されたプルシアブルーという人工の青色がありました。
1760年位から日本でも使われていたそうです。
それが中国で大量生産されるようになって、安価なものが日本に入ってきたのがちょうど広重が活躍した時代。
インクのように濃淡を出すことができたので、青のみで版画を作ることも可能でした。
夏に涼みたいうちわにはぴったりの色合いですね。
広重の作品であまり残っていないものが、うちわ用の版画。
青のみで刷られた版画は藍染絵とよばれたそうです。
うちわはもちろん使用されると劣化するのであまり残らないそうです。
ですからここに残っているものはうちわ用にプリントはされたけれど何らかの理由でうちわにならずに残された作品だそうです。




ぜひ足を運ぶといいと思います。

特別展以外にも、日本館に何点か版画がありました。
お金をかけたくない人は、そちらは無料でご覧になれます。






今日のイギリス情報ブログのランキング(リンクします)





  ブログのランキングに登録しています。 よかったらクリックして応援してください。
イギリスランキング コメントは承認制なので反映に時間がかかります。

0 件のコメント: