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2026年6月18日木曜日

すごく大変だった、バイユータペストリーのチケット購入

さて、バイユータペストリーのチケットは買えたのか?


チケットリリースの日、私は不運にもお仕事が入っていました。
なので、自由時間が自分の意思でとれない。
しかも観光じゃなくて通訳のお仕事だったこともあり、ランチの時間が何時になるのかもお仕事の進み具合に左右されてしまう😭という、チケット購入にとっては都合の悪い条件でした。


ところが普段の行いがいい(爆)ためなのか、ちょうどリリース時間の12時半にランチが取れそう。
しかもお客様とは離れての自由食なので、自分の時間が取れる!!


「やったー!」私ったら、運がいいわ!
そう思って大英博物館から送られてきた、チケット購入サイトへのメンバー予約専用リンクをクリックしたら予約のサイトへアクセスする順番待ちだという表示。
こんな感じです。
あなたの前に12285人並んでいます。
あなたの順番が来るまでの予想時間は1時間以上・・・。

これね、アップデートの時間を見てください。
12時59分。
クリックした時間から30分近く待った挙句がこれ。
なので、もうこれは記事にするしかないと思ってスクリーンショットしたのです。

ネガティブなことはそのまま受け入れずに何らかの形で昇華させるのが私風の楽しく生きるコツ(笑)
一番手っ取り早いのは、ブログの記事にすることです😂
もちろん自分の順番が来る前にランチタイムは終わってしまい、購入はできませんでした。

でもね、お友達のひとりは12時からスタンバイして自分の順番になってログイン画面が出てきたら「パスワードが間違っています」という表示が出て、やっぱり買えなかったって。
それも辛いなぁ(笑)

さて、夕方、お客様がホテルで着換えの時間が1時間ほどあったので再度挑戦。
今度は待ち時間45分という表示が出てきました。
どんどん進んでいきますが、それだけ購入されているってことで、もう9月中の予約は無理かもしれない。

そう思いながら5,000人以上いる私の前に並んでいる人の数が減っていくのをボーッと見ていました。
こんな、生産性のない時間もたまには必要😁

あ、待ち時間が1234に並んだ!

面白いのでこれもスクリーンショット。
ずっと見ていると待ち時間は増えるときもあって興味深い。
1分おきにアップデートされるのですが人数が減っても時間が増えたりする。
どうやって計算しているのかなぁ?

404も面白い。
なんだかアクセスできないって言われているみたい。
さあ100人を切ったところで残り1分と出てきましたがここからが長かった!
待ち時間がどんどん増えていって5分くらいまで戻ったんですよ!
でもやっと1分以内の表示に変わって、結局それから3分後に購入サイトにアクセスできました🎉
1分以内の表示がずっと続いたのはもどかしかったなぁ。
だってお客さまとの待ち合わせ時間が刻々と近づいていましたから!

さて、私はお客さまと入場する時に便利なように2人分のメンバー費を払ってメンバーカードを2枚持っています。
エクストラカードというカテゴリー。
ということでチケットは2枚購入できるはずなんですが、何回トライしても2枚買えない。
別に私のチケットだけでいいんだけど、2枚あったら誰かと一緒に見に行けるのに残念でした。

ま、買えただけラッキーかもね。

夜中に気になってもう一度優先レーンのリンクをクリックしたら、待ち時間無しでアクセスできましたが、9月のチケットは全て売り切れ、10月も半ばまで売り切れでした。

この記事をアップする前にもう一度見たら、11月も半分以上売り切れ。
まだ売られている日も予約のページに入ったら数個のスロットが残っているだけという状態です。

一般の人用の購入は7月1日から。
恐らくそれ用に全てのチケットを売り切ってはいないと思うので行ってみたい人は準備を整えておくといいと思います。
購入の日までにアカウントを作って、とりあえずサイトにログインできる状態を事前に済ませておくとスムージだと思います。
きっと7月1日もログイン画面が出る前に待ち時間がある可能性が高いです。



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2026年6月16日火曜日

バイユー・タペストリーを観てきたよ!


実は観たいものがあったので行ったのです。
それは何かというと…

バイユー・タペストリー!

バイユーというのは北フランスの町の名前。
バイユーの綴りは「Bayeux」です。
ここには大聖堂があって、ここの司教であったオードさんがノルマンの征服に関して自分の功績を後世に残すために刺繍で歴史を刻んだものがバイユータペストリーというわけ。
因みに、このオード司教はウイリアム征服王の(片親違いの)兄弟です。

バイユータペストリーは、普段は北フランスのバイユー博物館(リンクします)に展示されていますが、2025年の9月から博物館は改装のため閉鎖されています。

「ノルマンの征服」というのはイギリスの歴史上もっとも重要な出来事のひとつ。
それまでアングロサクソンの王家だったこの国とノルマンディーからやってきた一族との「ヘイスティングの戦い」の後、この国がノルマンディー公爵ウイリアム征服王によって治められたことをさします。

バイユータペストリーは、バイユーで製作されたわけではなく、おそらく征服後のイングランドの、刺繍の技術に定評があったカンタベリーで作られたのではないかといわれています。

実は今年(2026年)9月から翌7月までバイユータペストリーが約1000年ぶりにイギリスに返ってきます。
ずっとじゃなくて、バイユー博物館が改装のごく一時期のことですが、イギリスではかなり話題になっています。
展示場所は大英博物館。

大英博物館の特別展示は普段ならメンバーは予約なしで何度でも訪れることができるのに、このバイユータペストリーはメンバーも予約必須、しかも無料閲覧の回数制限(3回目からは有料)まで設けられているという人気(の予想)ぶり。

そして今日はその予約開始日。
今日12時半にまずメンバーの予約がリリースされて、一般の予約は7月1日からだそう。
私はこの予約サイトがリリースされるころにはお仕事中なので、合間を見て予約にトライするつもり。



さて、このバイユータペストリーが何でレディングに関係あるのってお話しなんですが、実はヴィクトリア時代にこのバイユータペストリーの精密なレプリカが作られて、それが展示されているのがレディング博物館というわけ。

もちろん歴史は約1000年という本物には及びませんが、1885年製作といえば十分にアンティークです。
そしてかなり精巧なレプリカなのでこれをじっくり勉強してから本物に臨もうというのはなかなかいいアイディアではないかと思ったのです。

ノルマンディーには何回も家族のホリデーで行っていますが、これを観たいというのは私だけだったこともあり、まだ私は本物を観たことがありませんでした。

レディングはリッチモンドからそれほど離れていませんが、それでも片道1時間ほどかかります。
なので「いつか観たいな」レベルだったのが、大英博物館の展示が始まるのに合わせて「ぜひ観ておきたい」に変化したわけです。


このレプリカはスタフォード州リークの刺繍家エリザベス・ウォードルさんが提唱してリーク刺繍協会で製作されました。
オリジナルのタペストリーの刺繍部分下にマチの部分を加えて、そこに製作者の名前が刺繍されています。

物語はエドワード証聖王がイギリスの宮殿にいるところから始まります。
このシーンの下にはエリザベスウォードルの名前があります。



各シーンの名前の中には彼女と同じ苗字も含まれるので、おそらく彼女の娘たちではないかと思います。
エディス・ウォードル

エレノア・ウォードル

他にもリディア・ウォードルやマーガレット・ウォードルも見かけました。


スタフォード州のリーク刺繍教会では絹の刺繍が一般的だったのですが、オリジナルのバイユータペストリーがウール糸での刺繍だったために、あえてウール糸を使用しました。
また、染も科学的なものではなく草木染が使われていて、オリジナル作品に対する敬意が見てとれます。

エドワード証聖王が亡くなってみんなが悲しんでいるシーンやその後ウエストミンスター寺院に棺が運ばれていく様子などは普段からお客様にご案内していることなので、こういった風に視覚化されているのを観るのは感慨深いです。

タペストリーでは時間が逆転していて、棺が運ばれるシーンが先になっています。

泣いているのはエドワード証聖王の王妃エディス(わかりやすいように矢印を入れました)そして彼女の兄ハロルドがエドワードの後を継いで英国王になります。

こちらがハロルドの戴冠式。
空を見上げるとハレー彗星!
ハレー彗星はこの戴冠式に悪い予兆として影を落とします。
実際ハレー彗星が1066年にイギリスで観測されたそうですが、戴冠式は1月、彗星が現れたのは4月末ということで数か月の差があります。

こういった史実も興味深いのですが、私は宴会のシーンが特に面白いと思いました。

お鍋でどんなお料理を作っているのかなぁ。
楽しそうですよね。
あ、焼き鳥かな?

本物のタペストリーを大英博物館で見る時には閲覧の方法がどうアレンジされるかはまだわかりません。
博物館からの案内によれば、壁にかけるスタイルではなく、台の上にフラットに設置されるようなことが書いてありました。
真偽はともかく動く歩道みたいになっているという噂も聞きました。
多分その方がたくさんの人が一度に見られるからということじゃないかと想像します。
どれくらいゆっくり見学できるのかもわからないし、予習してから行くのは大事だと思います。


さて、レディングのタペストリーはほぼ完全なレプリカではあるのですが、部分的に変えられているシーンが無いわけではありません。

ここから先は少しだけアダルトな内容が含まれますので嫌な人は飛ばしてください。

バイユータペストリーにはペニスがたくさん出てきます。(←いきなり、何の話!)
オックスフォードのジョージ・ガーネット教授が2018年に数を確認したところ、約70mのタペストリーの中に93あったそうです。
教授クラスの人がまじめに数えている場面、想像すると可笑しい!!
ただし、そのうちの88は動物(主に馬)のもの。
人間のもの(つまり裸の男の人がペニス込みで描かれているのは)残りの5体。
その一部をBBCが紹介している動画がわかりやすいです。

このビデオの冒頭に出てくるシーンはこの場面。
バイユータペストリーにはたくさんの登場人物が出てきますがほとんどが男性。
メインの刺繍に出てくる女性はたったの3人で、子供はひとりだけ。

その貴重な女性のひとりが青い衣をまとった男性から顔を触られているシーン。
それでは左下に注目してください。
こちらの上下の写真は本物のバイユータペストリー、大英博物館のサイト(リンクします)から


この男性はおそらく僧侶なので、女性に触るということはスキャンダル。
そのシーンの下に出てくる裸の男性がこの僧侶と同じポーズで呼応していることからスキャンダルさを増幅しているんです。

ところがレディングのタペストリーはこちら。

拡大するとこんな風にパンツをはかされてしまっています(笑)

顔に触れているシーンはそのままなんですけどね。



写真を撮ったので、3人目の女性も載せておきますね。
おうちが放火されてその中で逃げ惑う女性と手を引かれている子供の姿が場面右手に見えます。
場面左手ではウイリアムが使者からハロルドの動向に関するニュースを聞いています。

為政者とそれが起こす戦争の下、被害を受けるのは市井のものというわけです。
1000年前も今もちっとも変りませんね。










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2025年9月2日火曜日

苦情のお手紙を観てきたよ!

大英博物館には面白いものがたくさん展示されています。
気が付かずに通り過ぎてしまうともったいない!

でもね、似たようなものが並んでいて、そんなに(一般の人から見て)見栄えしないものだと通り過ぎちゃいますよね。

例えばこれ。

どこが面白いの?

この右端の粘土板、ギネスブックに載っているんですよ!

実はこの粘土板は紀元前1750年代ごろに楔形文字で記された、世界最古の苦情のお手紙(驚)

ナンニさんが銅の買い付けに際してその品質とカスタマーケアについて文句を言っている内容です。

この粘土板が見つかったのは古代都市ウル。
アガサクリスティーが発掘調査隊に参加して、彼女の自伝にも詳しく記したあのウルです。

このウルを居にしていた商人にエア・ナシルという人がいました。
彼が苦情を受け取った人。
古代のメソポタミアでは日常生活に欠かせないのに採れないから遠くから運ばれて貴重だった銅、その取引に関する苦情です。

では何と書かれているか。
わかりやすく単純に箇条書きで書きだしますね。

1,良質な銅を売るといったくせに、使者に差し出された銅はその価値がなかった。

2,その時の使者に対する態度が悪かった。

3,返金の要求のための使者も何回も手ぶらで送り返した。

4,テルムンのいろんな商人と取引をしているが自分をこんな風に扱うのはあなただけ。

5,あなたの代理で宮殿と神殿に1080ポンドずつの銅(おそらく取引税)を支払った。

6,とりあえず全額返金して。

7,今後の取引は自分の領地内で自分で銅を選定します。

8,今後対応が変わらないのならあなたとの取引はもうしません。

途中に些細な額の銀でもめたようなことも書かれています。
どの程度このエア・ナシルさんが悪徳商人だったかはわかりませんが、大英博物館には他にも彼の名前が出てくる粘土板を所蔵しています。
残念ながら、それらは展示がされていません。


古代のアッカド語(しかも楔形文字)を研究者が英訳した全文はこちら。
"Tell Ea-nasir: Nanni sends the following message:
When you came, you said to me as follows : “I will give Gimil-Sin (when he comes) fine quality copper ingots.” You left then but you did not do what you promised me. You put ingots which were not good before my messenger (Sit-Sin) and said: “If you want to take them, take them; if you do not want to take them, go away!”
What do you take me for, that you treat somebody like me with such contempt? I have sent as messengers gentlemen like ourselves to collect the bag with my money (deposited with you) but you have treated me with contempt by sending them back to me empty-handed several times, and that through enemy territory. Is there anyone among the merchants who trade with Telmun who has treated me in this way? You alone treat my messenger with contempt! On account of that one (trifling) mina of silver which I owe(?) you, you feel free to speak in such a way, while I have given to the palace on your behalf 1,080 pounds of copper, and umi-abum has likewise given 1,080 pounds of copper, apart from what we both have had written on a sealed tablet to be kept in the temple of Samas.
How have you treated me for that copper? You have withheld my money bag from me in enemy territory; it is now up to you to restore (my money) to me in full. Take cognizance that (from now on) I will not accept here any copper from you that is not of fine quality. I shall (from now on) select and take the ingots individually in my own yard, and I shall exercise against you my right of rejection because you have treated me with contempt.”


興味があるなら読んでみてください。




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2025年8月3日日曜日

大英博物館の人気者は?

大英博物館でどの展示がいちばん人気なのかは意見が分かれるところだと思います。

結構いい線いくんじゃないかと個人的に思うのは「モアイ像」かな?


モアイ像は博物館中央のグレートコートと北出入り口の間にある「生と死のギャラリー」に展示されています。
日本からのお客様がこの像を見てまず初めに口にする質問は「これ、本物?」です。
「本物ですよ、イースター島から持ってこられました」って答えると信じてもらえないこともあります。
大英博物館にあるモアイ像はヴィクトリア女王から寄付されたものです。

彼女が君主だった時代、イギリスの調査船がイースター島に立ち寄ったときに首まで地面に埋められていたこの像を発見して掘り出して持って帰ってきたそうです。

ヴィクトリア女王はその知らせを聞いてすぐにモアイを大英博物館に寄付したので、モアイはこの国に到着後、直接大英博物館に運び込まれています。
1869年に展示が始まって以来、モアイはずっと大英博物館の人気者。

大英博物館のモアイはラパヌイ(イースター島)にある多くのものと違ってホア・ハカナナイアとよばれています。
他のモアイ像が火山岩で作られているのに対して、ホア・ハカナナイアは玄武岩で作られました。
また背中側にも鳥人の掘り込みがあります。
鳥人はラパヌイの信仰では豊穣をもたらすとされていました。

ホア・ハカナナイアを首まで埋めたのはおそらく儀式のためだったのでは、と思われています。
そういった意味ではモアイの中でも特別に価値があるモアイだそうです。

2018年にはラパヌイから使節団が大英博物館にやってきて正式な返還要求があったそうです。
またその時に使節団はこのホア・ハカナナイアにお供え物を持ってきていて、現在像の前に置かれています。
そして今でもラパヌイの人々と大英博物館の間で協議が行われているそうです。
今のところは大英博物館にモアイがあることでラパヌイの文化や知名度を世界中に広めることに貢献しているということ、そしてラパヌイに残った900体ほどのモアイの研究の手助けをしていることが大英博物館側の認識のようです。

いつも人に囲まれているのでお供え物はちょっと見づらいので大英博物館の写真を載せておきます。

実は大英博物館には展示されていませんがもう一体のモアイがあります。
そちらも玄武岩、名前はモアイ・ハヴァです。
高さは2メートルほどなので、ホア・ハカナナイアよりも50センチほど低く、少しだけぽてっとしています。
2体並んだ企画とか、将来的にはあるかもしれませんね。




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2025年7月10日木曜日

大英博物館で広重を見てきたよ!



先日、大英博物館の広重展を観てきました。
中に飾られているのは初めて公開されるものがほとんど。
これまで個人のコレクションだったためだそうです。


ロンドンにあるたくたくさんの博物館や美術館は入場が無料なので、こういった有料の展示が設けられています。

大英博物館では、有料のギャラリーを予約すると入場の行列をスキップできる。
いつも長い行列だから、うれしいですね!

広重の版画は風景画が有名です。
はじめ、彼はなかなか人気が出ませんでした。
いろんなジャンルの絵を描いていましたが、認められるようになったのは風景画がきっかけ。
東海道のシリーズが有名ですね。

彼の版画、実は彼自身が木を彫ったわけではありません。
彼はデザイン担当。
木版に色を乗せて刷るのはまた別の職人さん。
そんな版画は何百枚も同じ版から刷られます。

もちろんはじめのころは版が傷んでいないのでくっきりきれいに刷ることができます。
これ、斜めから撮ったのでサイズが違って見えますが、同じサイズです。
左側はプリントし始めたばかりのもの。
でも右手には版画の原版が劣化していて色の乗りが悪かったり、版を重ねていくと、版元の意見で別の色を加えたりすることもあって、少しずつ違った作品になっていく。

実はこの右側にある作品はゴッホが持っていたそうです。
かなり刷られた後だから安かったみたい(笑)
そしてゴッホはそれをこんな風にキャンバスに写し取りました。
これからインスピレーションを得て、油絵で仕上げた作品がこちら。
そういわれてみれば、ゴッホ美術館で昔見たことがあるかも。

広重は鳥や花を短冊の中に詩と組み込んだものも円熟期にはたくさん描いたそうです。
版画は広重のような絵師だけで作られるものではありません。
普通は版元とよばれる存在がいて、これが作品の企画を立案し、絵師、彫師、摺師といった職人を手配し、完成した版画を販売します。

この美しい花鳥画は川口屋という版元のために広重が描いたものです。
繊細で生き生きとした鳥の鳴き声が聞こえてきそうに美しい。

この真ん中の短冊にはちょっと面白い印があります。
江戸時代のものですから、読むときには右から。
右は鹿のようですね。
でもこちらは福という字を(草書で崩したものを更に絵に直して)表しているのです。

そして左は馬の後ろ姿。
こちらは寿だといえば福よりも納得できそう。
福は幸福、寿は長寿ということで、幸せに長生きという縁起の良い印章。
福寿印ともよばれるこちら、何と別名はバカ印。
ウマとシカですからね(笑)
こういったジョークが広重は好きだったそうです。

浮世絵は庶民の文化。

なのでさりげなくジョークを組み込んで真面目になりすぎないことが粋とされた文化。
風景画にもその中の人物が庶民の生活感を出していたり、皮肉が込められていたりするのが広重流。

例えば有名な東海道五十三次。
こちらは日本橋。
大名行列がやってくる、いかにも江戸の風景です。

「偉そうに、また来やがった」みたいな顔つきの商い町人たちが、行列が来るので橋を渡るのをあきらめて急いで脇に退く様子。
それなのに犬や猫は知らん顔で橋の前から動かない様子。
庶民に人気があったのも頷けますね。

京都の四条河原の夕涼みではさりげなく版元の名前を入れこんだりしています。
手前で宴の真っ最中の人々の間に。


広重の版画は特に青が美しいものが多いです。
この時代、元はドイツで発明されたプルシアブルーという人工の青色がありました。
1760年位から日本でも使われていたそうです。
それが中国で大量生産されるようになって、安価なものが日本に入ってきたのがちょうど広重が活躍した時代。
インクのように濃淡を出すことができたので、青のみで版画を作ることも可能でした。
夏に涼みたいうちわにはぴったりの色合いですね。
広重の作品であまり残っていないものが、うちわ用の版画。
青のみで刷られた版画は藍染絵とよばれたそうです。
うちわはもちろん使用されると劣化するのであまり残らないそうです。
ですからここに残っているものはうちわ用にプリントはされたけれど何らかの理由でうちわにならずに残された作品だそうです。




ぜひ足を運ぶといいと思います。

特別展以外にも、日本館に何点か版画がありました。
お金をかけたくない人は、そちらは無料でご覧になれます。






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2023年12月19日火曜日

大英博物館の図書閲覧室に行ってきた!

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すごく久しぶりに大英博物館の図書閲覧室に入りました。



1857年に完成したこの図書閲覧室は、当時の大英博物館の中庭の部分に建てられました。
それまでは大英博物館の中、現在エンライトメントギャラリーとして知られている部分が大英図書館の閲覧室でした。
これがそんな時代のイラスト。
南正面の入り口から入ると、中央のグレートコートに面した右手の棟です。
今はこんな感じ。

カール・マルクスがロンドンで貧困生活を送っていた時に、毎日のように通っていた大英図書館というのはこの古い部分。

彼がソーホーの貧民街で暮らした1850年から1856年というのは、まだ丸い図書閲覧室ができる前です。
ソーホーの彼の家から大英博物館までは徒歩で約10分。
子供のお葬式の費用すら借金しないといけなかった彼が、二間しかない借家に住んで、ろうそく代にも事欠き、研究のために毎日のように通った時代。
大英博物館内の大英図書館は今とは違って有閑階級の人たちが集まるクラブのようだったそうです。
大英図書館の利用は無料ですが、利用チケットが必要でした。
マルクスが利用できたのは、当時の係員アントニー・パニッツィーが彼に同情したからだといわれています。
このパニッツィーがもっと広い閲覧室が必要だと言い出して、中庭の丸い図書閲覧室が考案され、工事は1854年に始まりました。

完成は1857年。
足元にお湯のパイプが通されて暖かい中でゆっくり研究ができる素晴らしい設備です。

この閲覧室が出来上がったときのマルクスは、親戚の遺産を受け取って郊外に引っ越していますが、8部屋もある立派な住宅を借りて、もちろん書斎もありました。
ソーホー時代のように毎日通うことはなかったかもしれません。
が、もちろんここへも足を運んだようです。

図書閲覧室は2000年にグレートコートが開館した際に一般公開されていましたが、2007年から2013年まで特別展示会場として使われていた際に閉めてしまいました。

数年前に建て増しされた北館に特別展示会場が移転した際、博物館のアーカイブ部門として機能するようになりました。

この中には現在毎週火曜日に開催されるツアーで入場することができます。
以前は不定期の開催でチケットを取ることは容易ではなかったのですが、今はそれほど難しくはないようです。


ツアーは写真禁止なので、今回利用の写真は全て大英博物館所蔵のものを転載しました。


追記
あんまり過去記事に追記や書き直したりしないのですが、たくさんの人に見てもらっているようなのでちょっと書いておきます。

現在はフラっと入ることができて、写真も撮れるようになっています。
またいつ変わるかわかりませんが、2025年春の情報です。





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