2010年11月30日火曜日

デンマーク・ストリート

ロンドンのデンマークストリートは、1960年代から楽器店、特にギター関係のお店で有名になりました。

以前にもここで紹介したことのある、1928年にイギリスに国費留学していた武部六蔵さんの日記や、武部さん以外の方が残されたちょっとした記述などによると、ロンドンにはその当時、少なくとも2軒の日本人旅館がロンドンに存在したようです。

そのひとつ、「ときわ館」はどうやらこのデンマークストリートにあったようなのです。
(もうひとつは「東洋館」という名前で、パディントン辺りにあったらしい)

この間、少し時間があったので、この地域の資料をあたってみることにしました。

イギリスでは、特定の地域に関して調べてみようと思ったら、まず図書館を見てみます。
図書館と一口で言っても、一般の貸し出し図書館ではなくて、リファレンス図書館とか、ローカルヒストリー研究と呼ばれているものです。
この本は100年位前に出版されたもので、図書館で閲覧することが出来ますが、貸し出しはされていません。

古いものを調べる時には、通りの名称が変わってしまっていることがあります。
ですから、通りの名前よりも、もっと普遍的なもの、すなわちその教区の名前で検索するとうまくいく場合が多いのです。
普通は探している場所の、最寄の教会がそれに当たります。

デンマークストリートの場合は、ちょうど1番地の横がセント・ジャイルスという教会です。中はこんなカンジ。
この教区はとても貧しい区で、1665年のペストの大流行がロンドンを襲った時、最初の死者を記録した地域でもあります。
現在は、ロンドンのカムデン区なので、カムデン区の数ある図書館のうち、最寄であるホルボーン図書館を覗いてみました。

受付の係りの人に、デンマークストリートに日本人用の旅館があったらしいことを調べている旨を告げて、その歴史や記録などを調べたいという希望を伝えました。
面白いなーと思ったのは、受付の人は3人いて、1人が私の相手をしていましたが、残る二人は1冊の本を覗いて、話をしながら何かを探している様子。
そのバックグラウンドでは電話が鳴っているのですが、誰も出ようとはしない点です。
こういった場面に出くわすたびに、イギリスでは対面で話をすることの重要さを思い知らされます。
もちろん手紙やメールで問い合わせも出来ますが、順番は、やはり目の前にいる人から。

私が一番調べたかったのは、1920年代の国勢調査記録か、選挙登録の記録だったので、それ以外でも見てみると面白い記録などがあるかどうかも聞いてみました。
これは、選挙登録の記録で、まずこのページは選挙区のエリアが書いてあります。
選挙区のエリアが書いてあるページ。これが、選挙権のある人のリストです。このページにはどんな理由で選挙権があるかという略語の説明。
例えばHOというのは、だんな様(Hasband)のおかげで選挙権があるということ。

国勢調査の記録は1901年のものが手に入りました。
「100年たたないと、一般に公開されない」というルールがありますから、来年には1911年のものが見られるわけです。
マイクロフィルムに保存されているので、こんなスクリーンで見ます。拡大するとこんな風。図書館ではこういった状態で保存しているので、目録からラベルの番号を割り出して、自分でセットアップして見るわけです。100年くらい前のデンマーク通りの外観。こちらはある1軒の中の様子。1720年当時の地図には、それ以前のものにはなかった「デンマーク通り」の名前が出ています。
じゃあ現在のデンマーク通りの写真を幾つかご覧ください。

2010年11月26日金曜日

YASHIN

「新しい和食のレストランが出来たから、そのうち行こうか」
ティムちゃんが、先々週だったか、そんな話を持ち込んできました。
最近、ロンドンには、国籍不明のお弁当屋さんやおすし屋さんが軒並み。
つまんない所には行きたくないので、お返事の前にちょっとウェブで調べてみました。
ヤシンというレストランです。
YASHIN と書かれています。
日本語の野心なのかなぁ?
まだ新しいので、あまり評判が載っていません。
肝心のお店のサイトも「この秋オープン」くらいの情報しか載っていません。
ここのコンセプトは「Without Soy Sauce but if you want to」
おしょうゆを使わずに食べるおすし屋さんです。

ウェブから得た情報では、和食の割烹ではロンドンでも老舗の「弓」の元シェフと「UBON」の元シェフが共同でオープンしたと書かれていました。
ということは味は間違いないはず。
場所もケンジントンの大通りから、ちょっと入ったところ、といいカンジ。
今日、早速ティムちゃんに連れて行ってもらいました。
この辺りは駐車するのがなかなか難しいのですが、ラッキーなことに、隣の道に止めることが出来ました。
公共の乗り物なら、ハイストリートケンジントンが最寄。

お店に一歩はいると「いらっしゃいませ!!」と威勢のいい声。
いいなぁ、おすし屋さんに来たって雰囲気で。
カウンターはすっきり、セッティングはこんな風。ランチの時間に入ったのですが、カウンターの中のシェフは3人とも日本人でした。
後で聞いたら、うち二人が上に書いた経営者。
「オーナーシェフのお店なんだー」ってティムちゃんも感心していました。
ロンドンは、どうしても店舗やなにかの費用のために、オーナーシェフが少ないのです。

とりあえずお水とシャブリを1本ずつ注文してからメニューに目を通しました。
ランチタイム用のメニューだったので、おすしのセットがいくつか。
10ポンドちょっとから60ポンドまで、幅があります。
細かく何が入っているかとは書かれていなくって、おすしがいくつ入っているか書かれています。
多分、苦手なものを言えば、ちゃんと見繕ってくれるんじゃないかな?
それに、お勧めのお魚とかって、その日や時間でも変わるのだろうから、予算とおなかのすき具合で決めればいいかも。

ランチのセットにはお味噌汁が付いています。
こんな風に、かわいいサイズ。
きのこと三つ葉のお味噌汁でした。
美味しかった。お味噌汁が下げられた後には、サラダが出てきました。
メニューをちゃんと見てなかったので、サラダが付いていたのはうれしいサプライズ。
たまねぎのドレッシングだそうです。
これ、ティムちゃんはすごく気に入ったみたいで、「最近食べたサラダの中で一番美味しいかも」だって。私は「お任せ8カン」というのを注文しました。
ティムちゃんは「初めてのお任せ」というのを注文。
名前からして「初心者向きなのかなー」と思っていたら、やっぱり「定番を少しひねりました」って感じのものが出てきました。
奇をてらったものが好きでなくても大丈夫だと思います。
こっちが「初めてのお任せ」それで、こっちが「普通のお任せ8カン」違いはボタン海老とはまちと(たぶん)とろ。
二つ並べてお互い好きなものを食べたのですが、ティムちゃんははまち(ジャラピーノペッパーの味付け)が一番気に入ったそうです。
私はサーモンの土佐酢ゼリー乗せかな?
たくあんみたいに見えるのは、自家製のしょうがです。
これがとってもフレッシュで気に入りました。

メインの途中でシャブリが終わっちゃったので、日本酒も飲んでみました。
日本酒のお試しセットというのがあって、50ccずつ2種類のお酒の味見が楽しめます。
ソムリエのオダさんに、辛口のお勧めを選んでもらいました。
こんな風に出てきて、かわいい。
試験管みたい。
ピンクのほうがさっぱりして、気に入ったけど、高いのはもうひとつの方なんですって。
名前はメモしなかったので、忘れてしまいましたが、なんでも相談に乗ってくれる人当たりのいいソムリエさんなので、聞いてみるといいんじゃないかと思います。隣のグラスはお水です(念のため)
私たちはカウンターでシェフの包丁捌きを楽しみながらランチしたのですが、一番面白かったのは、このシーン。これ、おすしの仕上げにバーナーを使っているところ。
絶対これ写真に撮りたいと思って、見計らっていたんですが(だって目の前だし、迫力あるし)なかなか撮れません。
で、シェフに写真撮りたいんですけどって聞いてみたら、タイミングを目配せしてくれました。
うれしい。

これは他の人が注文したツナのおすしのセット。
ティムちゃんは、今度来た時にこれが食べたいって。次に来た時に食べたいものの話をしていたら、ティムちゃんが、ディスプレイケースに和牛発見。
そこで、ちょっと食べてみようかということで、カルパッチョにしてもらいました。
こんな風に、ランチのメニューになくても、シェフに頼むと作ってくれるって、すっごく素敵。
口の中で、とろけるようで、さすが和牛。
ステーキの時は和牛って頼まないけど、生とかで食べるなら、やっぱり和牛は美味しい。

デザートは柚子のシャーベット。
食感がすごく面白くって、一寸もちっとしていました。
ロンドンにもこんなお店が出来たなんて、すごくうれしいです。
ティムちゃんは私が気に入ったのがわかったので、連れてきてよかったって。
そんなに大きくないので、絶対に予約したほうがいいと思います。
そのうちもっと知られるようになったら、予約も難しくなると思います。

2010年11月23日火曜日

ロイヤルウエディング

ウイリアム王子様とケイトミドルトンさんとのご結婚が、来年4月29日に行われると発表がありました。
場所はロンドン、ウエストミンスター寺院です。

ちょうど、日本のゴールデンウィークの初日に当たりますから、日本からのお客様がたくさんイギリスに来られるかもしれません。
こういった大きな行事の際は、当日はもちろんのこと、その前後の数日も、準備の為に観光のお客様が寺院に入れなくなります。
ウエストミンスター寺院のサイトで事前にチェックをお忘れなく。
早々とサイトにはこのニュースが載っていました。

ウエストミンスター寺院は、ダイアナ妃のお葬式があった場所です。
現エリザベス女王の結婚式もここ、戴冠式はウイリアム征服王のものが1066年に執り行われて以来、全てウエストミンスター寺院です。

観光にお越しの方は、以前の記事をどうぞ。

2010年11月22日月曜日

大英博物館

1753年に始まった大英博物館は、サー・ハンス・スローンというお医者様のコレクションが元になっています。
彼はお医者だけあって90歳以上まで長生きしたんだけど、亡くなる間際に娘たちの持参金にする現金がないことに気が付きます。
そこで、生涯かけて集めたコレクションを、国に譲ることと引き換えに2万ポンドの現金を要求しました。
国はコレクションを手に入れるために宝くじを売り出して、利益の9万ポンドの内、2万を娘たちに、残りで大英博物館基金を設立しました。
大英博物館のある通りを東に進むと、サザンプトンロウという通りの少し手前北側の建物に、彼のブループラークがあります。西暦2000年を記念して大掛かりな内装工事が行われたときも、ナショナルロッタリーという、英国の宝くじ基金が役に立っています。それだけでは足りないので一般からも寄付を募りました。
100ポンドくれたら天井のガラスに、1000ポンドで図書閲覧室のベンチに、もっと出してくれたら壁に名前を彫ってあげましょう、というわけです。
私も100ポンド出して、ナンバー101というガラスに名前を残しました。
(これはコンピューターに記録されるだけで実際にはベンチや壁のようには彫ってもらえません。)
中心の図書閲覧室の外側には宝くじ基金の名前に混じって「Asahi Shinbun」という名前も。
これが現在のグレイトホールこれが完成してからは、どの館もここからアクセスできるので、随分便利になりました。
コレクションは「ロゼッタストーン」や「パルテノン神殿の遺跡」など世界的に有名なもの。
でも古いものばかりではありません。
私のお気に入りは生と死のギャラリーにある「ゆりかごから墓場まで」中に幅60センチほどの帯が2本あってひとつは女性、もうひとつは男性です。
この中に一生の間に飲む薬が並んでいます。
英国の平均ということなので、日本の人と比べるとどうかな?
所々に年齢に応じた写真やものが置いてあります。
特定の人というわけではないのですが、展示を見ながら自分の人生を考えてしまいます。
赤ちゃんのときに受けるヴィタミンKの注射や避妊用のピル、抗がん剤なんかもあります。
薬屋さんをご案内したことがありますが「これはわが社の薬です」と喜んでいらっしゃいました。

2010年11月18日木曜日

Shepherds Falkiners


ロンドンの大英博物館のそばにある、製本用具の専門店「Shepherds Falkiners」に行ってきました。
こんなお店があることは、聞いたこともなかったのですが、日本のガイドブックには載っているそうです。
名前は覚えていませんが、「ヨーロッパらしい、専門店や小物屋さん」みたいなガイドブックでした。

大英博物館のあるエリアは、ブルームスブリーとよばれて、文学や絵画にゆかりの深いところですから、こういった専門店があることには驚きません。
一歩店内に足を踏み入れると、少しだけ時間が戻ったみたいです。

グラウンドフロアーには、色とりどりのラッピングペーパーやティッシューがきれいに壁にかけられています。
また、たくさんの紙の見本がバインダーに綴じられています。
ラッピングペーパーには「Chiyogami」なんて名前のついたコーナーもあります。
レースのような和紙なんかもあったり。


見ているだけで、楽しくなるような柄や、少し懐かしい柄、明治時代の本のカバーになりそうな柄なんかもありました。
階段で下に降りると、製本のための用具なんかが売られています。
テープなんかも測り売りだったり。

そんななかで、「ヤマトのり」の文字。緑色のプラスティックのチューブに黄色いキャップ。
なんか子供の時に見たことあるような・・・。
なんと値段は8ポンド!
「総天然素材なんとか」って仰々しく英語で書いてあって、その他の糊とは区別しているんですが、この糊、こんなにするの?
ちょっとサイトで調べてみたら、ヤマト糊のオフィシャルサイトで見たら、241円。
お店の人に聞いたら、「日本製だし、天然素材で質もいいから人気商品」だそうです。
一緒に行った人は、綺麗なラッピングペーパーを何枚かと、製本用のテープ(背表紙の内側に貼るもの)を何種類か買っていました。
紙なんて、日本にいいものがいくらでもありそうだけど、柄の種類はやっぱりヨーロッパのものが面白いそうです。

Mimosa Restaurant

クリスマスまで、あと一月です。
我が家では、夏のホリデーと、冬のクリスマスが1年間のメインイベントです。
キリスト教のとても大切な祝日を「イベント」と呼ぶのには、多少なりとも抵抗を感じないわけではありません。
が、実際のところは、キリスト教徒自身も、宗教的な意味合い以外の部分がかなり大きいことを認めないわけにはいかないと思います。
ひとことでヨーロッパといっても、その国によってクリスマスの捉え方はいろいろです。
子供のための祝日のような国もありますし、真夜中のミサから始まって、宗教行事で1日を費やす国だってあります。
イギリスはどうかといえば、「クリスマスの商業的効果を十分に生かしている国」といえるかもしれません。
「あまりにも商売が優先しすぎる」という批判から、数年前からクリスマスデコレーションの早すぎる設置は自粛しようという動きがあります。
ひどい年には9月の半ばくらいからデコレーションが始まったのを覚えています。
最近では、10月くらいからかな?
デパートなどに、クリスマスのコーナーが設置されます。
繁華街にクリスマスライトが点灯するのは、今週辺りからが多いようです。

我が家のクリスマスはウインドウショッピングから始まります。
クリスマスの前に、Father Christmas(サンタさん)への欲しいものリストを送らないといけないのです。
そこで、どんなものが欲しいかを探さないといけないわけ。

ここまで書いてから「去年はどうだったかなー」と思って、「クリスマス」で自分のブログを検索して大うけ。
ちょうど同じ時期に同じようなところを歩き回って、同じレストランでご飯を食べていました(爆)
その時の記事、リンクしておきます。
ミモザは最近メニューが随分英国風になりました。
これがレストランのリンク
ここは静かだし、リーズナブルなので、この界隈に買い物に来たときに利用します。
大概予約無しでも席があります。
今日はティムちゃんの前菜が海老とアヴォカドのサラダ。
Avocado and prawn salad with marie rose sauce私は貝柱を頼んだんだけど、ソーセージがついてきました。
ベーコンをあしらったものはよくあるけど、ソーセージは初めて。
組み合わせとしてはかなり面白かった。
これ、サイトのメニューには載っていないけど、レストランのメニューではスモークサーモンの下に入っていました。
10ポンドちょっと切るカンジのお値段だったと思う。メインはティムちゃんがレバー(Calves liver and sweet cured bacon, mash and shallot gravy)
野菜がついていないので、別にほうれん草も頼みました。私はバーガー(Buccleuch estate pure beef cheese burger, fries, onion rings and tomato onion relish)日曜日にゴードンラムジーのメイズグリルでもバーガーを食べたけど、こっちの方がお肉は美味しかった。
でもパンはラムジーの方が上。
その時の写真はまた今度、別記事で載せます。
私、レストランでバーガーを食べるときは、ナイフで半分に切ってから、手で食べます。
で、切った時の断面を見て、ちゃんと自分が頼んだ状態で焼けているか確認します(笑)
私が好きなのはこんな状態。
これでミディアム。ワインはイタリアンの軽めの赤を飲みました。
写真、撮らなかったけど、すごく美味しかった。
高いワインじゃなくて、ハウスかな?
Sollazzoという名前。
食後にはエスプレッソで〆ました。

2010年11月15日月曜日

ポートランドの壷

今日、ご案内するのは大英博物館に置かれている「ポートランドの壷」です。
美術館と違って、写真の規制がないので、今日撮りに行ってきました。
この他にもついでにいろいろ撮っていたら、博物館の人や知り合いのガイドから
「何やってんの? まだ見たりないわけ?」なんて、冗談を言われました。
よく考えたら、大英博物館には少なく見積もっても1500回は来てるなぁ。
もし、ロンドンで1箇所だけしか観光できないのなら、ためらうことなく「大英博物館に行きなさい」と言うでしょうね。
本当に本当にお勧めです。

この壷は約2000年前にローマ帝国で作られました。
さて、材料は何でしょう?

私がこの壷を案内する時には、この質問の後に、壷を下のほうから見上げてもらいます。
こんなカンジで。そしてね、口のところから光が透けてるのを確認してもらうんです。
ちょっと写真の撮り方が悪いんだけど。
これはね、午前中撮ったんだけど、実は天窓からの明かりの関係で、午後のほうがよくわかります。
写真はクリックすると、ちょっとだけ大きくなるはず。別の角度からも見てみる?これね、ガラスで出来ているんです。
2000年前ですよ、すごいでしょう?
吹きガラスの工法で作られました。
単色のガラスだけではなくって、濃紺のガラスの上から白いガラスをかぶせてあります。
そして、そのガラスに彫刻を施して、カメオの効果を出しているんです。
カメオにはいろんな素材が使われますが、基本は「何層かになっているものを彫って下の地を出して浮き彫り模様にする」という技法です。
貝なんかはシェルカメオとよばれて有名ですよね。

これは、ギリシャ神話がテーマになっているそうですが、こんなところにもローマ帝国が広がった理由のひとつが見て取れます。
普通、神話などは征服した国が自国のものを押し付けるケースが多いのですが、ローマは違います。
ローマは外国の神様だって全部吸収するだけの懐を持っていました。
もともとギリシャの神様は、ローマの神様に重なるものも多かったので、簡単に飲み込まれてしまいました。
神話も含めて、物事は押し付けると反発を招きます。
都合のいいように取り入れる柔軟さがあれば、大概はうまくいきます。

きれいな彫刻だなぁ、なんて眺めていると、青い地のところに、薄くラインが入っているのが目に付きます。
それは修復の痕。
2000年も前の壷だし、割れたのも納得。

でもね、この壷が大英博物館に展示された当初は割れていなかったんです。
1845年にロイド君という青年がぶつかって展示台から落として割ってしまったんです。

この話をすると、ほとんどのお客様は
「で、ロイド君、どうなったの? 死刑?」
と、期待をこめたまなざしで(笑!!)私の答えを待つのですが、残念ながら、なんとお咎めなし。
その当時、まだ持ち主だったポートランド公爵(壷の名前は持ち主だった公爵家の名前から取られている)が、刑罰を求めなかったのがお咎めなしの理由。
1945年に大英博物館が正式に購入して、現在の持ち主は博物館です。
今だったら、逮捕されちゃうかな?
とにかく200以上に割れた壷は、立体のジグゾーパズルを仕上げるように修復されました。

壷がまだ完全だったころ、これを見てヒントを得たのがジョシュア・ウェジウッド。
「これが陶器で出来たらどんなにいいだろう」
そう考えた彼が作り上げたのが「ジャスパーウェアー」のシリーズです。
折からの古典趣味とあいまって、瞬く間にウェジウッドは人気になります。
これは同じく大英博物館に展示されている、ウェジウッドの作った「ポートランドの壷」イギリスでは土の関係から、有名な陶工はスタッフォードシャーにかたまっています。
ロンドンまでは距離があります。
せっかくの陶器も、需要の多いロンドンまで馬車で運ぶと大変。
お金もかかるしリスクも高い方法です。

そこで彼は紡績の機械でお金を作ったアークライトと共同出資して、運河の建設に投資しました。
今、私たちが観光で田舎を抜けて主要な町などに出かけると、途中で鉄道の線路に沿って走ったり、運河に沿って走ったりします。
物を運ぶ時は、時代によってさまざまな方法が選ばれたわけですが、もし、この壷がなかったら、運河は別のルートを走ったかもしれません。
そして、鉄道のルートだって、変わったかもしれないのです。

2010年11月13日土曜日

Lord Mayor's Show

今日は11月の第2土曜日です。
ロンドンにとっては、とっても大切な日。
今日はロンドンのロードメイヤーの就任パレードが開かれる日です。

一言でロンドンといっても、いろんなロンドンがあります。
普通のイギリス人が「ロンドン」と呼ぶのは、グレーターロンドンのことで、人口約800万人、M25という高速道路の環状線の大体のラインの内側を指します。
例えば「ロンドンの中は無料配達」とか、「ロンドンの平均のxxx」とか、そんな使い方の時です。

でもこのグレーターロンドンの中には地方自治区が33区(Cityが2つとBoroughが31)入っています。
そしてそのひとつがCity of Londonといって、大きさは1平方マイル(1.6平方キロメートル)人口約8000人の小さな地域です。
City of London は旧市街地とか、金融街などという名前でも知られていて、ローマ人が2000年前に壁で取り囲んだ町が元になっています。

ロンドンは職人と商人の町。
そこで各職業を守るために、ヨーロッパのほかの都市同様、ギルドが形成されます。
職人同業組合などと訳されるので、労働者の組合に思われがちですが、全く違います。
丁稚として見習いの子供達が親方の下で働き、修行を終えた後、一人前の職人として認められ、各ギルドに登録されます。
そしてそんな各ギルドから、ギルド長が選ばれます。
City of London には、現在108のギルド(Guilds and Liveries)があります。
つまり、108人の「えらいさん」がいるわけ。
その中から1年任期の世話役が毎年選ばれるわけで、その人がLord Mayorです。
英国の経済を牛耳るロンドンの、経済界のトップですから、言ってみれば「経団連の会長さん」?
日本に相当するものがないので、訳は難しいです。
とりあえず、選挙で選ばれる、日本の市長さんとは別物です。
娯楽のなかった中世には華やかな就任のパレードがロンドン中の労働者の楽しみの一つだったわけです。
例えば子供用のパントマイムでお馴染みの「ディック・ウィッティントン」なんかも、辛い修行を終えたら、自分だって高い地位に着くことだって夢ではないといった、モラル上の意味もきっとあったと思います。

今日はロンドン市のほとんどの道は封鎖されていて、このパレードの準備で大変。
セントポール寺院の横にはスタンドが作られて、有料で高みの見物をすることが出来ます。
私は約20年ロンドンに住んでいて、今日初めてこのスタンドからパレードを見ました。

感想ですか?
寒かったです(爆)
そりゃそうですよね。
10度ないところで、じっと座っていないといけないんですから。
でも見ごたえはありました。

だから、もし見たいなーなんて人は、ぜひいつか行ってみてください。
毎年11月の第2土曜日です。
ロードメイヤーショウ(Lord Mayor's Show)でグーグルすると出てくるはず。
とりあえず今年のリンクを張っておきますが、来年サイトが変わっていたらごめんなさい。

今日の写真。
フロートの数は150ほどなんですが、それぞれが楽隊なんかも編成しているので、全てを見るのには1時間以上かかります。
馬車が通ったり、クラッシックカーなんかも。予定よりもちょっと遅れて、今年のロードメイヤーの金の馬車がやってきました。お金を払って見に来ている、スタンドにはサービスなのか、身を乗り出してのサービス(笑)
今年のロードメイヤーは「ベアー(熊)」という名前の人。
だからいろんなフロートには熊のぬいぐるみがあしらわれていました。ロンドンらしいのはこんな人たち。
ロンドンマラソンでそのまま走れそう(笑)