2010年2月12日金曜日

キャリア・コンベンション

昨日の夜、桃太郎君の学校で、「キャリア・コンベンション」なる催しがありました。

桃太郎君はイギリスの言い方では「YEAR 11」に在籍しています。
5歳から始まる学校教育からすると、数えて11年目ということです。
たぶん以前書いたと思いますが、イギリスの学校は公立か私立かによって学年の数え方が違ってきます。
そこで統一された学年の呼び名や、その年に受ける試験の名前がよく登場します。
例えば16歳の子供は「YEAR11」とか「GCSE(中学卒業試験) YEAR」とか言うわけです。

私立の中学校は、普通13歳から18歳までです。
でも公立の小学校が11歳で終わってしまうので、公立校からシフトする子供たちの為にジュニアの部を設けたり、付属のプレップ(私立小学校で、13歳まで)に編入したりします。
13歳から16歳までは普通にたくさんの科目の授業(必須プラス選択で10から14くらい)を受けて、GCSE(中学卒業試験)の後はそのままアッパー(シックスフォーム)に進みます。
シックススフォーム(Aレベル)は2年間で、そこで取る科目は3から4教科。
授業もぐっと専門的になります。

桃太郎君はこの年度(イギリスの学校の1年は9月から7月)内に来年のAレベルの科目を決めないといけないのですが、このコンベンションはそのために行われたわけです。

桃太郎君の学校の卒業生や、生徒の父兄(母親の場合ももちろんあり)のなかで、「その業界に精通している」人たちが質疑応答に応えるというものです。

桃太郎君の学校は男子校なのですが、お隣の敷地にはレベルもクラスも同じくらいの女子校があって、演劇やスポーツ、チャリティーイベントなどはいつも共同で行っています。
今回のキャリアコンベンションも共同で行われたので、両校50人前後、トータルで100人以上の専門家から、「実際の話」というのを聞くチャンスです。

桃太郎君の学校では講堂が会場に使われました。
50人ほどの「その道のプロ」がずらっと並んでいます。
テーブルを挟んで、座って向き合うカタチで、(個人面談のように)話を聞きます。
「そのキャリアに進むのに適切なAレベルの科目はなんだと思いますか」
「あなたはどんな経路で今の仕事をみつけたのですか」
「大学よりも専門学校へ進んだ方がキャリアにはいいでしょうか」
一人当たり、5分強かな?

何人くらい横で待っているかで、人気のある職業が一目でわかって面白かったです。
わかりやすいようにアルファベット順に並んでいます。
Aは 広告、建築、陸軍、芸術、航空、航空燃料、Bでは BP、バイオリサーチ、ビジネスファイナンス、法廷弁護士、Cは科学者とか官僚、公認会計士、ケータリングマネジメント・・・。

桃太郎君は広告とかマーケティング、アート関係に興味があるので、その関係の人たちと面談しました。
ひとり目は卒業生で広告代理店を設立、経営者です。
次も卒業生、出版関係の大企業で、マーケティング担当者。
3番目は生徒の父親の一人で、アートビジネス(超有名なオークションハウス勤務)
その後はお隣の女子校に場所を移して、広告代理店のマネージャーとテレビ局のプロダクションマネージャーから話を聞くことが出来ました。

イギリスには体験就職という制度があって、まだ学生の内に、1-2週間ほど興味のある職種についてみることが出来ます。
ただ人気のある職種は、どこもいっぱいで、希望がかなわない場合も多いのです。
このコンベンションでは、具体的にどこにどんな風にアプローチすべきかアドヴァイスしてもらえました。
そして、何人かからは担当者の連絡先のメールアドレスなんかももらいました。
なかなか役に立つ催し物で、来てよかったと思いました。

それにしても日本とイギリス、いろんなところで違いがありますが、仕事に対する考えが根本から違います。
イギリスの仕事は「キャリア」を大切にします。
例えば日本では職業を聞くと、働いている会社の名前やカテゴリーを答える人が多いのですが、イギリスではその人が何をそこでやっているかを答えます。
人事担当です、とか、エンジニアです、とかマーケティングですなんて風。
それは転職しても別の会社で同じキャリアを保つからです。
ひとつの会社にじっとしていても、お給料や待遇はそれほど上がらなかったりしますが、会社を変えてどんどんキャリアアップをしていくのがイギリス風です。
会社から配属される部署に甘んじる人が多い日本とはまるで違います。

このコンベンションをみて、17.18歳の2年間に取る科目で、ある程度のキャリアが決まってしまうことが実感できました。
日本では高校も「普通科」が一般的、大学でもかなり幅の広い教育を浅く行う所が多いように感じます。
日本人はマルチに何でもソツなくこなす教育を受けています。
イギリスでは早い時期から専門的なことを掘り下げる教育なので、自分の興味外のことはあまり知識のない人も多いのです。
大人になってから学校に行きなおす人がイギリスには多いのですが「キャリアチェンジのため」が大半の理由です。
イギリスでは「選んだものが自分に合わなければ、他のものを見つける」
日本では「合わせるように努力する」
どちらがいいとは言えませんが、違いははっきり感じます。

3 件のコメント:

かんとく さんのコメント...

みきさん
数日前にこの記事にコメントしたつもりだったのですが、なんか上手く載らなかったみたいです。
イギリスのキャリア教育が一面が垣間見えてとても興味深かったです。欧米風のキャリア形成が良いのか、日本風が良いのかは難しいと思いますが、日本も随分欧米風に段々近づいている気がします。
一つ気になったのは、イギリスでは15-16歳でかなり人生の方向性が決まっていくような気がします。早すぎるという意見はないのでしょうか?私なんぞは大学の学部選びだけでもあんなに迷いましたので、それを15歳でやるのはちょっと、難し過ぎる・・・

miki bartley さんのコメント...

かんとくさん、こんにちは。
マフティーデーの記事のところにコメントをいただきました。
多分この記事のコメントだろうなーとは思っていたのですが。

早すぎるって意見はあまり聞きませんね。
やり直しがやりやすい国だからだと思います。
あと、方向が同じでもいろんなキャリアがありますから、よっぽど方向が違わなければ、補正するのはそれほど難しくない場合も多いようです。

かんとく さんのコメント...

みきさん
そうでしたか。違う記事にコメントしていたんですね。大変、失礼しました。同じコメントに対して、違う返信も頂き、恐縮です。でも、理解が深まりましたので、ありがとうございます。桃太郎君も人生、最初の大きな決断になりそうですね。