2012年6月27日水曜日

Hill Close Gardens


私のお客様の大部分は、初めてお会いして、きっともうお会いすることのない人たちです。
でも中には、毎年お越しになる方や、不定期ですが、何度も渡英される方もいらっしゃいます。
そんなお客様に、何人か、英語の先生がいます。
ある先生は、毎年6月のいい季節に、サマースクールに生徒さんたちと参加されます。
私はもう何年もその先生のために「コッツウォルズの日帰り旅行」をアレンジしています。
コッツウォルズの村のいくつかに、1箇所だけお庭の訪問を入れるといった風です。
先生は毎年お越しですが、生徒さんたちは毎回違うので、同じコースを組めば良さそうなものですが、それも芸がないので、いつも新しいお庭を組み込んでいます。


今日は、先日その先生と訪れた、イギリスの素敵なお庭を紹介します。
Hill Close Gardens」という名前で、多分、あまり日本の人には知られていないと思います。

イギリス人は、日本人と同じように、お庭が大好きです。
ヴィクトリア時代(150年ほど前)のことですが、街中に住んでいるために、お庭をもてない人たちのために、町外れに「貸し庭」の制度が出来ました。
貧しい労働者のため、というよりは、ある程度収入があるロウワーミドルクラスが対象でした。
庭は区画(プロット)に分けられて、プロットごとに貸し出されました。

ヒルクローズガーデンは、ウォリックの町外れにあります。
はじめは貸すだけだった庭は、そのうち売りにも出されるようになります。
20年ほど前には、ヒルクローズのもとの貸し庭は、16プロットを残してデベロッパーに売却され、その16プロットも荒れ放題となっていました。
そしてとうとう1993年に、ウォリックの地方自治体がその16プロットの所有者になって、30軒の家を建てる申請が出されたのです。

ヒルクローズが盛況だった時代には、人々はお庭を自分の好みに造って、自宅では求められないくつろぎや、子供たちの遊び場、市場では手に入らない珍しい野菜や果物のための菜園などに利用しました。

雨の日にもお庭を楽しんだり、用具入れのために、各プロットにはサマーハウスが建てられました。
サマーハウスは4畳半くらいの小さなおうちです。
材料は木だったり、レンガだったり、持ち主の好みで建てられました。
16プロットの中でも、荒れ方が一番ひどかった庭にも、サマーハウスが建てられていました。
レンガ製だったので、ちゃんと残っていたこの建物は、建築許可申請(プランニング・パーミッション)の時の調査で、当時考えられていたよりも古いことが分かりました。
さらに調べてみると、ヴィクトリア時代には国内に何百と存在していたヒルクローズのような「貸し庭」が、現在では4例しか残っていないことが分かり、1994年にグレード2の保存指定を受けたのです。

そして2000年にはヒルクローズ保存のためのトラストが設置され、2005年からお庭の修復が始まりました。
現在では1人のプロ(有給)の庭師頭を筆頭に、ボランティアの庭師たちがお庭の手入れを担当しています。
プロットごとにいろんな雰囲気が楽しめるのは、イギリスで人気のヒドコートのような「Rooms」風です。
でも、もっともっと、親しみの持てる庭。
予約すると、ボランティアの人が、1時間弱でゆっくりと案内してくれます。

私のグループは、クリスという名前のおじいさんが案内してくれました。
「どこから来たんだ?」と聞くので、ロンドンから、と答えたら、ロンドンからのグループは初めてだって言われました。
やっぱりまだまだ知られていないんだ。

ツアーが終わってから、クリスさんに「どの季節が本当のお勧め?」って聞いてみました。
「Ah、That is very good question (うーん難しいね)」
と前置きして、
「春には果物の木が、それは綺麗な花をつけるんですよ。日本でもサクラが有名でしょう?」
サクラは日本では花ですが、イギリス人にかかっちゃうと果物の木なんですね(笑)
「そして夏には、ご覧のように、お花が見事です。」
「秋には果樹園が実って、梨やりんごの味比べをしたり、やっぱり難しい質問ですねぇ」

ウォリックを訪れるなら、是非足を伸ばしてみてください。
ウォリックの競馬場のお向かいです。

お庭を楽しむのにも、ソーシャルヒストリーの勉強にも、いろいろ役立つと思います。

2 件のコメント:

かんとく さんのコメント...

Mikiさん
こんにちは。ご無沙汰してます。イタリアでの休暇はいつもながら凄い食事でしたね~(笑)。写真見ているだけで、こちらもお腹いっぱいになりました。
コッツウォルズの新しい穴場のご紹介ありがとうございます。先週末、ブロードウエイを訪れましたが、まだまだ行っていない村があるので、もう少し探訪したいと思ってます。
確かMikiさんが以前コッツウォルズのいろんなところをご紹介されていたおぼえがあるのですが、該当記事になかなかたどりつけません。このブログに検索機能つけられると、愛読者にはうれしんですが・・・

miki bartley さんのコメント...

かんとくさん、おはようございます。
ブロードウェイもステキですよね。コッツウォルズは広いので、いろんな村や町を訪れるたびに違った表情に出会える楽しさがあります。
検索機能、付いてますよ。
右の真ん中くらい。
「読者」のすぐ下です。
いろいろ探してみてください。